第6回:ハラハラドキドキ感を演出するゲームサウンドの魅力なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/2 ページ)

» 2011年01月18日 15時14分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]
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主人公をパワーアップさせた快感がさらに増すのはサウンドのおかげ

 BGMを変化させるのは、何もプレイヤーにプレッシャーを与える目的に限った話ではありません。その反対にプレイヤーが思わずガッツポーズをしたくなるほど喜ばせたり、爽快感をアップさせるためにも効果的に使われます。

 再び「スーパーマリオ」を例にとれば、マリオが一定時間無敵になる効果を持つスターを取ると曲がノリノリのBGMに変わるようになっていますので、プレイヤーは画面内にいる敵に向かって片っ端からついつい体当たりしたくなってしまいます。また、同じく任天堂作品の「レッキングクルー」では、マリオが隠れキャラクターのゴールデンハンマーを取るとハンマーを振るスピードとパワーがアップし、やはりノリノリの音楽に変化することで壁や敵を叩いたときの爽快感がますますアップするようになっています。

 主人公が無敵になったときの演出において、筆者が特に面白いと思うのはナムコが1984年に発売した「リブルラブル」です。本作では花や実などを囲んで主人公のエネルギーを増やし(※エネルギーの残量はフィールドの外周に表示されます)、ゲージを満タンにすると一定時間だけ無敵状態になってBGMも変わるようになっています。さらに、この状態のままステージをクリアすると残った体力に応じたボーナス得点が入る演出もあるので、プレイヤーにとってはまさに二重の喜びとなります。

 ちょっと変わったところでは、高いところから落ちるとすぐに死んでしまうことから一躍有名になってしまった(?)、1985年にアイレムがファミコン用ソフトに発売した「スペランカー」。主人公が隠れキャラのアイテムを取ってパワーアップすると、その効果(※一定時間移動速度アップ、無敵、得点2倍の全3種類)によってそれぞれ異なるBGMに変わるようになっていてプレイヤーを楽しませる作品になっていました(実戦的にはイマイチ役に立たないものありましたが……)。

※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)1984 2009 NGBI

 また、多くのアクションおよびシューティングゲームにおいては、自機がアイテムを取ったりしてパワーアップするとアイテム取得時に効果音が鳴ったり、ショットを発射したときの音が変わることによって耳でもその効果が明確に分かるようになっています。 

 その代表的な例が、テーカン(現:コーエーテクモゲームス)が1984年に発売した「スターフォース」や、ハドソンのファミリーコンピュータ用ソフト「スターソルジャー」などのシューティングゲームです。いずれも自機がパワーアップすると軽快なBGMが流れることによって、プレイヤーは思わずショットボタンを連射したくなるような気分になってしまいますよね。

「スターフォース」も「スターソルジャー」も、パワーアップ時に流れるBGMはノリノリで実にカッコよかったですよね!

※写真はそれぞれWiiバーチャルコンソール版、ファミコン版を使用。
(C)TECMO, LTD. All Rights Reserved.
(C)1986 HUDSON SOFT

他にもあります! サウンドを効果的に使用した面白い仕掛けの数々

 さらに調べてみると、ゲームならではのサウンドを巧みに利用したユニークな演出がまだまだたくさんあることに気付きます。

 プレイヤーにさらなる達成感を与えるために曲が変わる例としては、現在でもシリーズ作品が発売されている任天堂の「ファイアーエムブレム」が有名でしょう。本シリーズでは、敵のユニットをほぼ全滅させて優勢になるとBGMが変化するようになっていますので、特に味方のユニットを1人たりとも死なせずに攻略できたときには、カッコイイ曲が流れることで嬉しさが2倍にも3倍にもアップします。

 一方「ドラゴンクエストII」では、最初は一人旅だったローレシアの王子がサマルトリアの王子とムーンブルクの王女と出会い、3人のパーティ全員がそろうとフィールド上のBGMが変わることでもおなじみですよね。さらに誰か1人が死んでしまうと以前のBGMに再び戻ってしまうシステムになっていたので、プレイヤーがミスをしたときの悲しさがさらに増す効果もありました。また、スーパーファミコン版「ドラゴンクエストVI」などのシリーズ作品では、メッセージが表示されるときの音を男性キャラの場合は低く、女性キャラだと高い音を鳴らすことで、例えボイスが入っていなくても会話のリアリティが高まる仕組みになっています。

