北米ではほとんど常識、そして日本でも……? ゲームのサラウンド最新事情(1/2 ページ)
3Dゲームの普及によって、多くなってきたサラウンド対応ゲーム。ドルビー日本支社のゲーム開発支援チームに現状とこれからの話を聞く。そして……。
プレイステーション 2の登場以来、3Dゲームのパッケージ裏に「ドルビー」のロゴを見かけることが多くなった。映像が3Dになったのであれば、音声出力も3Dになる、というのは当然の展開であろう。近作では6月30日に発売された「GENJI」や、7月発売のタイトル「武蔵伝II」や「サルゲッチュ3」、「実況パワフルプロ野球12」などがサラウンド対応作品としてリリースされる。今回は、ゲームのサラウンド対応についてみっちり講義しよう。
プレイステーション 2とコードレスヘッドホンでサラウンド
さて、今回は「GENJI」を使ってサラウンドを体験プレイしてみる。本作はプレイステーション2用ソフトで、パッケージ背面には「Dolby Digital Pro Logic II」の表記がある。
ということで、本作のサラウンドをフルに活用するためには、「ドルビーデジタル」および「ドルビープロロジックII」に対応したサラウンドシステムが必要になるのだが、現在発売されているサラウンドシステムのほとんどはこのフォーマットに対応している。今回はパイオニアの「コードレスサラウンドヘッドホン・SE-DIR1000C」を使ってサラウンドを体験してみることにする。これはXboxバージョンが出たこともあるくらい、ゲームとの親和性がバツグンなヘッドホンである。
PS2でのサラウンド技術の筆頭である「ドルビープロロジックII」は、5.1chサウンドを2チャンネルステレオにエンコードして、サラウンドシステム側で改めて5.1ch再生するマトリックス(合成)方式のサラウンド方式だ。そのため、赤白ケーブル接続でもいいのだが、ケーブル一体型のPS2(というか、ほとんどのゲーム機の接続ケーブルは一体型なのだが)では取り回しに苦労する。それと「GENJI」は「ドルビーデジタルプロロジックII」対応なので、今回は光ケーブルを使って接続してみる。
このドルビーデジタルプロロジックII採用のゲームでは、ムービー部分をドルビーデジタルによるディスクリート(チャンネル独立)音声で、ゲーム部分をドルビープロロジックIIインタラクティブエンコーディングによるマトリックス音声で出力している。今回紹介するGENJIもその恩恵にあやかれるタイトルの1つだ。
もちろん光ケーブル接続ならDVD再生時にドルビーデジタルやDTSサラウンドにも対応する。ただし、ごくごく一部のゲームにおいてはDigital Out出力を禁止しているゲームがあるので気をつけてもらいたい。もっとも、今後発売されるゲームでは、世の流れもあるだろうし、そのようなことはなくなるだろう。
なお、PS2のDigital Out端子は角型なので、誤ってミニプラグの物を購入しないように注意しよう。通常のサラウンドシステムなら、やはりDigital In端子は角型なので、購入するケーブルは「角型・角型」のはずだ。
音が出ないときは、ゲーム起動前にPS2のブラウザからシステム設定画面を呼び出し、「光デジタル端子」をオンにすること。ただし、デフォルトではオンになっているはずだ。なお、写真はBBユニットインストール済みのもの
そしてゲームを起動し、オプション画面のサウンドモードで「Dolby Digital Pro Logic II」を選択することでサラウンドモードの設定は終了だ。
ここで1つ注意事項がある。ドルビープロロジックII音声は「5.1chサウンドを2チャンネルステレオにミックス出力する」と書いた。これは、ドルビープロロジックII音声を2チャンネルステレオ音声の環境で聴くと、普通の2チャンネルステレオとして聴くことができるということなのだ。
