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シングルプレイヤーゲーム開発者がハマるオンラインゲーム開発の陥穽 ―GDC 2005チュートリアルレポート

セッションでは、ネットワークを利用しない「シングルプレイヤー」タイプの技術をオンラインゲームの開発に適用することの困難さを指摘、レイテンシが予測不可能であることから、オフラインのような処理が不可能なことなどが紹介された。

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RBB Today

 GDC 2005で、初日におこなわれたチュートリアルセッション「Issues and Implementations in Multiplayer Game Development」(マルチプレイヤーゲーム開発の課題と実装)は、ネットワークを利用したマルチプレイヤーゲームを開発する際の注意点などを、FPSやMMORPG開発者らが実例をあげながら解説するという内容だ。

 セッションでは、ネットワークを利用しない「シングルプレイヤー」タイプの技術をオンラインゲームの開発に適用することの困難さを指摘、レイテンシ(パケット遅延)が現実には予測不可能であることから、フレーム(1/30秒ないし1/60秒)単位で処理をすることができず、各端末が相互の状況をオフラインのマルチプレイのように正確に把握して当たり判定などを行うことも不可能だと述べた。

 この点については、操作などのイベントメッセージを投げ合う処理とは別に、他のプレイヤーの状態データベースをバックグラウンドで同期させる処理を走らせる方法や、端末から通知されてきた「新しい状態」が、「以前の状態」から問題のない範囲にあるかどうかをチェックすることで不正検出をおこなう、といった方法なども紹介された。

 また、シングルプレイから少人数マルチプレイ(MO)、多人数マルチプレイ(MMO)へと展開されてきた『The Sims』『The Sims Online』(TSO)についての講義では、TSO開発当初、MOからMMOへの拡張で追加開発コストはかからないと見込まれていたという驚くべきエピソードや、MMO化ではスケーラビリティが大きな問題になったこと、自動テストのためにスクリプト動作が可能なクライアントを用意したことなどを紹介。MMO化にあたっては、MOタイプで採用していたピアツーピア型アーキテクチャをクライアントサーバ方式に全面変更したことや、イベント処理モジュールをサーバ側・クライアント側で共通化、ハンドラ内で分岐させることで複雑になりすぎないようにした、といったエピソードも紹介された。

 このほか、品質管理(Quality Assurance : QA)の部分でもオンラインは問題となり、テスターとテスト機材、エンドユーザ環境に近い回線をネットワークプレイ参加者数だけそろえるのが大変なだけでなく、デバッグがログ解析などによる事後確認にならざるをえないことや、オンライン関連の不具合の再現性が低い(パケットの到着順序などに起因する場合など)といったことが問題になるという。オンラインゲームに付き物のアップデートも、QAの負荷を増大させるとの指摘もあった。

 北米ではMMOが下火になってきていると言われているが、MMO開発が完全に止まったわけではない。『World of Warcraft』のヒットも追い風にしながら、こうした開発ノウハウの継承が着実に行われていくものと思われる。

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