 BGMを使った面白い演出として筆者が特に印象に残っているのは、旧ナムコが1987年に発売したシューティングゲームの「ギャラガ'88」。なんと本作ではサウンドと敵の動きがシンクロしていて、チャレンジングステージ(ボーナス面)になると敵の出現および画面外に逃げ出すタイミングが、ワルツやタンゴなどのメロディーにピタリと合っているのです。プレイヤーはこれに気付くことによって、ノリノリ状態でゲームが遊べるのと同時に攻略のヒントが得られる効果もあるわけですね。

 このゲームの知らなかったというみなさんは、この機会にぜひ、ムービーを見てその妙味をぜひご堪能ください!

 これ以外にも、テクモ(現:コーエーテクモゲームス)の名作ファミコンソフト「キャプテン翼」シリーズでは、味方の選手がボールを持っているときと相手選手がボールを持っている場合とでは異なるBGMが流れるようになっていたので、プレイヤーは自分が攻撃側か守備側なのかが一目ならぬ一聴瞭然に分かるようになっていましたよね。

※Wiiバーチャルコンソールアーケード版を使用
(C)1987 2009 NBGI

 ゲーム中にずっと演奏されるBGMだけでなく、ときどきほんの一瞬だけ流れるジングルに面白い工夫を凝らしている作品も少なからず存在します。

 カプコンが1984年に発売したシューティングゲームの「1942」では、自機がやられて再スタートした際に短い曲が流れるようになっているのですが、この曲には実は2種類のパターンがあります。本作では、4面ごとにポイントアップステージという通常よりも難易度が低下したステージが登場するようになっているのですが、この「ポイントアップステージ」でミスをしたときに限り再スタート時の曲が変わるようになっているのです。

 と、いうことで実際にムービーをご覧になってみてください。まるでプレイヤーに対して、「こんなところでやられちゃダメじゃないか! もっとしっかりやれよ!」と檄を飛ばされているかのような気になりませんか?

 また、日本物産が1985年に発売したアーケード用シューティングゲームの「テラクレスタ」では、ミスをした直後の再スタート時に流れるジングルがラスト1機になったときに限り変化する面白いアイデアを採用していました。筆者も初めてこれに気付いたときには「今度ミスったらゲームオーバーになる、ヤバイぞ!」と、プレイ中の緊張感がグッと高まった思い出があります。

※PS2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
(C)CAOCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.

 以上、今回はサウンドに関するお話をさせていただきましたが、みなさんはどんなご感想をお持ちになりましたか? ゲームにおけるサウンドの存在は、喫茶店などで流れる単なる環境音楽の枠をはるかに超えて、プレイヤーにさらなる快感を与える効果を及ぼすことで作品としての価値を大いに高める大事な要素であることが改めてお分かりいただけるのではないかと思います。

 それでは、また次回もお楽しみに!

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「スーパーマリオカート」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「ドラゴンバスター」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.2」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「トイポップ」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.1」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「ギャラクシアン」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「ドラキュラII 呪いの封印」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「スペランカー」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「スターフォース」:Xbox、PS2「テクモヒットパレード」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「スターソルジャー」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「リブルラブル」:PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.5」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「ギャラガ'88」:Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「1942」:PS2「カプコン クラシックス コレクション」&Wiiバーチャルコンソール(配信中)
  • 「テラクレスタ」:Windows「ニチブツアーリーコレクション」(発売中)

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

 1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

 Twitterは@m_shigiharaです。

(著者近況)

 先日は東京工科大学での授業、および日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)の2010年次大会においてアーケードゲームをテーマにした講演を行なってまいりました。大学の授業では、「アーケードゲームにおけるプレイヤー文化の変遷」と題して本連載でも取り上げた内容もふまえつつ、ゲーム業界を志望する学生のみなさんにお話をさせていただきました。人がゲームにハマル仕組みを知る、あるいは考えるためのヒントとしてお役に立っていればよいのですが…。今後もアカデミーの分野でどんどんお仕事をしていきたいと思いますので、もしご興味のある学校関係者の方がいらっしゃいましたらぜひご連絡くださいませ。


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