「知力」、「体力」、「時の運」――「ニンテンドーDS Lite」をゲットせよ:「ニンテンドーDS Lite」入手顛末記(2/3 ページ)
時は2006年3月1日。翌日に控える「ニンテンドーDS Lite」発売日を前に、どのような取材体制を取るか相談していたときであった。「思い思いにゲットしてみよう!」と、ある編集者は言った。
“運”だけにすべてを賭ける――「時の運」担当に女神はほほえむのか
言い出しっぺながら、この勝負まるで勝てる気がしない。新宿、池袋での大手量販店へのニンテンドーDS Lite購入者の列に一気にテンションが下がる。そもそも“運”担当の筆者には“悪運”はあっても、まっとうな“運”を最近とんと見た記憶がない。宝くじを買ってもハズレ、ビンゴ大会では穴の開く気配すらない。ところが珍妙な事件や腰が砕けるほどのおもしろエピソードに巻き込まれる悪運には恵まれている。今回のこの企画が、どうかこうばしいものになりますようにと、目的地へ向かった。
●「ニンテンドーDS Lite購入予備戦」
前日、それぞれの方針を決める席上、ふと地元で配布されていたチラシのことを思い出した。それはとある大手スーパーの特売品チラシ。そこでは各店舗(一部除く)とも30台を抽選のうえ販売するという、まさに“運次第”の販売方法を取っている。これは開店前の行列を防ぐ意味があるというが、そこでは午前10時開店からの15分間に抽選券を配り、当選者にDS Lite購入権が与えられる。つまり徹夜や早朝での苦行を必要としない、まさに筆者のようなのんきな人間向きの方法なのだ。こうして筆者の方針は決まった。
- 徹夜はしない
- 始発ダッシュもしない
- そもそも並ばない
- ひたすら我が身の運に賭ける
- 一発勝負
そんなわけで発売日当日を迎えた。前日たっぷり寝、他の記者からひんしゅくを買いながらも新宿を取材。始発とは言わないまでも、早朝に訪れた時には新宿各地で長い行列が目についた。しかも一様に皆、憔悴している。とはいえ、彼らは苦行に耐えた勝者だった。確実に手に入れるためには本来ならば彼らの選択が正しい。もしもこんな企画で“運”担当になっていなかったら、並んでゲットしていただろう。
●「新宿撤退戦」
通常よりもだいぶ早くに販売を開始した量販店では、各所でハニカミながらニンテンドーDS Liteを抱える姿を見かけるようになる。これから家路について遊べるね、と微笑ましく見送ると、筆者は目的地へと移動を開始した。取材を終えた時にはすでに午前9時30分を回っていた。通常ならば、すでにどこへ行っても売り切れ御免の札がかかっているだろう。噂によるとその時間でも購入できた奇跡の場所があったようだが、そんなの知ったことではない。新宿から埼京線に乗り、決戦の地・赤羽へと向かった。
新宿から埼京線で20分。目指す店舗が赤羽駅前に見えてきた。筆者が在住する北区では、当然同エリアとして新聞などで、その店のチラシが配布されている。さらに埼玉方面も同様のチラシのため、仮にもターミナル駅である赤羽は激戦となることを計算していなかった。店舗の前にはすでに100人ほどの行列が出現していた。入荷数が30台。すでに3分の1以下の確率にまで下がっている。ずいぶんと“運”に頼る人が多いこと多いこと。しかも土地柄からか、年齢層が高い。ご夫婦で並ぶ姿も見られ、子連れの姿も。なにやら暗雲漂う気配。筆者はどうせ100人くらいだろうとタカをくくっていたのが恥ずかしい。赤羽だけの現象なのか、それとも全国的にそうなのか、この国にはギャンブラーが多いようだ。
●「赤羽の変」
開店と同時に玩具売り場に移動するニンテンドーDS Liteを求めるライバルたち。誰も彼もギャンブラーの目をしている。ある人は子供のため、ある人は自らのために抽選券を手に入れている。開店から15分という期限内なら誰でももらえるため、気がつけばどんどん集まっているようだ。筆者が抽選券をもらったのは「121番」。ゴロがいいのか悪いのか微妙な番号だ。とりあえず抽選が開始される10時30分までは散開して待たなければいけないため、とりあえず状況を眺めることに。
次から次へと抽選券を求めるギャンブラーの数はついに400人を越え、最終的には500人近くまでその数を伸ばす。すでに確率は5%ほどにまで下がっている。消費税並の確率でも幸運をつかむ人間は確実に30人はいることになる。ここはぐっと“勝てる気がしない”オーラを抑えて勝負の時を待つ。
気分を盛り上げるためにDSソフトなども見学。「当たったらこれを買う!」と心に決め、いざ勝負となった。店員が抽選券の半券を入れた箱に手を入れ、次々と番号を読み上げていく。一向に呼ばれない。なんとなく尻に火がついた心境ながら、早くも諦めムードが漂う。それでも購入権を獲得する勝者が次々とコールされていく。そして最後の1枚。邪念まじりの神頼みも空しく、抽選券は宙を舞った……。
「是非もなし」――。目の付け所はよかったはずだ。ただし、みんなが目をつけていた。何よりも主要駅の赤羽を選んだのが間違いだったのか。さまざまな反省が脳裏を駆けめぐるもあとの祭。やはり地道に並んだほうが確実ということか? それでもついつい甘い夢を見てしまう。これが“運”に身を任せた報いだろうか。トボトボと現行のニンテンドーDSを遊びながら帰るのだった。
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