BREWに新プラットフォーム、Android向けアプリ市場にも注力――KDDI鴨志田氏
ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2010」でKDDIの鴨志田博礼氏が、auケータイ向けに新しいアプリプラットフォームを追加する計画や、Androdアプリへの取り組みを説明した。
8月31日に開幕したゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2010」で、KDDIの鴨志田博礼氏(グループ戦略統括本部 新規ビジネス推進本部 コンテンツビジネス部長)が、同社のアプリビジネスに対する取り組みを語った。auケータイ向けに、オープンアプリプレイヤーをベースに通信制限などを撤廃した新アプリプラットフォームを検討していることが明かされたほか、Android向けコンテンツビジネスに対する同社の施策が説明された。
ケータイ向けに「従来より取り回しのいい」新アプリプラットフォームを追加
KDDIは国内キャリアで唯一、ケータイ向けアプリの実行環境にBREWを採用している。EZアプリ(BREW)のタイトルは現在7000程度で、「順調に増加している」と鴨志田氏は語るが、最大10Mバイトに制限されたアプリサイズや、1日6Mバイトまでのデータ通信制限などの各種仕様に対して、アプリ提供者から改善の要望が集まっているのも事実だ。そのため、KDDIはオープンアプリプレイヤー(J2ME/CLDC/MIDP)をベースに従来より自由度の高いアプリプラットフォームを追加することを検討しているという。
鴨志田氏は新たなアプリプラットフォームの提供時期に関してコメントを控えた。しかし講演では、SDカードの利用でアプリサイズが無制限となることや、ヒープサイズが16Mバイトまで拡大されること、通信制限がなくなること、配信サーバが専用サーバ(ADS)以外にも開放されること、無料アプリが提供できること、KDDIによる検証がないことなど、具体的なプラットフォームの内容が示された。こうした改善により、「従来より取り回しのいい環境が提供できる」と鴨志田氏は考えている。
今後、EZアプリのマーケットである「EZアプリを探そう!」では、従来のEZアプリに加え、新アプリの情報も掲載されるという。また、9月末には公式サイトの「au one ゲーム検索」を「アプリ検索」へリニューアルすることもアナウンスされた。
「au one Market」のコンテンツ追加申請は「最短で3日、4日」
ケータイ向けアプリ環境の改善を明かした一方、鴨志田氏はAndroid向けアプリビジネスの説明に多くの時間をさいた。同社は6月30日に初のAndroid端末「IS01」を発売。販売台数は堅調に伸びているという。
Android向けに同社が独自に用意したマーケット「au one Market」は、Googleが用意するAndroid向けマーケット「Android Market」からKDDIがピックアップしたお勧めアプリに加え、KDDIやコンテンツプロバイダーの配信サーバから提供されるアプリを紹介する。こうした独自の配信サーバから提供するアプリは、端末の利用料と合わせて課金する「auかんたん決済」が利用できるのが特徴の1つだ。
auかんたん決済ではユーザー認証「au one-ID」を登録することで、auかんたん決済対応のPC向けコンテンツなども購入できる。将来的には1度購入したアプリやコンテンツを、スマートフォン、PC、テレビなど、複数デバイスで利用できるようにしたいと鴨志田氏は話す。
au one Marketでかんたん決済を利用した場合、アプリのダウンロード課金にかかる手数料の割合は30%で、Android MarketやApp Storeと同等。月額課金やアイテム課金に関しては、ケータイ向けと「大きく変わらない程度」の料率が設定されているという。
また、au one Marketの特徴として、機種別に異なるバイナリのアプリを提供できることも鴨志田氏は説明。これは、端末性能の限界を追求するゲーム会社の要望に応えるために導入したものだ。
Androidのアプリビジネスを加速させるため、アプリの申請手続きの簡略化にも努めたという。KDDIによるアプリの審査は、公序良俗観点でのチェックと起動時の動作ログチェックにとどめ、「最短で3日、4日でコンテンツを追加できる」ようだ。一方、公序良俗観点のチェックに加え、15分の動作ログチェックを行う「au one Marketセキュアアプリ」の仕組みも用意し、ユーザーにアプリの信頼性を示すという。
鴨志田氏は、「auのスマートフォンの取り組みは遅れたと言われるが、秋冬には積極的にプロモーションをかけて盛り返す」と意気込む。コンテンツ購入を促進すべく、9月2日〜11月30日まで「ワンコインキャンペーン」を行い、いくつかのアプリを100円に値下げして提供する。また、秋冬に投入するAndroid端末第2弾と連動したプロモーションも企画しており、鴨志田氏はコンテンツプロバイダーにプロモーションへの参画を呼びかけた。
モバイルゲームビジネス拡大に「新たなタッチポイント創出が必要」
鴨志田氏によれば、EZwebにおけるコンテンツ流通額は年々拡大を続けているが、ゲームカテゴリに属したコンテンツだけをみると、流通額、利用者数ともに顕著な伸びは見られず、成熟市場となっているという。その一方で、ここ近年市場が拡大しているのが、SNS上のアイテム課金サービスだ。同社はこれらを“コミュニケーション系コンテンツ”に分類しているが、実際にはソーシャルゲームと呼ばれる分野のサービスである。2009年後半ごろから急成長をはじめ、「最近は若干伸びがゆるやか」になっているものの、順調に拡大していると鴨志田氏は話す。「ユーザー数は既存のゲーム系の5分の1以下の規模。まだまだ成長の余地がある」(鴨志田氏)
auユーザーにおける既存のゲーム系アプリの利用者とSNSのアイテム課金サービスの利用者を分析すると、2つの間にユーザーの重複はあまりみられなかったという。EZwebのメニューから検索する既存のゲームとは違い、SNSという「新たなタッチポイント」からゲームを提供したことで、従来と異なるユーザー層にゲームビジネスを展開できたと鴨志田氏は分析。「さらなるモバイルゲームビジネス拡大のためには、次のトレンドを捉えた新たなタッチポイント創出が必要」と指摘した。
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