“麻雀ゲーム”ではなく“麻雀”を再現する「Maru-Jan」の試みシグナルトーク代表取締役 栢 孝文氏に聞く

耐久といえば8時間だろう――。そんな軽い気持ちで始まった生放送企画「マルジャン放送局8時間スペシャル『全面対決!プロ雀士 vs 丸雀士!』」を振り返る。

» 2011年02月14日 13時58分 公開
[ITmedia]

あくまでも“運次第”の麻雀をいかにエンターテインメントとするか

シグナルトーク代表取締役の栢 孝文氏

 「“耐久”といえば8時間だろう、という軽いノリで企画はスタートしました」――。シグナルトーク代表取締役の栢 孝文氏は、1月26日に開催されたオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」を使用した生放送企画「マルジャン放送局8時間スペシャル『全面対決!プロ雀士 vs 丸雀士!』」をこう振り返る。

 やるのであれば話題になる面白いものを創ろうと考え、今後のインターネット生放送の可能性を計ろうともした。通常の1時間配信と異なり、ある程度の機材の準備も必要で、企画段階から飽きさせない工夫が必要だった。麻雀ファンの視点では、さまざまなプロの打ち方が一気に見られたのが面白いのではないかとの思いもあった。

 プロ雀士とはどれほど強いのだろうか? という単純な疑問を解消すべく、先日登録会員数が50万人を突破したオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」のユーザーを対象に行われた先述の生放送企画は、企画名のとおり8時間ぶっ通しでプロと対決でき、それを観戦することができた。

 以前から生放送では、プロに対局してもらったり、栢氏自身が出演しているのだが、その際ユーザーに勝てないことも多かったという。そこで、いっそのことユーザーとの対戦イベントをやろうという流れになるのは自然だったのかもしれない。実際に有料のオンライン麻雀ゲームだということもあり、本当にこだわってオンライン麻雀を遊んでいる人が多く、そうした対戦企画もある程度はウケがよいのではないかという目算もあったのだろう。

 うれしい誤算としては、プロ雀士の反応が良かったと栢氏。普段の麻雀は黙って打つものなので、自分の麻雀観や打ち方を話しながら打つ事が楽しかったとの感想も多かったそうだ。今回の企画ではユーザー側の勝利に終わったが、プロからまたやりたいという声も挙がっているという。もちろん、ユーザーからも「またやってほしい」「自分も参加したい」という声も多かった。

 通常数千人規模に考えを伝えるには大きな会場と大きな費用が必要だったが、インターネット上での放送では容易にそれが可能だ。ユーザーへの満足度を高めるためにも、この利点を使わない手はない。ましてや、「Maru-Jan」はオンライン麻雀ゲームだ。途中、回線トラブル等があり改善すべき点は多々あったが、概ねユーザーとのつながりを持つという点では大成功だったのではないだろうか。次回の開催では、ネットワークの技術的な問題をクリアして、安定したコンテンツを送りたいとの目標もできた。今度は何時間ぶっ通しになるかはまた別の話だ。

 麻雀というコンテンツを“エンターテインメント”として提供するシグナルトークにはひとつの仮説がある。麻雀は基本的には運のゲームで、プロが成り立ちにくい世界と言われている。プロが強いか弱いかという議論はあるとして、プロが勝つかどうかは誰にも分からなく、当然勝ったり負けたりする。つまり、プロではなくても、世界で一番の麻雀が強い人だとしても、勝つかどうかは運次第なのだ。

 それを踏まえて、麻雀をエンターテインメントとして扱う際には、2つの要素が必要だと考えている。それは「その時どういう考えをもって試合結果になったのか」。そして「どういうプロセス・考え方でその結果になったのか」というもの。

 運そのものを楽しむ点で見れば、スポーツの試合とは違い、面白い負け方や下手な勝ち方ということが必要なのではないだろうか。プロは試合結果も大事だが、対戦を見せるという観点からは、面白い言葉を持っていたり、タメになる考え方があるというのが必要なのだ。「勝ったり負けたりするだけであれば、普通の麻雀打ちでもやっていることですので」と栢氏は付け加える。

 「Maru-Jan」はユーザビリティを高めるためにありとあらゆることをしていくと標榜している。サーバーの安定度を高め、通信の速度を高め、バグを少なくする。遊べないユーザーを減らし、課金する手段を増やす。サポートのメール返信速度を上げ、返信内容を丁寧にする。まだまだある。デザインを綺麗にし、さまざまな場所から「Maru-Jan」にたどり着けるようにポータルサイトと連携を行う。もちろん今回の生放送のようなイベントも積極的に行っていく。

 どれも基本的なものであり、どのオンラインサービスでも通常やらなければいけないことだ。だが、そうした基本的なことをまずひとつずつ高めていくことが結果的にユーザーのためでもあるし、サービスそのもののためでもあるのは誰しもが分かっているが難しいことなのかもしれない。ユーザーに1つのことに満足してもらうだけでなく、すべてに満足してもらえるようにしたいと栢氏は語った。

