入学式で動く「グランディアIII」初披露――ゲーム業界に踏み出した学生たちにエール
本日、デジタルエンタテインメントアカデミー第14期生入学式にて、特別講演会「スクウェア・エニックスのゲーム開発について〜グランディアIIIの開発〜」が行われ、実際にゲームを動かし戦闘システムなどを披露した。
本日、大久保のホテル海洋にて、デジタルエンタテインメントアカデミー第14期生入学式が行われ、通常の入学式のあと、スクウェア・エニックス エグゼクティブプロデューサー齋藤陽介氏と、プロデューサー樋口亘氏、ゲームアーツ「グランディアIII」監督 高橋秀信氏が登壇し、ゲーム現場の実情や今後卒業後に待ち構えているゲーム開発環境について、2005年夏にPS2で発売を予定している「グランディアIII」のゲームを使用して説明した。
「スクウェア・エニックスのゲーム開発について〜グランディアIIIの開発〜」と題して、今回このような特別講演会が催されたのは、ゲーム開発者として数年後社会に飛び出した際、どのような開発環境に置かれ、ゲーム製作をしているのかを知るための現場からの声が、一番入学生にとっては目指すべき目標になるからとの意味。
ちなみに「グランディアIII」の動く映像は、今回が初お披露目であった。
高橋氏もゲーム製作では実際の開発と広報などの分業があることを、ゲームアーツとスクウェア・エニックスを例に挙げて説明。高橋氏は純然たる続編である「グランディアIII」が企画された必然性があったんだと触れ、その意思表示をするのが監督の仕事であると発言
「グランディアIII」は実に長期に渡った企画のブラッシュアップの末に産み出された。ゲーム開発とは、技術の革新であったり、集まった人材であったり、様々な必然を経て、様々な人間のアイディアを盛り込み、そして徐々に整理されて至るのだと樋口氏は説く。
高橋氏は続けて――「“ゲームは最終的には触って楽しむ、見て楽しむ”もの。監督は指針を決める立場で、統括的な立場というのはなんとなく理解できると思う。監督がやらなければいけないのは、スタッフ全員があるべき姿が見えていない段階から、しっかりとゲームの世界観なりビジュアルをイメージでき、意思表示することだ」と監督の仕事について見落としやすい点を示唆した。
「グランディアIII」では高いクオリティを求め、実写の映画監督に協力を要請し映像へのこだわりを押し出している。4月9日から全国劇場にて公開されている乙一原作「ZOO」の監督である金田龍が起用されていることに触れ、グラフィカルなアプローチのほかにもドラマの部分でキャストにもより高度な演技力を要求するなど、あるべき姿へと向けて妥協なく開発できる“布陣”を敷くのが開発の第一歩とのこと。その先には模索し、人材を踏まえた企画を想定し作られたのが本作なのだ。
高橋氏は「シリーズ通しての主張は“エンターテインメントを作っていこう”だった。人を楽しませるのがエンターテインメントだとすると、人を限定しては真のエンターテインメントとは言えないと考えると、言葉のわからない人間でも伝わらないと真のエンターテインメントではないはず。年齢も性別も超えて言いたいことがうまく伝わるような作品を目指したことがシリーズの思想であり、自分の思想なのだ」――といかに自らの思想が大切なのか、エンターテインメントとは何なのかを自らに問うことが大事かを、今後のゲーム開発に携わる際に念頭に置くべきだと語った。
それだけでは開発は進まない。クリエイトの思想も必要とのこと。いいものを作ろうという一点のみで「グランディアIII」では、必要に迫られて新しいゲームエンジン「N3」(Next Needs Network projectの略)を開発している。N3は基礎システム設計部隊による製作工程から情報管理、技術開発を含む「グランディアIII」に特化されたプロジェクトの総称で、ビジュアルやゲームシステムなど、ハイクオリティをPS2上で実現させるスペックの高さを誇る。まさに必要は発明の母。
実際動いている絵はすでに滑らかに動いており、ある程度は完成されているようだ。新システムの“Gサーチ”も使用。使用すると範囲にある動かせるものなどを探索、表示してくれた。今回は谷を岩で埋めるための“岩”を探索していた
「アルティメットアクションバトルシステム」は健在。さらに個別の必殺技、空中コンボなどをセミリアルタイムバトルシステムに乗せてサクサク戦闘が行われているようだ。戦闘は樋口氏曰く「まるで格闘ゲームをやっているよう」だそうだ
「冒険」をすることを主題としている「グランディアIII」では、実生活が忙しくなかなか「冒険」に行けない人々が、ふと足を止め気がついた風景の美しさに「冒険」を喚起させるものがある。いつもと違うところへ来ているのだと旅情を感じられる。綺麗な朝日、太陽の光、そこに流れる空気感、緑の深さなど、「冒険」が確かにそこにはあった。
最後に高橋氏は「現場を常にイメージすることが大切。現場に出たならイメージを持って戦える力を持ってほしい。一番大事なことは円滑な現場を組み上げること、そしてその現場が“熱”を持つことだ。いいものを作ろうという意識、困難に立ち向かおうという気構えという“熱”が必要で、我々はそういう人材を求めている」――と学生を鼓舞。
さらに高橋氏はこれからゲーム業界へのアプローチの仕方として「アクト ローカル シンク グローバル」という思想を提示。「“動くときは自分が手の届く範囲で、考えるときにはいかに広い世界を考えるか”を常に持たなくてはならない。常に自分の熱意だけでは戦えない。ただ自分のできる範囲のことを示し、常に広い視野を持つべき」と、これからの学生たちを歓迎した。
樋口氏も「次世代機などの“お祭り”が始まるチャンスが待っているの、頑張ってください」とエール。
最後は齋藤氏。「これほど楽しい業界はないはず。やっと第一歩を踏み出したのは誇るべき」と締めてくれた。
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