中国の娯楽中心的ゲーセン事情(2/2 ページ)
意外なことに、中国のゲームセンターは日本のゲームで埋め尽くされている。でも「そこにある」ゲームは同じなのに集う客層はちょっと違う。ゲーム文化に依然として重要な位置を占め、ゲーマーに影響力をもつ中国ゲームセンターの今を伝えよう。
NEOGEO信者(?)な中国ゲーセンゲーマー
典型的なゲームセンターの置かれている台はざっとこんな感じ。入口からレースゲーム数台、台湾IGSの(日本未発表の)ビートマニアにそっくりな音ゲー数台(たまに御本家コナミの音ゲーがあったりする)、ガンシューティング数台。これら体感ゲームエリアの店舗に占める割合は通常2〜3割程度で、あとは店の奥に一般的なテーブル筐体がズラリと並ぶ。
テーブル筐体の内訳は、中国らしく麻雀(どうも脱衣系らしいのだが、日本人から見て今ひとつお色気に欠けるためかそうは見えない)と、上海のような麻雀牌を使ったパズルゲーム、それに三国志や西遊記をベースとした派手で爽快な台湾IGSのファイナルファイト系格闘アクションゲーム、十数年以上前のものからごく最近のものまで新旧ごちゃまぜに置かれたシューティングゲーム、鉄拳やバーチャファイターなど3D格闘ゲームなどなど、多種多様なジャンルがそれぞれ数台置いてある。
そして、残りの台はすべてNEOGEOのゲームなのだ。
中国におけるKOF(キング・オブ・ファイターズ:中国語で「拳皇」)の人気は凄まじく、新旧入り乱れてたくさんの対戦台が置かれていることも普通。日本では人気の某格闘ゲームがいつも空いているその隣で、ものすごい数のギャラリーがKOFの対戦を眺めているなんてことも当たり前だ。
またNEOGEOのMETAL SLUGシリーズも人気があり、これまた「数台並んでMETAL SLUG」なんて日本ではまず出くわさないであろう光景にも中国では当たり前。NEOGEO人気、未だ中国にあり、なのだ。
なぜこんなにも人気があるのか?
NEOGEOはアーケードプラットフォームでありながら、1990年のハード発売から最後のソフトが発売されるまで14年も生き続けた、ファミコンの次に息が長い長寿ゲームプラットフォームであるため、その間にファミコンのようにハード、ソフトとも正規版よりも安い違法コピーものが多数出回っている。中国のゲームセンターにもこのようなNEOGEOプラットフォームが多数入り込んでいる。
SNKプレイモアもこの状況に指をくわえていたのではない。2002年からは違法コピーを意識したハードとソフトの販売攻勢を仕掛けるほか、東南アジアや中東などから中古品が中国に流通し始めたため、(依然として違法コピーが多いものの)安い正規の本体やソフトもそれなりのシェアがあるとか。
とにかく本体とソフトのどちらもほかのゲーム基板に比べれば安く手に入るので、ゲームセンターの経営者にNEOGEOは喜ばれた。静かな田舎町ですらNEOGEOプラットフォームのゲームと中国産麻雀ゲームだけ置かれたゲームセンターができたのである。
NEOGEOの人気は、ゲームセンターにおいて数で圧倒している、という理由だけではない。事実、KOFはゲーマーに喜ばれている。これは日本の漫画が中国でウケているように、KOFもまたキャラクターが大衆にウケているためだ。
KOFのWebファンサイトが数多く立ち上がり、同人誌が作られ、中国で行われるコスプレ大会では日本漫画の定番キャラクターと並んで、KOFキャラクターがなくてはならぬ存在となった。KOFキャラクターはゲームセンターの看板にも必要不可欠な存在となった。
NEOGEOに頼りきった中国のゲームセンターは今、大きな壁にぶち当たっている。SNKプレイモアのアーケードゲームはNEOGEOプラットフォームを捨て、サミーのATOMISWAVEプラットフォームに向かっている。KOFが大好きな中国ゲーマーが期待する新作の導入はゲームセンターに金銭面の不安を与えている。
もしかすると、5年後のゲームセンターに設置されているマシンは今とまったく同じかもしれない。ゲームセンターはなくならないものの、ゲームセンターの客層はひょっとするとこの数年内にがらっと変わってしまうかもしれない。
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