つまり、ドルビープロロジックIIとステレオは互換性がある、ということから、一部のゲーム――たとえば「ラチェット&クランク」シリーズでは、音声選択として「ドルビープロロジックII」を省略し「モノラル」「ステレオ」しかないものがある。この場合「ステレオ」を選択することで、ドルビープロロジックIIモードになる。逆に「アンリミテッド・サガ」のように「モノラル」と「プロロジックII(ステレオ)」という表記を取っているものもある。
さて、実際にサラウンド環境で「GENJI」をプレイしてみた。リスニングポジションを「プレイヤー」に設定するとプレイヤーより画面手前側にいるキャラクターのサウンドはフロントから、プレイヤーより画面奥側にいるキャラクターはリアから出力される。
「GENJI」はキャラクターが“神威”アクションと呼ばれる攻撃システムがある。これは敵の攻撃をギリギリまで引き付け、相手の攻撃を利用して交わし斬り結ぶもので、タイミングに合わせて戦う本作のウリのひとつだ。
この神威発動時の掛け声などは、敵の攻撃と同時に発声されるため、あまり参考にはならないがサラウンド感は十分に出ている。特に神威発動時は周りの効果音・音楽が無音になるため、サラウンド効果はより際立っている。また、一部のムービーでは逃げる敵の声がリアから聞こえるなどの演出もある。プリレンダムービーではドルビーデジタルにより、包囲感のある音響効果を楽しむこともできた。
固定視点に近いゲームのため、音がグルグル回る感じはほとんどないが、サラウンドによってゲームサウンドを引き締めている、という印象を受けた。
やっぱり一番進んでる? Xboxはドルビーデジタルで
Xboxはハードウェアのドルビーデジタルエンコーダを内蔵しているので、ディスクリート(独立)サラウンドによる明瞭な音の定位を感じることができる。ただし、標準ケーブルには光デジタル端子がないため、拡張AVパックもしくはコンポーネントAVパックが別途必要となる。
ちなみにドルビーデジタルのため、接続は光ケーブルが必須。といっても接続はPS2同様簡単で、拡張パックの光デジタル端子とトランスミッター部の光デジタル端子を繋ぐだけだ。
ダッシュボード(設定画面)のサウンドメニューから、ドルビーデジタルの設定をオンにすれば準備完了。Xboxタイトルはほとんどがドルビーデジタル5.1ch対応だが、一部タイトルは4チャンネルのものもある。
ドルビーデジタルはモノラルから5.1chまでの音声を圧縮・伝送できる技術である。4チャンネルサラウンドといっても、旧プロロジックの前3チャンネル・リア1チャンネルでなく、前後2チャンネルずつの場合もある。ドルビーデジタル対応タイトルには、出力チャネルがサウンドモードアイコンによって表記されているので、こちらを確認しておきたい。
サラウンド対応だが、接続に苦労する? ゲームキューブ
ゲームキューブは光出力端子を持たないため、ドルビーデジタルには非対応だが、ゲームソフト側でドルビープロロジックIIインタラクティブエンコーディングによりサラウンドサウンドを可能にしている。
だが、映像入力端子のないサラウンドシステムで遊ぶにはちょっと苦労がいる。先にも書いたが、ゲーム機のケーブルの大多数が一体化されているので、映像出力端子と音声出力端子が切り離せないからだ。スーファミ時代のケーブルが使用できるゲームキューブも同様。最悪の場合は音声もしくは映像端子の延長ケーブルで繋ぐ必要がある。
もっとも手っ取り早い手段としてはアナログ端子を音声専用にして、映像はD端子・もしくはコンポーネント接続にするという手もあるにはある……のだが、これも2004年7月出荷分以降のゲームキューブでは、デジタルAV出力ポートが外されているために使えない(外箱に両ケーブルが使用できるかどうかが記載されている)。
さて、無事接続が終わったらサウンド設定をゲーム上で行えばゲームキューブでもサラウンド体験ができる。欲を言えば次世代機「Revolution」では、ゲームキューブ互換とのことなので、その辺の取り回しがもう少し楽になるといいのだが……。
もう1つのサラウンドと立体音響
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