きれいなムービーを次世代機向けに作成するには?――CRI・ミドルウェアの展望:CEDEC 2005リポート
ゲームデベロッパー向けのカンファレンス「CEDEC 2005」では、各企業が主催のセッションも数多く行われている。CRI・ミドルウェアは「HDムービー再生と次世代ゲーム機への対応」と題してXbox 360上でのムービーデモなどを行い、HD時代の映像について紹介した。
CRI・ミドルウェアのゲーム開発用ミドルウェア「CRI ADX」および「CRI Sofdec」。デベロッパーでなくても、ゲームの起動画面などに表示されるロゴで、これらの存在を知っているユーザーも多いだろう。これらのミドルウェアは国内外1000タイトル以上で採用されているそうだが、もちろん次世代ゲームコンソールにも対応している。セッションでは同社の取締役CTO、押見正雄氏が講演を行い、CRI ADXやCRI Sofdecについて紹介するととともに、HD時代のムービー再生について語った。
押見氏はまず、同社のミドルウェア戦略について紹介した。AV技術の進化やマルチプラットフォーム対応の必要性から、ムービーや音声、ファイルシステムなどのアウトソーシングのためにもミドルウェアの必要性を強調する。
HDムービーの規格としては、日本の規格でD3(1080i)、D4(720p)、D5(1080p)の3種類があるが、次世代ゲーム機では720pが主流であるとし、プリレンダリングムービーは1280×720ドット、29.97Hzで作成されるのが標準となっているとのこと。
ただし、この仕様でもビットレートにより画質はかなり変わる。6Mbpsではブロックノイズが目立ち、12Mbpsでは「脈動ノイズ」と呼ばれるノイズが一部のシーンでは発生する。16Mbpsならばほぼノイズのない、きれいなムービーが見られるようになる。
押見氏は、ユーザーが“きれい”と感じる映像を作るポイントは、画像の奥行き感や立体感にあると語る。グラデーションや影といった階調表現による微妙な色の変化から、人は立体感を感じ取っているわけだ。
ただ、拡散ディザ法などにより奥行きを持たせた画像は、ディザパターンが小さい高周波成分を持つため、一般的な画像圧縮の手法では高周波成分が削られ、マッハバンドノイズなどの影響が出てしまうという。CRI Sofdecによる圧縮では高周波成分を残すため、マッハバンドノイズに強く、シャープな質感を保つ映像が生成される、と押見氏。
マルチストリームサウンドシステムであるCRI ADXについてだが、高音質モード(ADX)でも、高圧縮モード(AHX)でも、CPUに負荷をかけないで高音質な再生が可能であると押見氏は語る。
CRI ADXやCRI Sofdecの機能紹介のあと、CRI ADXのマルチストリーミング再生やマルチトラック再生、フェード時間やフェードイン開始時刻を設定できるシネマティックサウンドのデモや、CRI Sofdecによるマルチストリーミングやアルファ合成といったムービーの再生デモが行われた。
なお、今後のCRIミドルウェアとしては、CRI ADXと「SOUND FACTORY」を統合した「CRI Audio」の開発と、「CRI File&Streaming System(仮)」がリリースされるとのこと。CRI Audioでは、サウンドメモリ再生とストリーミング再生を統一的に扱え、オーサリングツールによってサウンドをデザインできるようになるそうだ。
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