ゲームサラウンドの雄・ドルビーは携帯機のサラウンドを推進:ゲームデベロッパーズカンファレンス2005
3月7日から米国サンフランシスコで行われているGame Developers Conference。今年は初めて日本人サウンドデザイナーによるサラウンド技術のセミナーも開催された。
携帯機(携帯電話と携帯ゲーム機を含む)でもサラウンドってこと?
アメリカでは大手ゲーム会社タイトルのほぼ100%がサラウンドに対応しているが、その技術を提供しているのがドルビー。Xboxではドルビーデジタルで、PS2/GCではドルビープロロジックIIで5.1chサラウンドを実現している。DVD市場では高音質サラウンドとして、DTSトラックの追加が主流となっているが、ゲームにおいてのDTSは存在はするものの、対応タイトルが皆無に等しい。DTS社もGDCに出展はしているものの、今年はついに1コマになってしまった。
話をドルビーブースに戻して。ドルビーは今年もシアターによるセミナーなどのデモ、5.1chシステムによる体験プレイ、開発ツール展示などが行われていたが、特筆すべきはドルビーヘッドフォンの展示。この技術はドルビーデジタルやプロロジックIIエンコードされたサウンドをヘッドホンで聞けるように再構成する技術。現在はサラウンドのソリューションの1つとして知られているが、これを携帯機で実現させようと推進している(現時点では携帯機でのドルビーヘッドフォン技術は実現されていない)。
たしかに、3Dゲームの普及によってサラウンドが普及したのであれば、携帯機での3Dゲームの増加に伴ってサラウンド技術の導入を推進するのは必然的な流れといえよう。となると、来年のGDCではさらに具体的な話が出てくるかもしれない。
日本人開発者によるセミナーも開催
シアターで行われたゲーム開発者によるサラウンドサウンド開発セミナーは多くの人が集まっていた。今年はドルビー日本支社の働きかけにより、日本のゲーム開発者によるセミナーも開催。9日にはSCEJのグランツーリスモ4のサウンド担当者・山口晋平氏による講演が行われた。
グランツーリスモシリーズはリアリティを出すためにエンジン音の録音が行われているが、最初はその録音風景を紹介。だいたい1000回転ごとのエンジン音を録音しているということだが、今回は博物館などでの録音というケースもあり、すべての回転数での音が録れないことも多かった。その場合は擬似的に音を作成しているのだそうだ。
このようにして録音されたエンジン音はGT4のカーシミュレーションシステムに組み込まれ、車の挙動によって様々なエンジン音を出すようにプログラムされる。また、スキール音なども、タイヤの挙動によって出力されるようになっているそうだ。
GT4ではドルビープロロジック対応をしたということもあり、オープニングをドルビーデジタルサラウンドで録音した。録音場所は「あの」Skywalker Soundで、ゲームの録音だけに使われることは極めて珍しい。一度サラウンド環境で聴いてみてほしい。
録音風景もサバイバル!? メタルギアソリッド3のサウンド製作秘話
11日にはコナミJPN WESTのサウンド班・戸島壮太郎氏がメタルギアソリッド3のサウンド製作セミナーが行われた。
まずは、メタルギアソリッドシリーズのサウンドの歴史を紐解くことから講演が始まった。メタルギアソリッド1・2ではバックグラウンドサウンドはBGMだったが、BGMではプレイ中の感情表現に適応できないという意見があり、MGS2では一部シーンで環境音だけのBGサウンドが採用された。これがきっかけで、MGS3は環境音が全面的に採用されることになった。
サウンドはまず素材集による音が検討されたが、これでは想定している音ではないということで、屋久島取材に同行して素材を集めることからスタートした。しかし、他のスタッフの声が入らないように他のスタッフから遠ざかった結果、遭難しかけたこともあったとか。まさにサバイバルアクション。
MGS3のBG効果音は4チャンネルのステレオをストリーミングによって同時再生する方式。ドルビープロロジックIIエンコードされた音声はステレオ音声なので、これを差し替えるだけでサラウンドが実現する。4つの音の音量等はツールを使って変更することでマップ上での音の違いを実現することが可能になっている。
このツールで実際にサウンドエディットを行った。壇上に上がったのがなぜかカプコン・デビルメイクライ3のサウンドプログラマーの近藤広明氏。実際に出来た音は「俺が作った音よりいいかも」とべた褒めだった。
戸島氏は「これからは小さいメーカーでもサラウンド対応が必須になるでしょう」と語っていたので、日本でもサラウンドが標準音声となる日も近いだろう。ちなみに予定はなかったが、カプコンの近藤氏も急遽セミナー参戦(10日)した。
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