CEDEC2010からの新たな試み――「ポスター発表」って?CEDEC 2010(2/2 ページ)

» 2010年09月06日 13時56分 公開
[山本大樹,ITmedia]
前のページへ 1|2       

些細だが身近な問題――TV・PCモニタの開発企業へのメッセージも込めた「AV機器遅延の実態」

 市販のテレビやPCモニターを選ぶ際、表示にかかる遅延を、選考基準にされている方は少なくないと思う。開発者やクリエイターではなくても、身近な話題である。テレビなどのAV機器が高性能化、大きな解像度や多彩な機能を持つようになった最近では、それに伴って入力映像・音声の遅延が目立つようになってきた。

 その「どのくらいの遅延が発生するのか?」というものを独自のゲーム開発環境から遅延時間を測定し、「ゲーム業界の立場」から、情報を発信されているセッションが、バンダイナムコゲームスの森口明彦さんが出展されていた「AV機器遅延の実態」だ。

 森口さんの調査した情報によると、解像度が大きければ大きいほど遅延も大きく、40型ではなんと6.0フレーム(0.1秒以上)の遅延があるそうだ。逆に24型未満は2.0フレーム以下、PCモニターについては1.0未満で、ブラウン管は当然ながら遅延はない。

 今までブラウン管を利用していたため、今の機器で「遅延」という問題が起こるのは逆に新鮮だとの考えもあるそうで、それならブラウン管を使えば解決という話ではない。この問題は、実は機器メーカーもあまり詳細な部分まで把握しておらず、実態がつかめていないとのこと。だからこそ遅延問題をとりあげることによって、機器メーカーに遅延の実態という形で、正確かつ瞬時の反応が求められる「テレビゲーム」などを開発する立場から、ゲーム業界からの情報ならではの意見・メッセージを伝え、これからの製品について遅延に対する対策を呼びかけている。

 例えばゲームモードの実装(遅延2.0フレーム未満の保証)などが挙げられているが、AV機器メーカーだけではなく、ゲームの開発環境で可能な対策も考えられている。判定制度を甘くするとゲームが大味になる恐れがあるが、対策の一つとして提示されており、その他にもタイミングを遅延分ずらす補正機能などが挙げられている。開発環境で対策可能な部分については「ゲームのシーンごとに許容または対策可能な遅延の範囲は異なるため、どの検証においても定量的な遅延の情報は有効活用できる」という。

セッションの概要がポスターにまとめられている。AV機器メーカーの方々も大変興味をしめされているそうだ
写真左が森口さん。「時間の許す限り張り付いて皆さんとお話できれば」と仰っていた通り、ご自身のブースで活発的にアピールをされていた

そのほかにも様々なセッションが。新しいアイディア、アピールが織り成すポスター発表

 主に取り上げたセッション以外にも、多くの人々が関心を持つセッションがたくさんあった。ポスター発表の主旨の通り、新進気鋭の若手技術者や学生からのアプローチの場として、また、既存からの進歩を遂げた技術の発表の場として、シンプルながら大変有意義なものに仕上がっていた。

 これらひとつ一つのポスターが、様々な人々の目にとまり、少しでも多くの情報として、今後の技術の発展や、学生の研究内容のアピールとして活用されることに期待がもてそうだ。今年初でこれだけの情報と技術が集まったので、次回もしポスター発表が開催されるなら、今回見逃してしまった人も、取材する身としても、是非楽しみにしたいところである。

物理エンジン関係のポスター発表には、このような実験機材も設置されていた
間違いだらけの英会話というセッションは、漫画という形で発表されていた。発表者の下田さんは「日本人が思っているほど日本の英語水準は低くない。」とも仰っていた

Twinkle: プロジェクタを用いた実世界ゲームインタフェースでは、拡張現実感(AR)を写真のように色や線を識別して、それに対応するアクションを投影する。赤(炎)を認識して燃えたら、青(水)で消火するデモをやってくれた
現実世界の円柱内に、三次元モデルが見えるようになる、「ARカプセル」 ヘッド・マウンテッド・プロジェクタによる仮想キャラクター表示手法のブース。ピコ・プロジェクタ+カメラを装着し、実際に試してみることが可能だった

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  2. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  3. /nl/articles/2411/24/news040.jpg 海で“謎の白い漂流物”を発見、すくいあげてみると…… 2億1000万再生された結末に「本当によかった」「ありがとう」【チュニジア】
  4. /nl/articles/2411/23/news031.jpg スーパーで売っていた半額のひん死カニを水槽に入れて半年後…… 愛情を感じる結末に「不覚にも泣いてしまいました」
  5. /nl/articles/2411/24/news029.jpg 難問の積分計算をホワイトボードに書き置きしておいたら……? 理系大学での出来事に「かっこいい」「数字でつながる感じいいな」の声 投稿者にその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/22/news087.jpg 「うおおおおお懐かしい!!」 ハードオフに3300円で売っていた“驚きの商品”が140万表示 「ガチのレアモンや……」
  7. /nl/articles/2411/24/news058.jpg 夫妻が41年ぶりに東京ディズニーランドへ→“同じ場所”での写真撮影時に「キャストの粋なサポート」明かす
  8. /nl/articles/2411/23/news025.jpg 「大企業の本気を見た」 明治のアイスにSNSで“改善点”指摘→8カ月後まさかの展開に “神対応”の理由を聞いた
  9. /nl/articles/2411/23/news029.jpg カマキリを操る寄生虫「ハリガネムシ」食べてみた 未知すぎる“衝撃的な内容”に震撼 「正気を疑う」「鳥肌立ったわ」
  10. /nl/articles/2411/24/news011.jpg ミスドのディグダを買おうとしたら…… とんでもなく疲れていそうな見た目に「悲壮感がすごい」「朝帰りのディグダ」と46万いいね
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた