「信長の野望・天道」連載(第4回)――上杉家リプレイ・天の巻「若頭、出入りは川中島じゃありやせんので?」:伸ばせ街道! 戦国ニッポン改造論(3/3 ページ)
これで長尾家の城は5つ。次の一手に悩むところだが、山形城の最上家を降すのが最良と判断した。というのも、山形城一つを押さえることで新発田・米沢と二つの城が敵と隣接せずに済むようになり、戦線を縮小できるからだ。領地が増えるごとに守備部隊を増やしていたのでは、いつまでたっても余剰戦力が作り出せない。その意味で、山形を手にすることには直接の収入増をしのぐメリットがある。先ほど露呈した兵站上の限界ゆえ、米沢城から出撃させるのはまたも、景虎率いる1個軍団・2万強のみ。城方は氏家定直を総大将に1万そこそこの兵力で迎撃に出てくるが、白頭巾を相手に半数の兵力とは、あまりに勇敢すぎる試みといえよう。たちまち総崩れとなって城へ退却していく。出城に駐留していた当主・最上義守率いる5000ほどの援軍が慌てて山形に駆けつけるが、その目の前で落城、混乱を来たした援軍は瞬時に蹴散らされる。
ここでちょっとだけ意外なことが起きる。最上家が北の安東領との境目に出城を築いており、そちらも落とさないと滅亡に追いやれないことは最初から分かっていた。それはよいとして最上家は、山形城が落ちる寸前に、すべての町並の支配をその出城に移していたのである。このあたりの抜かりなさは、AIならではだろう。いや、感心している場合ではなく、とにかくこのままだと山形城は陸の孤島で、新兵も物資も入ってこない。もちろん、山形城の軍勢で集落を個別に奪取していってもよいし、なんなら米沢あたりの生産拠点を山形城の支配下に移してもよいのだが、わざわざそんな回りくどいことをするまでもなかろう。最上家最後の拠点となった出城=戸蒔城を奪取することで、この遠征は1552年初頭に終了した。
奪い取ってみるとこの戸蒔城、確かに絶妙な位置に建てられている。安東領との境目を守るには最適なため、長尾家としては当初の予定を変更し、この城を防衛拠点として修復、兵や軍馬、鉄砲もそのままここに集まる体制を維持することに決めた。
主力の2個軍団を長らく米沢/山形方面に回していたせいか、ここで、会津近辺を手薄と見た相馬盛胤がわざわざ道を切り開きつつ、黒川城に向かっているという知らせが入る。せっかくの挑戦なので長尾政景軍団を米沢から黒川に戻しつつ、白頭巾率いる第一軍団の武将達を、羽後・戸蒔城から黒川城に「呼寄」せ、逆襲に転じる。あちらの1万5000に対し、こちらは2万5000。かなわないと見て後退を始めた敵を追って小高城に接近、一戦したのち包囲に移行し、1554年1月には落城させた。長尾家のナワバリは中通りに沿って南陸奥を横断、浜通りを押さえることで太平洋岸にまで達したのである。
このように、長尾家の“北伐”は極めて順調に進み、陸奥と出羽を南から半分ずつ切り取ることで、所領数と兵力では全国トップ街道をひた走っている。だがその一方で、関東情勢は風雲急を告げ始めた。序盤に北条家を滅ぼすことで三国同盟(イベント)の可能性を自ら閉じた武田家ではあるものの、その後まるで北条の覇権を代行するかのごとく、関東進出の勢いは目覚しい。すでに箕輪城の長野業正と岩付城の太田資正が駆逐されたということは、伊豆、相模、武蔵、上野、下総と、関八州の過半が武田の手に落ちたことになる。残る反武田勢力は宇都宮家、佐竹家、里見家のみであり、束にしたところでとうてい武田に対抗できる規模ではない。仮に武田が、同盟相手の今川とがっちり手を組んで関東制圧を続けたならば、やがて我が家の足元さえ脅かされるのは必至だ。
果たして長尾家はこの事態にどう対処すべきか? そしてどのような結果が待っていたか? それは次回リポートしよう。
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