デルのゲーム事業トップが語る「Alienware」の魅力:TGS2009
東京ゲームショウに出展しているデルのゲーミングPCブランド「Alienware」のブースで、同社のゲーム事業を統括するアーサー・ルイス氏に新製品の魅力を聞いた。
欧米のゲーマーから高い支持を集めるデルのゲーミングPCブランド「Alienware」が、日本上陸第2弾となる新製品を投入した。このタイミングでデルは、9月24日から27日(一般公開は26日、27日)まで幕張メッセで開催される日本最大規模のゲーム展覧会「東京ゲームショウ」(以下、TGS)に出展しており、会場には同社のブースでFPSや格闘ゲームなどを実際にプレイしつつPCの性能を体感できるデモンストレーションを行っている(Hall2 2-S2)。TGS2009のために来日していたデルのゲーム事業部責任者、アーサー・ルイス(Arthur Lewis)氏に新製品の魅力を聞いた。
Alienwareが今回リリースしたのは、microATXシャーシを採用した「Alienware Aurora/同Aurora ALX」と、フルタワー型の「Alienware Area-51/同Area-51 ALX」、そして15型ワイドノートPCの「Alienware M15x」だ。すでに国内向け製品として“エイリアン級”ノートPC「Alienware M17x」が投入されてはいるものの、LANパーティなどになじみの薄い日本のゲーマーにとっては、「常に市場で最もパワフルなPCを提供する」(ルイス氏)と語るAlienwareブランドのデスクトップPCこそが待ちに待った製品だろう。
M17xの独創的なデザインが話題を集めたように、デスクトップPCにおいても、インパクトのある外観や各種のギミックはAlienwareならではのものだ。ルイス氏は「Alienwareが目指してきたのは、ゲーマーによるゲーマーのための製品で、そのために3つの要素を基本戦略にしている。1つ目がデザイン、次にパフォーマンス、そしてイノベーションだ。特にデザインは競合他社との差別化のために大きな注意を払っている」と述べ、デザイン面での優位性を強調する。その例として同氏は、先行するM17xがアルマイト加工のアルミシャーシを採用し、グレードAの塗装を施している点や、カスタマイズできるキーボードバックライトを搭載している点などを挙げながら、「底面にはネジが1つもなく、レーザーエッジのネームプレートがはめ込まれている」と、コアゲーマーの所有欲をかき立てる工夫を語った。
このデザインへのこだわりは、今回発表されたデスクトップPCにも存分に発揮されているようだ。microATXタイプのAuroraは、いわゆる“デコPC”のようにただ光るだけではなく、専用ソフト(Alien FX)でカスタマイズ可能な4つのイルミネーションゾーンを設け、上位モデルのAurora ALXに至ってはこれが8カ所にも及ぶ。また、Aurora ALXは、ボディ上部が複数のプレートで構成された甲殻虫を思わせるデザインになっており、ケース内部の温度に連動して自動的に開閉を行う機構も取り入れている。「Active Venting」と呼ばれるこのギミックは、フルタワー型のAlienware Area-51/Area-51 ALXにも採用されており、冷たい金属的な外装の中に漂う生物的な印象は、まさに“エイリアン”の名にふさわしい仕上がりだ。
ここでルイス氏はAlienware Area-51の筐体内部を指しながら「何かが足りないと思わない?」と記者に問いかけた。ケース内部を覗くと、CPUとグラフィックスカード、電源ユニットがそれぞれ独立したエアフローを持つような構造に整理され、CPUの排熱には液体冷却システムが採用されているのが分かる。続けて「HDDはどこにあると思う?」と同氏。確かに左側面からは光学ドライブが確認できたものの、HDDは見あたらない。
「実は……」と言いながらルイス氏がAlienware Area-51の反対側に回り込み、右側面のパネルを開くと、なんと内側に6つのHDDベイが縦方向に並んでいた。ベイ付近に手を近づけると、冷たい空気が流れているのが分かる。複数の専用ファンがHDDを冷却しているのだ。一般的なPCケースのようにシャドウベイが横に積み重なっていると、夏場などはケース内部に熱がたまり不安を感じるが、この構造なら効率的に冷却できるうえ、なにより着脱も簡単に行える。大型のフルタワーケースならではの発想だ。なお、HDDのBTOオプションには、500Gバイト(7200rpm)×6基で最大3Tバイトのストレージ容量を確保するほか、1万rpmの高速HDDやSSDも用意されている。
このほか、Area-51とArea-51 ALXは、電源ユニットを後方に引っ張って簡単に取り外せる構造になっているのもユニークだ。ルイス氏は「例えばグラフィックスカードをアップグレードしたとき、既存の電源ユニットではパワーが足りなくなることがあるが、そんなときはユーザー自身で簡単にメンテナンスができる。また、1200ワットまでの電源ユニットならデルのWebサイトから購入できるようになる」と、将来的なアップグレードにも対応できることをアピールした。
もちろん、ゲーミングPCとしての性能に関しても今回発表された新モデルは申し分ない。AuroraとArea-51はともにCore i7+Intel X58 Expressチップセットベースの基本システムを採用し、グラフィックスカードのBTOオプションにはATI Radeon HD 5870や、NVIDIA GeForce GTX295(CrossFireX/NVIDIA SLIも可能)が並ぶなど、現時点でほぼ最高峰の構成だ。さらに、型番の末尾にALXが付加されるプレミアムモデルでは、CPUにCore i7-975 Extreme Editionも選択でき、こちらを選ぶと出荷状態でAurora ALXが3.6GHz、Area-51 ALXが3.86GHzにオーバークロックされる。一方、M17xのボディデザインを踏襲する15型ワイドモデル「Alienware M15x」も、“最もパワフルな15インチノート”のうたい文句にふさわしく、IDF 2009で発表されたばかりの新型Core i7-920XMがいち早く搭載されている。
なお、AlienwareがTGSに出展したのは今回が初めてだが(そもそもデルの出展が初めて)、これは主に欧米で展開していたAlienwareブランドをアジア市場へ認知させたいという狙いがあるようだ。ルイス氏よれば、現在130億米ドルに達するPCゲームソフトの売り上げのうち、その半分はアジアが占めており、いまなお急成長を続けるこの市場は、同社のゲーミング事業にとっても成長を見込める重要なマーケットだという。
もっとも、TGS2009の会場を見渡せば分かるように、日本で主流になっているゲームはやはり家庭用の専用機。これについてルイス氏は「確かに、日本のゲーム市場がコンソールを重視しているのは認識している。しかし、PCゲームとコンソールゲームは対立するものではなく補完的な立場にあると考えている。PCゲームの場合、画面までがだいたい2フィート、つまりマウスとキーボードで遊ぶ距離だが、コンソールでは10フィートで、PCとは異なるタイトル(例えばスポーツゲーム)が遊ばれている。また、長期的な視野に立てば、やはりゲームに最適なプラットフォームはPCだろう。今は我々が最優先にしているのは、まず第一にAlienwareブランドを確立すること。まだまだ日本でもチャンスはあると思う」と語った。
これまで一部の熱狂的なゲーマーに支持されてきたAlienwareだが、PCメーカーの巨人であるデルに吸収されたことで、逆に世界展開への足がかりを手にしたことになる。日本のPCゲーマーにとっても、今後Alienwareの名は要注目だ。
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