“レッツゴー!陰陽師”へ至る道のり「豪血寺一族」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/4 ページ)
ベリーナイスゲームブック紹介
ちなみにわたしはこの「ドーマンセーマン」を、「送り雛は瑠璃色の」というゲームブックで知った(思緒雄二著、社会思想社、1989年)。主人公はどこにでもいるような中学生たち。彼らはクラスメイトの謎を調べていくうちに、いにしえからの因縁が絡む数々の事件に巻き込まれていく。
このゲームには陰陽師の技を使った戦闘シーンがあるし、牛頭天王、八王子権現、式神、和紙で作った白鷺、反魂(死者を生き返らせる術)といった、陰陽師関連の民俗的資料が登場する。それら資料の多くは、ストーリーと深く関連しない。だがそれがかえって、ゲームの舞台となる町の広がりを感じさせ、“ゲームのために作られた世界”ではなく、ちゃんと人々が暮らしている生活の場所であることをプレイヤーに認識させる。
膨大な文字資料から得られる断片的な情報が、プレイヤーの頭の中で組み合わさっていく独特の感覚。ゲームブックのことを単に“簡素でオーバーキルなアドベンチャーゲーム”としか考えていない人に、一度プレイしてみてもらいたい。
ただ残念ながら、現在「送り雛は瑠璃色の」は入手困難になっているようだ。創土社が2003年に出したリメイク版の方なら、まだ手に入るかもしれないが。
背景ユカイ
いまやすっかり「豪血寺一族」の顔となった、矢部野彦麿&琴姫With坊主ダンサーズ。しかし彼らは、ゲーム内で格闘家として登場するわけではない。単なる背景でしかないのだ。
陰陽師ステージ以外の背景もそうとうカオスで、対戦格闘ゲームなのに、戦っている2人より、背景で歌っている人の方が目立ってしまっている。
もともと「新・豪血寺一族 煩悩解放」の売りは「レッツゴー!陰陽師」ではなかった。豪血寺シリーズ久しぶりの新作で、しかもシリーズで初めて、プレイステーション 2での発売となったことだ。家庭用ゲーム機への登場自体、ネオジオを除けば、「GROOVE ON FIGHT 豪血寺一族3」以来9年ぶりだった。
「豪血寺一族」の登場キャラクターは一度「GROOVE ON FIGHT」で一新されたが、「闘婚」「煩悩解放」では、それ以前の作品に登場した人物が中心になっている。第1作の主人公格だったお種、ボスキャラだったお梅、ヒロインだったアニー、「豪血寺一族2」のヒロインだったクララなど。まあとにかく濃いキャラクターが多い。
またボスキャラとして、あのボビー・オロゴンさんを起用したことも話題となった。ボビーさんの必殺技は、体からビームを出す「ボ・ビーム」。格闘家らしからぬ技だが、これは東京ゲームショウ2005の会場で、イベントに集まったお客さんの支持により決定した。
登場人物のキャラの濃さと、ステージBGMのインパクトがすごかった「新・豪血寺一族 煩悩解放」。実は「豪血寺一族」シリーズは、第1作からそういう傾向があった。
おばーさんが倒せない
「豪血寺一族」第1作は、アトラスから1993年、アーケードに登場した。「ストリートファイターII」(カプコン)の登場から2年が経ったこの年には、各メーカーから続々と対戦格闘ゲームがリリースされていた。
カプコンからは「スーパーストリートファイターII」。SNKからは「餓狼伝説SPECIAL」や「サムライスピリッツ」。ADKからは「ワールドヒーローズ2」、データイーストからは「ファイターズヒストリー」。さらにコナミの「マーシャルチャンピオン」、ナムコの「ナックルヘッズ」、タイトーの「トップランキングスターズ」、セガからは「バーニングライバル」、そして「バーチャファイター」。
こんな状況の中で埋もれてしまわないようにとの思いからだろうか、「豪血寺一族」は奇策に打って出た。主人公的キャラを、“豪血寺お種”という名前の、78歳のお婆さんにしてしまったのだ。
格闘ゲームでお婆さんが戦うというだけでもインパクト大だが、このお婆さんの使う技がまたすごい。入れ歯を飛ばす“岩砕歯”に、顔が巨大化する“威嚇顔”。
そして極めつけは投げ技だ。相手の顔にキスをして、精気を吸って若返り、美少女になってしまうのだ! キャラクターが変身すること自体が斬新だが、もともと醜悪な顔の老婆だったのに、美少女に変身してハートマークを飛ばしてくるみたいな萌え要素を盛り込まれても、困る。
キャラクターデザインは、現在イラストレーターとなっている村田蓮爾氏。お種の変身前・変身後のギャップを見事に描き分け、このキャラの印象を強烈なものにした。
アンジェラ・ベルテという女性キャラもすごい。女性らしさが微塵もないパワーファイターで、声まで男そのもの。タイトル画面には3人の女性キャラが出てくるが、割と正統派な女性キャラであるアニーのほかは、若返ったお種と、女性っぽいルックスに描かれたアンジェラ。詐欺すぎる。
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