日本とアメリカにおける腐女子の違いとは? 日米腐女子座談会

DIGITAL MANGAとガンホー・オンライン・エンターテイメントは日本と海外の腐女子による座談会を開催した。国籍による様々な違いが浮き彫りになった当日のディスカッションをリポートする。

» 2009年06月05日 14時59分 公開
[ふじたけ,ITmedia]

 ボーイズラブの略語であるBLという単語を様々なところで目にするようになって久しい。BLを好む腐女子に、国籍による違いはあるのだろうか?

当日は15人のBL愛好家が集合

当日集まったみなさん。どなたもパワフルな方でした

 日本初の女性オタク層向け総合情報サイト「がる★パラ!」を運営するガンホー・オンライン・エンターテイメントは、北米のBLマーケットにおいて65%のシェアを持つDIGITAL MANGAと合同で日米腐女子座談会を開催した。この企画はDIGITAL MANGAが企画した、乙女ロードなど腐女子の聖地を巡礼する外国人向けツアーの参加者と日本に住む腐女子が対談形式で話し合うというもの。

 当日はアメリカやカナダ、オーストラリアから来日した10人の外国人腐女子と、日本の腐女子を代表してアニメ版「間の楔」のプロデューサーである鳥飼えいこさん、アニメ雑誌などでライターを務める株田馨さん、がる★パラ!編集長の杉浦郁代さん、同じくがる★パラ!編集部の赤松愛さん、BLを愛する男性、“腐男子”研究の第一人者である吉本たいまつさんによるディスカッションという形式で進められた。

アメリカで“BL”という表現が使われない理由

海外の腐女子の現状について熱心に聴く日本代表。左から赤松さん、鳥飼さん、株田さん

 まずはアメリカのBL文化について理解したい。腐女子歴10年を数えるTracyさんが「アメリカのBLマーケットはまだまだ小さいものです。アメリカで腐女子は“YAOI fan girls”と呼ばれています。なぜ日本のように“boys love”という表現が用いられないかというと、アメリカでboys loveというと少年嗜好(いわゆるショタ好き)を意味するからなのです。ノーマルな人がboys loveと聞くとそういったニュアンスで理解されてしまいますので、YAOIという表現が用いられているんです」と説明してくれた。ちなみにカナダもアメリカと近いということもあってか、似通った傾向であるようだ。


オーストラリアのBLについて説明するBethanyさん。左が妹のEmmaさん

 オーストラリアではどうだろうか。「オーストラリアは人口が少ないこともあって、アニメやマンガのファンというのもそれに比例して少ないです。けれどやおいファンはすごく自分を主張するし、みんなが家族のようなグループを形成していて、日本のカルチャーをすごく愛しています。アメリカで日本のBLコミックを購入すると12ドルくらいなのですが、オーストラリアでは輸送費が上乗せされるので30ドルくらいになってしまうんです。それでもみんなBLファンをやめようなんて気持ちは全くありません(笑)」今回、妹のEmmaさんと姉妹で参加しているBethanyさんがそう話す。

海外のBLファンは言葉の壁などものともしない

Wendyさんは自分が所持しているBLコミックを持参してくれた

 英語圏で暮らす人々が「日本語は難しい」とこぼすことは珍しくない。だが、海外に住む腐女子たちにとって言語の壁は問題ではないようだ。「コミックだけではなく、ドラマCDなども日本語版以外ありえないですね。日本の声優のレベルはアメリカの声優なんかと比べ物にならないくらい高いです。私は子安武人さんが大好きで、彼が出演している作品はほとんどチェックしています!」と、15歳のころから腐女子であるというJenniferさんが身振り手振りを交えながら熱く語ってくれた。

 議論が白熱してきて、収まりがつかなくなってくる。Bethanyさんが「日本はBLグッズが本当に入手しやすくてうらやましい! 私は『学園ヘブン』のフィギュアがすごく欲しかったのですが、オーストラリアでは入手する手段がなくて……。すごくジェラシーを感じます」と心底悔しそうに話す。これには赤松さんも、「私も仕事用デスクの周りにたくさん飾るほどフィギュアが大好きなので、その気持ちはすごく分かります!」と同調した。ここに、国籍を超えた友情が生まれた。


吉本たいまつさん

 続いて同人誌などのファン活動に関する話題へ。同人誌は(基本的には)アマチュアの作家が制作するものだ。当然、Amazonなどに流通することはない。BL系アイテムを取り扱う海外のお店で同人誌は販売されているのかと吉本たいまつさんが尋ねると、一堂は口を揃えて「No!!」と断言。基本的にイベントでのみの販売だそうで、Kathleenさんはサンフランシスコにて毎年開催されるYAOI Conventionで購入しているという。ちなみにBethanyさんと、カナダから来日したErinさんは今回のツアーでアニメイト、とらのあな、まんだらけなどをハシゴして大量の同人誌を買い込んだらしい……。

もっとも大きな差が出た日米の腐女子にとってのカップリングの考え方

ディスカッションの様子

 座談会は徐々にディープな方向に進む。日本の腐女子たちはカップリング(いわゆる誰が攻めで誰が受けなのかということ)について強いこだわりを持つ人が多い。しかし海外では違うようだ。10人中10人が、たとえ自分が好きなカップリングでなくとも抵抗なく受け入れられるという。その理由として、多数の人が「ゲイの友だちがたくさんいて、彼らは攻めになったり受けになったりするので私たちも攻めと受けを頭の中でスイッチできる」と答えた。これには赤松さんも驚き、「日本の現状からするとカップリングの逆転は受け入れづらいですね」と外国人腐女子たちに説明した。

 日本で“生もの”と呼ばれるような、実在する芸能人を基に妄想していくようなジャンルは海外では存在するのか。これについては意見が分かれた。ソフトなBL作品が好きだというDianaさんは「リアルな世界ではイマジネーションしない」と、BL作品のアートワークが好きだというTracyさんは「リアルな人たちのものは“slash”と呼ばれています。BLとは違うものですが、slashも好きです」と話した。日本でも2Dと3Dで好みがはっきり分かれる人がいるのと同様に、人それぞれのようだ。

座談会の途中で間の楔のプロモーションムービーが上映された。男性同士のキスシーンで黄色い声が飛び交うなど、日本と同じような光景が見られた(左)。上映会後はプロデューサーの鳥飼さんへの質問タイムも

オープンマインドな海外の腐女子たち

 座談会も時間切れとなる。最後に、日本では腐女子であることを隠す人が多いがみなさんの国ではどうかという質問が飛び出すと、みな一様に口をそろえて「Everyone knows.」と断言した。

 育った国や文化、周りにいる友人・知人の影響による差は確かに存在した。しかし作品やキャラクターを愛する気持ち、そしてそれらをエネルギーにして妄想していくところは恐ろしく似通っているものだった。一緒に楽しみを共有できる外国人の友人が欲しいというBLファンの方は、気軽に話しかけてみてはいかがだろうか。それは新しい世界に触れられる、素晴らしいきっかけとなるかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」