「ICO」同様、既存のゲームと比べることがナンセンス:「ワンダと巨像」レビュー(3/3 ページ)
世界が待ち望んだ「ICO」制作チームの新作「ワンダと巨像」。その内容はワンダを操作し、巨像を倒すというシンプルながら力強いもの。スタートボタンを押すと、その先には美しいフィールドが広がっていた。
迫力に満ちた巨像バトル
フィールド移動の次は、ゲームの中心とも言える一対一のバトルが待つ。巨像とワンダには、それぞれ体力メーターがあり、武器で攻撃することで巨像の体力をゼロにすれば勝ちだ(ワンダの体力メーターは時間とともに回復するので、危なくなったら岩場などに隠れてじっとしよう)。
ワンダの武器は剣と弓の2種類あるが、巨像の体は固く通常の攻撃ではまったく歯が立たない。そこで狙うのは巨像の体のどこかにある弱点となる。剣で光を当てて弱点を見つけ、体を登っていき、力を込めて剣を突き立て、巨像の体力を減らす。これが対巨像戦の基本だ。
弱点は多くの場合、頭や背中といった簡単には近寄れない場所にある。足やしっぽにある毛や装甲など、地上からつかめる部分にジャンプして取りつき、R1ボタンでしがみついて、上へ上へと登っていく。
注意しなくてはならないのは「腕力メーター」。しがみついたままでいると減少し、なくなると力尽きて落ちてしまう。腕力メーターも手を放していれば次第に回復するので、ときには巨人の体で足場を見つけ、小休止することも必要だ。
巨像はワンダを落とそうと、体をグルングルンと振るう。そんなときはR1ボタンを押す手にも力が入る。まるで小さなアリやノミになったような気分で、スリルは満点だ。腕から体へ飛び移ったり、背中から腹部へしがみつきながら回ったり、アクロバティックな未体験の感覚が味わえる。
建物やブロックなど動かないオブジェではなく、動いているものの上で歩き、攻撃するのは難しい。きっちり自分が操作すれば成功する一般的なアクションと異なり、常にままならない感じがうまく表現されている。
巨像には空を飛ぶもの、水中を泳ぐもの、地面を潜るものと種類があり、ゲームを進むにつれ一筋縄ではいかなくなる。直接対決と意気込む前に、敵の行動パターンを利用した謎解き的な頭の使い方もポイントだ。体がすべて鎧で覆われ、つかむ場所がない巨像には、闇雲に攻撃しても意味がない。わざと塔の上から攻撃して巨像を塔に激突させる、狭いところへ逃げ込み、巨像にのぞき込ませてヒゲにつかまる、たいまつに火をつけてかざし、敵をひるませる……。相手の動きをよく観察して、作戦を立てる必要があるのだ。
ワンダひとりで戦うよりも、アグロと協力したほうが効率のいい場合もある。アグロは機動力があるので、巨像と距離を取りたいときや、巨像の後ろに回り込むときに役に立つ。馬上からジャンプをすれば、より高い場所へつかまることもできる。ステージによってはアグロに乗りなから弓を撃つ技術も問われる。
本作では、アクション要素はICOよりも確実に高まっている。巨像の難易度にはバラつきがあり、あっけなく倒せる巨像もいれば、かなり手こずらされる巨像もいるだろう。ただ、巨像戦で負けてもリトライ機能があるので、何度も根気よく挑戦すればやがてクリアできるはずだ。
きっと心に何かを伝える、物言わぬドラマ
クリアまでは10〜15時間程度と、一般的なゲームよりはかなり短めの部類に入る。クリアしたあと、2周目が追加されるものの、やり込み要素としては少し物足りないところだろう。
この点は賛否両論あるが、本作を既存のゲームと比べること自体、意味のないことかもしれない。RPGやアドベンチャーのゲームとしての楽しさを提供するタイトルなら、ほかにいくらでもある。巨像の質感と圧倒的な存在感、神秘的な世界と心に残る語られない物語、これはワンダと巨像だけの素晴らしい点だ。
次々と巨像を倒していくワンダ。この戦いの意味は一体何なのか。そして、儀式の果てに少女とワンダはどうなってしまうのか……。本作はじんわりと心に染み込んでくる、そんなタイトルだ。
ワンダと巨像 | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | ソニー・コンピュータエンタテインメント |
ジャンル | アクションアドベンチャー |
発売日 | 発売中 |
価格 | 7140円(税込) |
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