「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」は“愛”のあるゲームである:TGS2009
TGS2009会場で「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」の開発元代表を務めるギヨーム・ド・フォンドミエール氏にインタビューしてみた。
雨がもう1人の主人公ともいえる
今年の東京ゲームショウ2009のソニー・コンピュータエンタテインメントブースに出展されていた「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」の開発元であるQuantic Dreamの代表を務めるギヨーム・ド・フォンドミエール氏にインタビューする機会を得た。
「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」は、死体のかたわらに折り紙が置かれる“折り紙殺人”と呼ばれる連続殺人事件を、折り紙殺人鬼に息子を誘拐されるイーサン・マーズ、イーサンに近づく駆け出し新聞記者マディソン・ペイジ、被害者家族の依頼で事件を追う私立探偵のスコット・シェルビー、事件解決のために派遣されるFBI捜査官のノーマン・ジェイデンの4人の主人公の視点で描くサイコサスペンス。TGS2009では、シェルビーとジェイデンのエピソードのひとつが体験できた。
本作は、時間がリアルタイムに進行する。その間、プレイヤーはなにをしてもいい。正確にいえば、その時々の行動次第で状況が変わっていくため、何もしなくても、何かアクションを起こしてもそれなりに事態は進行していくわけだ。それは主人公の死ですらゲームオーバーとはなりえない。ゲームでは、画面に出てくるコマンドを入力することでストーリーが進んだり、プレイヤーの周囲に浮かぶ思考コマンドを選ぶことで進行していく。右アナログスティックでのみ操作する点も特徴的といえる。
ギヨーム氏は、今回のTGSのプレイアブル出展はユーザーを対象にした本当の意味のテストと位置付けている。ユーザーの意見をフィードバックする絶好の機会だからだ。
折り紙という日本人には馴染み深いアイテムにフィーチャーしている作品であるが、なぜ折り紙なのかはストーリー上、ネタバレになってしまうので言えないとギヨーム氏。ただ、勘違いしてほしくないのは、日本の文化と折り紙のリンクは特にないということ。折り紙は日本の文化だが、世界でもたくさんの人が折り紙をやっている。折り紙殺人鬼が折り紙を使っているのは、殺害する際のなんらかの動機や背景になにかがあるためだ。プレイヤーは、なぜ折り紙が使われているのか探すのがゲームの目的ともいえる。
前述したとおり、本作には4人のメインキャラクターがいる。ギヨーム氏は、プレイアブルではないキャラクターとして“雨”の存在を挙げる。本作では、雨が重要な役割を果たしており、それについてもゲームで知ることになると語る。雨はこのゲームの中で、感情であり、雰囲気を作るものであり、プレイヤーにとって重要な意味があるのだ。
「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」は2006年から開発が始まっており、グラフィックエンジンも独自のものを利用している。それによってリアルなキャラクターや背景、そしてなんといっても雨といった環境を作りだしている。それには大きな労力をかけているのだとか。人の感情を表現するゲームゆえに、それだけ詳細なディテールじゃないといけないというこだわりからだ。ダークなストーリーな中でプレイヤーにいかに感情移入させるかでも、雨のようなグラフィックの要素が重要になるのだ。
例えば雨がリアルに見えるのに、ほかのものがリアルじゃないと意味がない。目につくすべてが対象となるのだ。その中でも、自分たちが自信を持っているのはライティングとギユーム氏は、ライティングの善し悪しでユーザーの感情はいかようにも変わるとPS3を選択した理由に挙げた。1つのシーンで400人くらいが登場することもあれば、霧や雨といった違う処理能力を要するものもある。現状、PS3だけが可能なコンソールだったとか。
操作面でも「ファーレンハイト」の影響ともいえる右アナログスティックのみの操作について聞いてみたが、ギユーム氏はこともなげに、開発した際はまっさらで始まったわけではなく「ファーレンハイト」の経験も生かしたと言及。ただし、「ファーレンハイト」のシステムを必ずしも使わないといけなかったわけではないと付け加えた。
「インタフェースが複雑でプレイに集中できないのは避けたかった。ですから本作にはアイテム欄はないし、ゲージのようなものもありません。『ファーレンハイト』は心理的描写にゲージを使っていますが、それらを排除してもインタラクティブ性の高いゲームにしたかった。いくつかプロトタイプを作って、オリジナル性の高いものにしました」(ギヨーム氏)
ギヨーム氏は、最初の30秒はやりづらさを感じるかもしれないが、一度理解すると直感的な操作になっていると思うと自信をのぞかせた。最初のシーンはチュートリアルになっているので、ゆっくり学んでからのめりこむことができるだろう。最初のシーンをプレイすることで、インタフェースを考えずにプレイできるようになるのだ。また、本作には3つの難易度が用意されている。操作を難しくして難易度に負荷かけることはしたくなかったと話すギヨーム氏は、「ハードコアゲーマーには複雑なアクションが加わるが、カジュアルゲーマーではまったくゲームをプレイしない人にも楽しんでほしかった」と、どんな人でも楽しめるようになっているとアピールしてくれた。
「他のゲームと異なり、このゲームでは感情に基づくゲームプレイを提供したい。すべてに意味のあるものを提供していると思います。ぜひ心をオープンにして遊んでみてください。また、このゲームは“愛”についてのゲームです。それがコアとなるテーマでもあります。リリースされるまで、愛する人のため何ができるのかを考えてほしいと思います」(ギヨーム氏)
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