第5回 ゲームをより面白くする「4ステージ1セットの法則」なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/2 ページ)

» 2010年08月12日 14時45分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 この法則を使ったゲームの存在は任天堂に限った話ではありません。「スーパーマリオ」よりも前の1984年に、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)が発売した「パックランド」がその最たる例ではないでしょうか。

 「パックランド」は、敵のモンスターに捕まらないように主人公のパックマンを操作してゴール地点へ到達すればステージクリアとなるアクションゲームです。全48ステージで構成され、4ステージごとにひとつの「TRIP」という単位でステージを区切っています。1〜3面までは画面を左から右へと進み、3面をクリアするとフェアリーの女王と思しきキャラクターが現われて、パックマンが迷子になった妖精を送り届けてくれたお礼に空を飛べる「魔法のクツ」をプレゼントしてくれるうれしい演出があります。すると次の4面に限り「魔法のクツ」を履いた状態でプレイできるとともに、これから帰り道を進むということで進行方向が右から左へと逆転します。そして無事ゴール地点にたどり着くとそこにはパックマンの自宅があり、妻のミズ・パックマンとベビーがお出迎えをしてくれます(※TRIP2以降も同様)。また、動画を再生した方はすぐに気づいたかと思いますが4面に限りBGMが異なっており、プレイヤーは一刻も早くゴールに着きたくなるような気分にさせてくれます。

 本作もわずか4面という短い時間の間にきちんとしたストーリー性を盛り込み、プレイヤーに大きな感動と達成感を与える完成度の高さは今なお色あせることがありません。筆者も初めて「魔法のクツ」をもらったり無事自宅に戻れたときの感動は、あれから20年以上が経過した現在でも忘れがたい思い出として残っています。

「パックランド」 TRIP1(※プレイステーション版「ナムコミュージアムVol.4」を使用)
(C)1996 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED.

 もうひとつ、カプコンが同じく1985年に発売した「戦場の狼」にも実は「4ステージ1セットの法則」が存在しています。まずオープニングのシーンで主人公のスーパージョーは味方のヘリコプターによって戦場に運ばれると、飛び去るヘリに向かって手を振って見送るところから戦いがスタートします。1〜3面をクリア後にはスーパージョーがタバコを吸うなどして束の間の休息をとる演出があり、そして4面のラストの場面で激しい攻撃に耐えて見事勝利するとファンファーレが鳴ってプレイヤーを祝福するとともに、先ほど見送ったヘリが今度は出迎えに来てくれて新たな戦場へと再び送り届けてくれるようになっています。本作でも4面になるとBGMが変わり、さらに終盤になると敵軍がスーパージョーの侵入に対して警戒を促すサイレンの音が鳴り響き、プレイヤーにさらなるスリルと臨場感を高めてくれる素晴らしい演出も見逃せないところです。

「戦場の狼」 ステージ1〜4(※プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用)
(C)CAPCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.

 これまたナムコが1985年に発売した「メトロクロス」は、ちょっと変わった「4ステージ1セットの法則」を取り入れた作品です。本作は制限時間をオーバーしないうちにゴール地点まで到達すればステージクリアとなるアクションゲームで、1〜3面までは各ステージごとに残り時間があらかじめ設定されています。で、ここで注目していただきたいのは、4面の開始時点まで1〜3面までの残りタイムを画面右下にずっと表示させ続けていること。これはいったいなぜだと思いますか?

 その答えは、1〜3面までの残りタイムの合計が4面の制限時間にプラスされるシステムになっているから。つまり3面までのステージをなるべく速いタイムでゴールするほど、4面の攻略がよりしやすくなるという戦略性が生まれる仕掛けになっているというワケですね。

「メトロクロス」 ステージ1〜4(※プレイステーション版「ナムコミュージアムVol.5」を使用)
(C)1996 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED.

