“電書時代”のゲーム製作雑誌「がまぐ!」創刊――「ゲームは誰でも作れる、ということを伝えたい」日々是遊戯

現役のゲームクリエイターやプログラマー、ライター、講師たちが集まって創刊された、ゲーム製作雑誌「がまぐ!」。編集長の土本さんにメールでお話をうかがいました。

» 2010年12月15日 22時30分 公開
[池谷勇人,ITmedia]

ゲームは誰でも作れるもの

 読んだ人の中には、懐かしの「マイコンBASICマガジン(ベーマガ)」を思い出した人も多かったのではないでしょうか。

 「ゲーム製作の雑誌ってないよね」――そんなTwitterのつぶやきから始まった、中高生向けのゲーム製作雑誌「がまぐ!」が本日12月15日、新たに創刊されました。といっても書店で売られているような「紙の雑誌」ではなく、ファイルはPDF形式、いわゆる「電子書籍」の形で公開されており、誰でも公式サイトから無料でダウンロードすることが可能となっています。

 創刊号の内容は、巻頭の「ゲームとは何か」にはじまり、「コンピュータゲームの基本構造」、「ゲームデザインの基本」、「Java+Swingの基本」、「C#+XNAの基本」など複数の章で構成。巻末には「ベーマガ」時代を思い起こさせる、「投稿ゲーム」コーナーもあります。対象ユーザーは主に中学生〜高校生とのことで、ゲームの製作経験がない人にも比較的分かりやすい内容にまとまっているのが特徴です。

 編集長はゲームクリエイターの土本強さん(@117Florian)で、ほかにも現役の作曲家やゲームプログラマー、ライター、イラストレーター、専門学校の講師など様々な人が執筆には関わっているそう。中には「ABA Games」の長健太さん(@abagames)をはじめ、ライター・ゲームデザイナーとして活躍中の岩崎啓眞さん(@snapwith)、「ONION software」のおにたまさん(@onionsoftware)といった有名な方の名前もあり、執筆陣の顔ぶれはかなり豪華と言えそうです。

 せっかくなので、編集長の土本さんにメールで簡単な質問を投げてみました。

―― 特に見てほしい部分などはありますか?

土本さん 内容よりも、なんとかして中高生に見ていただきたいです。彼らの生の声を非常に知りたいです。

―― 企画から創刊までの手間は?

土本さん あくまで「やりたい人がやる」という前提を貫いているので、企画にはほとんど手間がかかっていません。書きたいことのうち、ターゲットにとって必要なことを選別して、割とゆるい締め切りを設けて手分けして書きました。編集自体はあらかじめOpenOffice.orgのマクロや編集機能におんぶにだっこで、ほぼ人の手は介在していません。一番手間がかかったのは「告知」でした。

―― 電子書籍という形態をとった理由は?

土本さん 当初の理想は「コンビニで売っている紙の書籍」でした。週刊漫画雑誌を手に取るように、ゲームを遊ぶ人の中でも結構ライトな層が何となく手を取って「思ったよりもゲームって作れるんじゃね?」と思ってもらえればいいな、と。ですが、現在の出版に対するエコシステムはあまりにパイが少ないため、紙での書籍の出版は断念。またコミケなどでの同人誌としての頒布も「当の中高生が買えない」という理由で断念しました。無料配布という形をとっているのも、有料だとクレジットカードなどを持たない中高生が購入できなくなってしまうからです。

―― 今後扱っていきたい内容などはありますか。

土本さん コンセプトはただ一つ、「いかにゲームを楽に作れるか」ということを伝えたい、という点に尽きます。今回はたまたまXNAとJavaを扱っていますが、もっと簡単に作る方法があるのならば何でも紹介していく予定です。あと、執筆陣がゲームデザイン関連に一家言持っている人たちばかりなので、なんとかしてゲームデザインの話をねじ込みたいと思っています。無節操に書くとそれだけで何百ページにもなっちゃいそうなので(笑)。


 面白いのが、掲載されているプログラムはコピー&ペーストができず、動かすためには実際に自分でキーボードから打ち込む必要があるという点。「敷居が高い」と見るか「面白い」と見るかは人それぞれかもしれませんが、「ベーマガ」でプログラミングを覚えた世代にとっては、これだけでもかなりグッと来るのではないでしょうか。

 今後の発刊スパンについては、今のところ年4〜6回を予定しているとのこと。「ベーマガ」が休刊になってしまっている現在、こうした初心者向けのゲーム製作雑誌は書店から完全に姿を消してしまいました。果たして今後「がまぐ!」は、“電書時代”の新たな「ベーマガ」になれるのか、第2号以降の内容にも注目していきたいところです。


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