「GDC2011」の基調講演から、岩田社長が語る“3つの懸念”とは?:日々是遊戯
現地3月2日に行われた、任天堂・岩田聡社長の基調講演。筆者は公式サイトの生中継で見ていましたが、その中で岩田社長が語った「3つの懸念」が興味深いものでした。
リアルタイムで中継を見ていた人、おつかれさまでした
すでにニュースでもお伝えしているとおり、任天堂は現地時間の3月2日、北米で開催中の開発社向けカンファレンス「Game Developers Conference 2011」で基調講演を行い、「スーパーマリオブラザーズ」シリーズの新作など、ニンテンドー3DSに関するいくつかの新発表を行いました。
基調講演では任天堂の岩田聡社長と、Nintendo of Americaのレジナルド・フィサメイ社長が登壇。具体的な発表内容についてはニュース(任天堂、3DS向け「スーパーマリオ」開発明らかに)を見ていただくとして、個人的に興味深かったのが、講演後半で岩田社長が語った、現在のゲーム業界に対する「3つの懸念」というくだりでした。以下、岩田社長の発言内容は、任天堂公式サイトの「岩田聡 GDC講演内容」からの引用となります。
まず岩田社長が語る「懸念」のひとつは、開発現場から失われつつある“職人魂”について。昔に比べてプロジェクトの規模が大きくなり、複雑さを増したことにより、ゲームを洗練させるために何度も作り直し、最高の水準を目指すという選択肢が失われてしまった。これについては開発者の才能の問題ではなく、岩田社長は「むしろ開発者が働く環境の問題です」と言及しています。
第二に、作業の“専門化”が進んだことにより、ひとりの人間がプロジェクトの全体を把握するのが難しくなったこと。「他のチームメンバーが何をしているのか正確に理解できなくなる時代であるなら、次のゲーム開発の達人はどこから現れるのでしょう?」と岩田社長は指摘します。
そして3つ目。岩田社長が「最も重要な私の懸念」と語ったのが、“ゲームソフトそのものの価値の維持”です。
ご存じのとおり、現在、携帯電話やスマートフォンなどの市場では、無料もしくは安価なダウンロードゲームが日々大量にリリースされており、こうした状況は「高品質のビデオゲームソフトウェアの高い価値を証明するためにプラットフォームを設計」、「お客様にどうしてもソフトの高い価値を認めていただきたい」という任天堂のスタンスを脅かしかねないものです。岩田社長は、「なぜこのようなことが起こるのか?」という疑問に対し、次のように答えています。
「スマートフォンやソーシャルネットワークのプラットフォームの目的は、そのプラットフォームがつくられた目的もそうですが、私たちとは異なっています。
これらのプラットフォームには、ビデオゲームソフトの高い価値を維持する動機がありません。彼らにとっては、コンテンツは誰か他の人が作るものであり、彼らのプラットフォームにより多くのソフトを集めることが目標となります。より多くの量を集められればお金が流れるのです。量こそ利益の手段であり、価値は大した意味を持たないのです。 」
(岩田聡 GDC講演内容 8ページ目より)
――もちろんこれはゲームビジネスに対する「アプローチの違い」であり、決して安価なダウンロードゲームに対する“批判”ではありません。しかし、岩田氏は次のようにも付け加えています。
「しかし事実は、我々が生み出すものには価値があり、我々はその価値を守るべきなのです 」
(岩田聡 GDC講演内容 8ページ目より)
最後に岩田社長は、問題提起だけでなく、ひとつの「解決策」も示しました。定義は様々ですが、それは一言で表すなら「イノベーション」であると岩田社長は語ります。
任天堂が考える「イノベーション」とは単純で、「いま不可能だと思っていることを可能にする」ということ。何かを不可能だと思って受け入れてしまうのではなく、常に「可能にできることはないだろうか?」と自問し続ける。それこそが究極の解決策であると岩田社長は語り、講演を締めくくりました。
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