 また今回は動画や写真を用意していませんが、このように4面を1セットで構成するという例は他にもいろいろ存在し、古いところではテーカン(現:コーエーテクモゲームス)が1981年に発売したシューティングゲームの「プレアデス」などの作品にも見られます。さらにカプコンの「1942」では、4面ごとに難易度を低く抑えた「ポイントアップステージ」を登場させ、ゲームにメリハリを持たせる工夫がなされている例もあります。

 プラットフォームを問わず、最近のゲームでは4ステージごとに区切って変化をつけたような作品はほとんど見る機会がなくなった感がありますが、今回取り上げた作品をあらためてプレイしてみたところ、その面白さは今も健在であると率直に思いました。もちろんステージ構成だけがすべてではありませんが、ゲームをより面白くするひとつのセオリーとして「4ステージ1セットの法則」は確実に存在すると言えるのではないでしょうか。

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「ドンキーコング」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「ドンキーコングJr.」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「パックランド」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.5」
  • 「戦場の狼」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「メトロクロス」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.4」

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

 1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

 Twitterは http://twitter.com/m_shigihara です。

(著者近況)

「今年5月より発売になりました、「デジタルゲームの教科書」におきまして、筆者は第16章「アーケードゲーム業界の歴史と現況」の執筆を担当いたしました。ゲーム業界への就職、または転職を考えているみなさんには特にオススメの内容となっておりす。また、フルカラーページになったiPhoneアプリ版も発売していますので、こちらもぜひご利用下さいね!」


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/08/news177.jpg イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  2. /nl/articles/2411/06/news180.jpg 「むりだろww」「笑いました」 ニトリでソファ購入 → 愛車の前でぼうぜん…… “まさかの悲劇”が1000万表示
  3. /nl/articles/2411/07/news182.jpg 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  4. /nl/articles/2411/07/news163.jpg 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. /nl/articles/2411/05/news138.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  6. /nl/articles/2411/08/news132.jpg peco、息子の近影を公開「すごーくりゅうちぇるに見えます!」「パパに似てる〜」 息子のスクールランチも色とりどりでおいしそう
  7. /nl/articles/2411/08/news143.jpg 高嶋ちさ子、3000万円超の“超高級外車”ゲットにドヤ顔も! 笑い止まらずハンドル握り「Woohoo!!!」
  8. /nl/articles/2411/07/news029.jpg 50代主婦が5日間、ひたすら草抜き&庭木の剪定→たった一人でやり遂げたとは思えないビフォーアフターに称賛の嵐 「尊敬する」「本当に脱帽です」
  9. /nl/articles/2411/08/news025.jpg 「そうはならんやろ」クルマ修理会社の壁を見ると…… まさかの“シュールすぎるイラスト”に9万いいね 「よすぎる」「天才か」
  10. /nl/articles/2411/08/news111.jpg 2人組ガールズユニット、突然の脱退を発表 マネージャー「本人の意思ではない」 母親とする人物からの脱退理由と経緯説明が物議
先週の総合アクセスTOP10
  1. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  2. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  3. 結婚相手を連れてくる妹に「他の人に会わせられない」と言われた兄、プロがイメチェンしたら…… 「鈴木亮平さんに見えた」大変身に驚がく
  4. 「2007年に紅白出場」 38歳になった“グラビア界の黒船”が1年ぶりに近影公開→驚きの声続々
  5. 「クソビビったwww」 ハードオフに38万5000円で売っていた「衝撃的な商品」が90万表示 「売った人突き止めたい」
  6. 夫婦喧嘩した翌朝の弁当を夫が作ったら…… “森”すぎるビジュアルに「インパクトすごい」「最高に笑いました」の声
  7. 約9万円の「高級激レアガンプラ」を10時間かけて制作→完成品に「家宝だ」「めっちゃくちゃにかっこいい!!」
  8. 天皇皇后両陛下主催の園遊会、“お土産”に注目 ジョージア大使「大好物です」「娘たちからも大好評」
  9. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  10. 事故で重体の人気日本人TikToker、1カ月の意識不明と家族ケア経て逝去……“旅立ち直前に会った”親友は「励ましに来てくれてたのかな」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた