第6回:ハラハラドキドキ感を演出するゲームサウンドの魅力:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/2 ページ)
主人公をパワーアップさせた快感がさらに増すのはサウンドのおかげ
BGMを変化させるのは、何もプレイヤーにプレッシャーを与える目的に限った話ではありません。その反対にプレイヤーが思わずガッツポーズをしたくなるほど喜ばせたり、爽快感をアップさせるためにも効果的に使われます。
再び「スーパーマリオ」を例にとれば、マリオが一定時間無敵になる効果を持つスターを取ると曲がノリノリのBGMに変わるようになっていますので、プレイヤーは画面内にいる敵に向かって片っ端からついつい体当たりしたくなってしまいます。また、同じく任天堂作品の「レッキングクルー」では、マリオが隠れキャラクターのゴールデンハンマーを取るとハンマーを振るスピードとパワーがアップし、やはりノリノリの音楽に変化することで壁や敵を叩いたときの爽快感がますますアップするようになっています。
主人公が無敵になったときの演出において、筆者が特に面白いと思うのはナムコが1984年に発売した「リブルラブル」です。本作では花や実などを囲んで主人公のエネルギーを増やし(※エネルギーの残量はフィールドの外周に表示されます)、ゲージを満タンにすると一定時間だけ無敵状態になってBGMも変わるようになっています。さらに、この状態のままステージをクリアすると残った体力に応じたボーナス得点が入る演出もあるので、プレイヤーにとってはまさに二重の喜びとなります。
ちょっと変わったところでは、高いところから落ちるとすぐに死んでしまうことから一躍有名になってしまった(?)、1985年にアイレムがファミコン用ソフトに発売した「スペランカー」。主人公が隠れキャラのアイテムを取ってパワーアップすると、その効果(※一定時間移動速度アップ、無敵、得点2倍の全3種類)によってそれぞれ異なるBGMに変わるようになっていてプレイヤーを楽しませる作品になっていました(実戦的にはイマイチ役に立たないものありましたが……)。
また、多くのアクションおよびシューティングゲームにおいては、自機がアイテムを取ったりしてパワーアップするとアイテム取得時に効果音が鳴ったり、ショットを発射したときの音が変わることによって耳でもその効果が明確に分かるようになっています。
その代表的な例が、テーカン(現:コーエーテクモゲームス)が1984年に発売した「スターフォース」や、ハドソンのファミリーコンピュータ用ソフト「スターソルジャー」などのシューティングゲームです。いずれも自機がパワーアップすると軽快なBGMが流れることによって、プレイヤーは思わずショットボタンを連射したくなるような気分になってしまいますよね。
他にもあります! サウンドを効果的に使用した面白い仕掛けの数々
さらに調べてみると、ゲームならではのサウンドを巧みに利用したユニークな演出がまだまだたくさんあることに気付きます。
プレイヤーにさらなる達成感を与えるために曲が変わる例としては、現在でもシリーズ作品が発売されている任天堂の「ファイアーエムブレム」が有名でしょう。本シリーズでは、敵のユニットをほぼ全滅させて優勢になるとBGMが変化するようになっていますので、特に味方のユニットを1人たりとも死なせずに攻略できたときには、カッコイイ曲が流れることで嬉しさが2倍にも3倍にもアップします。
一方「ドラゴンクエストII」では、最初は一人旅だったローレシアの王子がサマルトリアの王子とムーンブルクの王女と出会い、3人のパーティ全員がそろうとフィールド上のBGMが変わることでもおなじみですよね。さらに誰か1人が死んでしまうと以前のBGMに再び戻ってしまうシステムになっていたので、プレイヤーがミスをしたときの悲しさがさらに増す効果もありました。また、スーパーファミコン版「ドラゴンクエストVI」などのシリーズ作品では、メッセージが表示されるときの音を男性キャラの場合は低く、女性キャラだと高い音を鳴らすことで、例えボイスが入っていなくても会話のリアリティが高まる仕組みになっています。
BGMを使った面白い演出として筆者が特に印象に残っているのは、旧ナムコが1987年に発売したシューティングゲームの「ギャラガ'88」。なんと本作ではサウンドと敵の動きがシンクロしていて、チャレンジングステージ(ボーナス面)になると敵の出現および画面外に逃げ出すタイミングが、ワルツやタンゴなどのメロディーにピタリと合っているのです。プレイヤーはこれに気付くことによって、ノリノリ状態でゲームが遊べるのと同時に攻略のヒントが得られる効果もあるわけですね。
このゲームの知らなかったというみなさんは、この機会にぜひ、ムービーを見てその妙味をぜひご堪能ください!
これ以外にも、テクモ(現:コーエーテクモゲームス)の名作ファミコンソフト「キャプテン翼」シリーズでは、味方の選手がボールを持っているときと相手選手がボールを持っている場合とでは異なるBGMが流れるようになっていたので、プレイヤーは自分が攻撃側か守備側なのかが一目ならぬ一聴瞭然に分かるようになっていましたよね。
ゲーム中にずっと演奏されるBGMだけでなく、ときどきほんの一瞬だけ流れるジングルに面白い工夫を凝らしている作品も少なからず存在します。
カプコンが1984年に発売したシューティングゲームの「1942」では、自機がやられて再スタートした際に短い曲が流れるようになっているのですが、この曲には実は2種類のパターンがあります。本作では、4面ごとにポイントアップステージという通常よりも難易度が低下したステージが登場するようになっているのですが、この「ポイントアップステージ」でミスをしたときに限り再スタート時の曲が変わるようになっているのです。
と、いうことで実際にムービーをご覧になってみてください。まるでプレイヤーに対して、「こんなところでやられちゃダメじゃないか! もっとしっかりやれよ!」と檄を飛ばされているかのような気になりませんか?