 「『Maru-Jan』は麻雀ゲームではなく、麻雀を再現しようとしています。他の麻雀ゲームがどうのということではなく、実際の麻雀と『Maru-Jan』との間にまだまだ差があると思っていますので、足りないものだらけだと思っています」(栢氏)

 まだまだ改善すべき点は多いということか。今後のバージョンアップについて、「よく6年バージョンアップを続けているとやることは無いんじゃないか? と言われますが、今後のやることリストの内容が多すぎて開発陣が大変な思いをしているくらいです」と、今後のバージョンアップが期待できるコメントを出している。


 今後の目標としては、上記を踏まえて「Maru-Jan」の会員数を増やすことだけを目的とするのではなく、麻雀自体をより楽しんでもらえる様にしていきたいと栢氏。ユーザーの年齢層が広く、いかに彼らに“麻雀ゲーム”ではなく“麻雀”を提供できるかがカギとなるとみている。シグナルトークとしては、先日発表した認知症研究の予防・治療に向けた研究について、今後もさまざまな協力を得て準備し進めており、研究成果を発表していきたいとのこと。

 正直、この「マルジャン放送局8時間スペシャル『全面対決!プロ雀士 vs 丸雀士!』」の企画を聞いた際は、プロが投票数を多く集め、当然プロが勝つだろうと思っていた。運営側もそう思っていたという。しかし、実際はユーザーが勝利した。プロは残念に思っていたようだが、「Maru-Jan」を開発し運営し、こうして麻雀が好きで強いユーザーが長く遊んでくれていることに大きな自信と手ごたえを得たのは確かだろう。

 栢氏の「本当に麻雀が好きで強い人、『Maru-Jan』で長く遊んでその間に強くなった人もいます。お客様が強いから他のお客様も強くなっていくということだと思いますので、私としてはお客様が勝ってちょっと嬉しいと思っています」というコメントに、あくまでもユーザーに顔を向けたサービスであるということを実感したのだった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2408/31/news036.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほどの変貌が379万表示「そこだけボッ!ってw」 半年後の現在について聞いた
  2. /nl/articles/2408/30/news121.jpg 「地獄絵図」「えぐすぎやろ……」 静岡・焼津市の地下歩道が冠水 “信じられない光景”にネットあぜん
  3. /nl/articles/2408/31/news073.jpg 「よくこんなものが……」 米不足でメルカリに米出品→疑問の声も 運営は“禁止出品物”に「然るべき対応」
  4. /nl/articles/2408/31/news025.jpg 次男に塩対応の柴犬、いよいよ次男の帰省最終日を迎え…… 本音が出た瞬間に「不意に泣かせるのやめて欲しい」と感動の声
  5. /nl/articles/2408/30/news017.jpg 最上位グレードのハイエースを“50万円の底値”で購入したら…… 驚きの実物に「ある意味最強」「正直、羨ましい」
  6. /nl/articles/2408/30/news188.jpg 実写「着せ恋」、キャストに物議 海夢の再現度が高すぎるタレントを推す声あがる 「逆になんであかせあかりさん以外の人……」
  7. /nl/articles/2408/29/news193.jpg 「なんで欲しいと思ったんですか?」 酔った勢いで購入 → 後日届いた“まさかの商品”に反響 「理性あったら買わないw」
  8. /nl/articles/2408/28/news142.jpg 明石家さんま、69歳バースデー迎え長男から幸せ呼ぶ“輝かしいプレゼント” 同席した元妻・大竹しのぶは「最高の笑顔でした」
  9. /nl/articles/2408/31/news084.jpg 仕事早いな! 大谷翔平の愛犬“デコピン”、大反響の始球式がさっそくTシャツ化 「こ、これは……」「欲しい!」と爆売れの予感
  10. /nl/articles/2408/30/news113.jpg 「これ600円なの?」 大谷翔平が長く愛用しているデコピンの“おやつ入れ”、始球式で注目「おそろだった」「真美子さんが選んだのかな」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  2. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  3. 「苦手な芸能人は誰?」 あのちゃん、女性芸能人を“実名で即答” 「ここ最近で一番笑った」「強すぎる」
  4. ホテルでチェックアウト、忘れ物で多いのは? ホテル従業員が教える「圧倒的に多い忘れ物」
  5. 乳がん闘病中の梅宮アンナ、抗がん剤治療で「髪の毛ほとんどなくなっています」 帽子かぶり「ああ、来たか」
  6. 「キティちゃんのお面だと思ったら……」 ひっくり返すと“まさかの正体”に11万いいね
  7. 「凄すぎる…」「ガチで滝」 “市ケ谷駅の冠水”が衝撃与える 階段に大量の水が流れる様子も…… 東京メトロに経緯を取材
  8. 「早すぎます」「一体なにが」 52歳ボディービルダー、訃報1週間前に最期の投稿で“人生初の試み” 恋人は「亡くなる数時間前まで普通にお出かけも」
  9. お盆で帰省した次男に、柴犬も猫もまさかの反応→どちらも豹変して爆笑 「涙出てきました」「おもろ可愛過ぎ(笑)」
  10. 着陸する戦闘機を撮ったはずが…… タイミングが絶妙すぎる1枚に「一部の専門家には貴重な一枚」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」