「想定外の想定外でした」――開発者が開かす「ぼくなつ」8月32日の秘密日々是遊戯

「ゲーム史上もっとも怖いバグ」のひとつとして有名な、「ぼくのなつやすみ」の「8月32日バグ」。このバグについて、なんと生みの親である綾部和氏がTwitterで直々にコメントしていました。

» 2010年09月02日 20時49分 公開
[池谷勇人,ITmedia]

ドライバーが堅牢すぎたのも原因だったそう

 以前この連載でも取り上げた、プレイステーション版「ぼくのなつやすみ」の「8月32日バグ」を憶えていますか? ゲームクリア後、ある操作を行うことで、ボクくん以外の人間が消滅し、様々な怪奇現象が発生する「8月32日」がプレイできるというもので、「ゲーム史上もっとも怖いバグ」のひとつとしてゲームファンの間ではしばしば話題となっていました。

 そんな「8月32日バグ」について先日、なんとTwitterで作者本人が解説を寄せていましたので紹介します。解説しているのは、初代「ぼくなつ」で原作・脚本・監督を務めた、ミレニアムキッチン代表の綾部和(@ayabekaz)氏。綾部氏はバグが発見された当時を次のように振り返ります。

「(略)…あれはぼくなつ1の発売後2年ほど経過してから発見されたものなんです。症状を聞いた瞬間『なんてナイスなバグなんだ』と不覚にも思ってしまいましたw その時点では単なる『就寝せずに翌日へ行けるバグ技』です」(@ayabekaz)

 通常、絵日記画面では画面左上に電気スタンドのヒモが表示されていて、クリックすると絵日記を書いて寝る(次の日に行く)ことができます。しかし「夜以外はヒモのグラフィックが表示されていないから、まさかそこにカーソルが移動できて、クリックできるバグが潜んでいるとは誰も思いませんでした」と綾部氏。まあ、これだけなら「就寝せずに翌日へ行ける」というだけで済んだのですが、問題はクリア後に「思い出」として見られる「8月31日の絵日記」からも同じことができてしまった、ということでした。

「(略)クリア日付が31日だから、翌日になっちゃって32日に行けます。これはまさに想定外の想定外でした。」(@ayabekaz)

 当たり前ですが、ゲームは8月31日で終了ですから、8月32日に行けたところで参照するデータがありません。しかし、ここで普通のゲームなら動かなくなってしまいそうなところ、「ぼくなつ」はそうではありませんでした。

「8月32日なんてデータは用意されていませんから当然むちゃくちゃになりますが、その部分はプログラミングが優秀なので、ドライバーが堅牢で、データが存在しない日時に突入してもボロボロになりながら動いてるんです。ある意味すごいことなんだけど、(次のツイートへ続く)」(@ayabekaz)

「(続き)さすがにデータがないまま動き続けるのは無理なので、ああいうホラーな見た目になっているんです。メモリーの狭間にある各種のドライバーにとっては無意味な情報を、無理やり視覚化するとああいうグラフィックになるということですね。」(@ayabekaz)

 ――と、綾部氏にとっても完全に想定外の出来事だったとのこと。なるほど、本来あるべきデータが存在しないから、登場人物が消えてしまったり、文字化けやテクスチャの崩壊などが起こってしまうんですね。データが存在しない日付に突入しても、ドライバーが堅牢だったためになんとか動いてしまう……というのもスゴい話です。プログラミングが優秀だったがゆえに、逆にあんな怖いバグになってしまったと考えるとちょっと不思議な気持ちになりますね。

 綾部氏のツイート全文を読みたい方は、「ぼくのなつやすみの8月32日をついに解説(作者本人)」としてtogetterにまとめられていますので、興味がある方はぜひ目を通してみてください。最後に、今回のツイートについて紹介していいか綾部氏に尋ねてみたところ、快くご了承いただけたほか、次のようなコメントもいただきました。

「でも、ぼくなつは本来のゲームそのものもかなり面白いので、これをきっかけに遊んでみてください」(@ayabekaz)

 綾部氏が言うとちょっと自画自賛っぽいですが、確かに「ぼくなつ」はバグ抜きにしても大好きなシリーズのひとつです。もしまだ遊んだことがない人は、この機会にぜひプレイしてみてくださいね。

問題の「8月32日」。ニコニコ動画やYouTubeといった動画サイトを通じて、一躍有名になりました

Twitterでバグ発見当時を振り返る綾部氏。9月1日(8月32日)にこの話題を持ってくるところもニクいですね

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