ファミコン初期のナイスボート「ミシシッピー殺人事件」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/3 ページ)
連載第87回は「ミシシッピー殺人事件」(ジャレコ)。ファミコンで2番めに古いアドベンチャーゲームですが、何しろ難解なことと、理不尽なゲームオーバーで有名でした。
アメリカ縦断ウルトラ大河
(オープニングで表示される文章)セントルイスを出て、広大なるミシシッピー川を下り、ニューオリンズへと向かう外輪船デルタ・プリンセス号。その一等船室では、探偵チャールズが、助手のワトソンを連れて乗り込んでいます。
さわやかな6月のある日、暖かい風が旗をはためかせています。エンジンはドンドンと音を立てて、人々を元気付けているかのようです。
リバーボートは孤立した世界だったが、すべてが心地良かった。こんな素晴らしい日に、誰が殺人などという恐ろしい出来事を考えられただろうか。
チャールズが船室に着いたときには、まさか自分がこのリバーボートで起きた殺人を解決しなければいけなくなるとは、思いもよりませんでした。
――この文章、こうやって漢字かな混じり文に直せばまだしも、ゲーム画面にオールひらがな・カタカナで表示されると、長くて読みにくい。ゲームを始めてからも長い文章が頻繁に出てくる。
「ミシシッピー殺人事件」が発売されたのは1986年。当時のファミコンソフトはROMに入れられるデータの量が少なく、前年に発売されたファミコン初のアドベンチャーゲーム「ポートピア連続殺人事件」(エニックス)では、カタカナが全部入り切らなかったほど。「ミシシッピー殺人事件」のROM容量はもっと大きかったようだが、それでも漢字かな混じり文の表示など望むべくもない。
さらに「ミシシッピー殺人事件」は、もともとアクティビジョン社がPCで発売していたゲームを、翻訳してファミコンに移植したもの。元ネタがあったから、訳す際に、はしょるわけにもいかなかっただろう。
ただし、物語がすべて船の中で完結するので、グラフィックデータは割と少なくて済む。ジャレコが海外作品の中からこのゲームを選んだのは、そういう理由もあったのかもしれない。
「ミシシッピー殺人事件」は、ファミコンで「ポートピア連続殺人事件」に次いで、2番めに発売されたアドベンチャーゲームだ(「ゼルダの伝説」がアドベンチャーゲームに分類されることもあるが、ここでは除く)。「ポートピア」から1年近くアドベンチャーゲームが出なかったわけだが、それだけファミコンでこのタイプのゲームを作るのは難しかったのだろう。
もっとも1986年といえば、「ディスクシステム」が登場した年。ディスクカードはROMカセットの3倍、約1メガビットの容量を持つ。一方で1メガビットを超える大容量ROMカセットも登場し、そのためか同年末頃から、数多くのアドベンチャーゲームが現れることになる(デッドゾーン、水晶の龍、たけしの挑戦状、etc.)。
トラップばっか物語
「ミシシッピー殺人事件」の主人公は、チャールズ・フォックスワース卿という著名な探偵。助手のワトソンと行動をともにする。ちなみにアクティビジョンのPC版では、助手はワトソンではなく、リージスという名前だった。
助手がワトソンだから探偵はシャーロック・ホームズだと思い込むプレイヤーは少なくなかったようだ。わたしが持っている、ゲーム解説本にも、「調べたいものにホームズの体をくっつけて」と書いてあるものがある。
「ポートピア」と大きく異なるのは、主人公を十字キーで動かして、フィールドの中を移動させるというシステムだ。「キングスクエスト」(シエラオンライン)以来、アメリカ製アドベンチャーゲームに多くみられるタイプで、例えばやはりジャレコがファミコンに移植した「マニアックマンション」もこのタイプ。
日本でも似たシステムのゲームは登場したが(1月に当連載で取り上げた「えりかとさとるの夢冒険」など)、RPGの影響からかトップビュー(見下ろし型)が多い。それに対し、アメリカのものはサイドビューが多い。
さて、チャールズとワトソンのいる3号室からゲームスタート。2人はほかのお客さんにあいさつしようと部屋を出た。
廊下に沿って、奇数番号の扉が並んでいる。どこから調べてもいいが、まず隣の1号室に入ってみると……
部屋の中にある落とし穴に、チャールズが落ちて死亡。
ここで新たな主人公が現れて、チャールズを殺した犯人を捜し出す、というヒッチコック的な展開だったら、それはそれでおもしろかっただろうが、そうなることなくこのままゲームオーバー。コンティニューはなく、途中でセーブもできないため、最初からやり直しとなってしまう。
デルタ・プリンセス号には、ほかにも落とし穴の仕掛けられた客室が1つ、さらに、入った途端にナイフが飛んでくる客室が1つある。どれも引っかかるとチャールズは即死、即ゲームオーバー。どんな客船なんだ。そしてどんなゲームなんだ。
いや、もしかしたら、意外とこういう外輪船には、そこらじゅうに落とし穴があったり、ドアを開けたらナイフが飛んでくる仕掛けがあったりするのかもしれない。実際に外輪船に乗って、調べてみることにした。
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