また、日本物産が1985年に発売したアーケード用シューティングゲームの「テラクレスタ」では、ミスをした直後の再スタート時に流れるジングルがラスト1機になったときに限り変化する面白いアイデアを採用していました。筆者も初めてこれに気付いたときには「今度ミスったらゲームオーバーになる、ヤバイぞ!」と、プレイ中の緊張感がグッと高まった思い出があります。
以上、今回はサウンドに関するお話をさせていただきましたが、みなさんはどんなご感想をお持ちになりましたか? ゲームにおけるサウンドの存在は、喫茶店などで流れる単なる環境音楽の枠をはるかに超えて、プレイヤーにさらなる快感を与える効果を及ぼすことで作品としての価値を大いに高める大事な要素であることが改めてお分かりいただけるのではないかと思います。
それでは、また次回もお楽しみに!
今回登場したソフトはココで遊べます!
- 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「スーパーマリオカート」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「ドラゴンバスター」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.2」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「トイポップ」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.1」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「ギャラクシアン」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「ドラキュラII 呪いの封印」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「スペランカー」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「スターフォース」:Xbox、PS2「テクモヒットパレード」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「スターソルジャー」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「リブルラブル」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.5」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「ギャラガ'88」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「1942」:PS2「カプコン クラシックス コレクション」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
- 「テラクレスタ」:Windows「ニチブツアーリーコレクション」(発売中)
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは@m_shigiharaです。
(著者近況)
先日は東京工科大学での授業、および日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)の2010年次大会においてアーケードゲームをテーマにした講演を行なってまいりました。大学の授業では、「アーケードゲームにおけるプレイヤー文化の変遷」と題して本連載でも取り上げた内容もふまえつつ、ゲーム業界を志望する学生のみなさんにお話をさせていただきました。人がゲームにハマル仕組みを知る、あるいは考えるためのヒントとしてお役に立っていればよいのですが…。今後もアカデミーの分野でどんどんお仕事をしていきたいと思いますので、もしご興味のある学校関係者の方がいらっしゃいましたらぜひご連絡くださいませ。
関連記事
- なぜ、人はゲームにハマルのか?:第5回 ゲームをより面白くする「4ステージ1セットの法則」
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の5回目は、ゲームに秘めたる「4」の数字を紐解きます。 - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第4回ピンチの後にはチャンスあり! プレイヤーへの爽快感を高める「逆転の法則」
スポーツでもゲームでも、味方と敵とで好守が逆転するシステムは実はコンテンツを面白くする普遍的な要素なのかも? - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第3回「なぜ、ゲームではステージ数の表示方法にこだわるのか?」
「ディグダグ」「ギャラガ」など、ステージ数の表示方法には、プレイヤーをついつい夢中にさせる驚きの仕掛けが! - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第2回「なぜプレイヤーは“ハイスコア”に夢中になるのか?」
いわゆる「ハイスコア」の存在が大きかったのではないでしょうか? - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第1回「なぜ、プレイヤーはマニュアルを読まなくてもゲームを遊べるのか?」
「ドラクエ」「スーパーマリオ」の記録的大ヒットの秘密は、ゲーム序盤のシーンに隠されていた! - 大人がたしなむゲーム講座
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
-
「むりだろww」「笑いました」 ニトリでソファ購入 → 愛車の前でぼうぜん…… “まさかの悲劇”が1000万表示
-
「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
-
「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
-
「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
-
peco、息子の近影を公開「すごーくりゅうちぇるに見えます!」「パパに似てる〜」 息子のスクールランチも色とりどりでおいしそう
-
高嶋ちさ子、3000万円超の“超高級外車”ゲットにドヤ顔も! 笑い止まらずハンドル握り「Woohoo!!!」
-
50代主婦が5日間、ひたすら草抜き&庭木の剪定→たった一人でやり遂げたとは思えないビフォーアフターに称賛の嵐 「尊敬する」「本当に脱帽です」
-
「そうはならんやろ」クルマ修理会社の壁を見ると…… まさかの“シュールすぎるイラスト”に9万いいね 「よすぎる」「天才か」
-
2人組ガールズユニット、突然の脱退を発表 マネージャー「本人の意思ではない」 母親とする人物からの脱退理由と経緯説明が物議
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 結婚相手を連れてくる妹に「他の人に会わせられない」と言われた兄、プロがイメチェンしたら…… 「鈴木亮平さんに見えた」大変身に驚がく
- 「2007年に紅白出場」 38歳になった“グラビア界の黒船”が1年ぶりに近影公開→驚きの声続々
- 「クソビビったwww」 ハードオフに38万5000円で売っていた「衝撃的な商品」が90万表示 「売った人突き止めたい」
- 夫婦喧嘩した翌朝の弁当を夫が作ったら…… “森”すぎるビジュアルに「インパクトすごい」「最高に笑いました」の声
- 約9万円の「高級激レアガンプラ」を10時間かけて制作→完成品に「家宝だ」「めっちゃくちゃにかっこいい!!」
- 天皇皇后両陛下主催の園遊会、“お土産”に注目 ジョージア大使「大好物です」「娘たちからも大好評」
- 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
- 事故で重体の人気日本人TikToker、1カ月の意識不明と家族ケア経て逝去……“旅立ち直前に会った”親友は「励ましに来てくれてたのかな」
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた