第21鉄 デジタルな汽車旅はいかが? 「A列車で行こう9」でお好みに:杉山淳一の +R Style(2/6 ページ)
ゲームの遊び方はとてもシンプルだ。予算の範囲内で起点の駅と終点の駅を置き、線路を敷いてつなぐ。そこに列車を走らせる。そうすると駅周辺に人が住む。人の姿はないけれど、運行中の列車情報には乗客の数が示されており、駅に到着すると運賃収入がある。この収入が路線の延長と列車の増発、駅前の子会社建設の原資になる。街には経済モデルが設定されており、人口が増えると自然に建物も増えていく。列車は満員になるから、ますます運賃収入が増える。増発すれば収入も増えるし、便利になったので人口も増える。やがて駅周辺には高層ビルが立ち並び、100万ドルの夜景へと成長していく。
線路や建物を置いて列車を走らせる、というだけなら、鉄道模型を再現しただけのゲームになってしまう。しかし「A列車で行こう」の面白さは、プレイヤーの意思とは関係なく、独自の法則で街が変化していくこと。まるで生きた経済や都市の発展を見るかのように、ちょっと目を離したすきにデパートができていたり、ビルが立ったりする。列車本数が減ると衰退することもある。久しぶりに訪れた街で、自分の記憶との差を見つける。その感覚はまさしく旅愁や郷愁に通じるものだ。車両ファン向けの運転ゲームとは異なり、「A列車で行こう」は鉄道のある風景を楽しむゲーム。「乗り鉄」の旅情をかきたててくれるゲームである。
最新作は鉄道ファンのこだわりを叶えた
鉄道会社経営ゲームは「A列車で行こう」シリーズのほかにもいくつかある。海外ではシミュレーションゲームの神様と呼ばれるゲームデザイナー「シド・マイヤー」の「Railroad Tycoon(レイルロードタイクーン)」シリーズや「Sid Meier's Railroads!(シド・マイヤー レイルロード!)」があるし、箱庭ゲームとして人気がある「SimCity(シムシティ)」にも鉄道要素があって、ユーザー自作の風景パーツを使うと日本の情景を再現できる。オープンソースプロジェクトの「Simutrans(シムトランス)」も有名だ。それぞれに良さがあって甲乙つけがたく、いっそすべて入手してしまったほうが精神衛生上よろしい。その中でも、今回の「A列車で行こう9」は、なんといっても「日本の鉄道風景」にこだわれるところがいい。
鉄道ファンの多くを占める「車両派」にとっては、実在の列車をモチーフとした車両が魅力的だ。旧国鉄、JR、大手中小私鉄、公営交通事業の列車など224種類がそろっている。通勤タイプ、近郊タイプ、特急タイプ、急行タイプ、新幹線、貨物列車、寝台列車やSL列車もある。またこの数の中には、架空の車両「AR系」などもいくつか含まれている。AR系は実在の車両に詳しくない人、車両にこだわらない人の車両で、架空の鉄道として楽しみたい人にも向いている。
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