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一皮むけた骨太な「FF」。だからこそ今回ばかりは絶対にプレイしてほしい「ファイナルファンタジーXII」レビュー(1/3 ページ)

言わずと知れた大人気シリーズの最新作「ファイナルファンタジーXII」が満を持しての発売となった。毎回異なった世界観とシステムを用意して、ファンを一喜一憂させる本シリーズだが、今回は意外なほど硬派。しかし、深く味わいのある本格RPGに仕上がっている。

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こういうのを待っていた!

 「ファイナルファンタジー」(以下、FF)と言えば、ゲームに少しでも興味のある人間ならば知らない者は皆無の超ビッグタイトルだ。「ドラゴンクエスト」と並んで日本のRPGを代表するシリーズであり、第1作のヒット以来、“ストーリー主導型RPG”を主流に定着させたパイオニア的存在でもある。さらに言えば、プラットホームをプレイステーションに移して以降はビジュアル面、特にポリゴングラフィックを用いたムービーの美しさにこだわることで、普段それほどゲームに興味のない層にも強くアピールし、常に大ヒットを記録してきた。

photo 今さら言うまでもないことだが、それでも言いたくなるほどに、グラフィックが美しい。すごすぎる

 しかし、いつの世にもひねくれ者はいるもので、“そんな一般ウケのいいゲームは俺には向かない”とか、“俺はもっとマイナーなゲームが好きなんだ”などと言って、FFには手を出そうともしない人がいる。だが、シリーズ最新作である「ファイナルファンタジーXII」(以下、FFXII)は、そんな人にこそプレイして欲しいと断言できる作品だ。その理由についてはこれから説明していくが、強いて挙げるならば、“いまどきのライトユーザーにも、古き良きRPGが好きな人にも、どちらにもオススメできるいい感じのゲームに仕上がっている”からだと言える。

自己主張しすぎないストーリーとキャラクターが醸し出す魅力

 物語の舞台となる「イヴァリース」は、魔法が当たり前のように存在するファンタジー世界だ。ただし、飛空艇のような魔法機械が数多く存在し、建築物や衣服などを見ても、非常に高度な文化が普及していることがうかがえる、むしろSF的な雰囲気を持った世界でもある。ここでは、アルケイディアとロザリアの2つの帝国が覇を争っており、その間で、いくつもの小国が翻弄(ほんろう)され続けている。

photo ゲームの導入部は、レックスというキャラクターを操作するチュートリアルになっている

 主人公の少年ヴァンの生まれ育ったダルマスカも、2年前にアルケイディア帝国との戦いに敗れ、その支配下に置かれていた。戦災孤児であるヴァンは、同じ境遇の少年少女たちのリーダー格で、街のなんでも屋的な仕事をしながら生計を立てている。

 そんな彼の運命が大きく動き出すのは、アルケイディア皇帝の息子ヴェインが、執政官として街に赴任してきた日のこと。ヴァンは自分の飛空艇を手に入れるという夢のため、そして帝国に対する反発心から、城の宝物を盗むことを思いつき、それを実行に移したのである。無事に城の宝物庫までたどり着いたヴァンだったが、そこで思わぬ事態が……というのが、物語の導入だ。

 その後ヴァンは、王女アーシェや幼なじみの少女パンネロ、空賊のバルフレアとフラン、ダルマスカ王国のかつての将軍バッシュらと出会い、ともに冒険することになるのだが、とにかくこのキャラクターたちがかなりいい。

 人格のあるキャラクターを与えられるタイプのRPGの場合、そのキャラクターがプレーヤーにとって許容できるかどうかが、その後のゲームを楽しめるかどうかの最初のハードルとなるが、その点でFFXIIは、個々のキャラクターをしっかり立たせた上で、必要以上の自己主張をさせていないのである。つまり、基本的なキャラクター性は明確にしておいて、それをストーリーの中で生かしつつも、余計な言動やアピールを極力抑えることで、それぞれのプレーヤーが想像で補える部分を十分に残しているのだ。

photo 会話可能な相手や、フィールド上のアイテムなどは、アイコンで知らせてくれる。細かい気配りもうれしい

 この辺りのバランス感覚は絶妙で、随所で挿入されるイベントシーンやムービーの類にも同様の傾向が見られる。イベントシーンやムービーはかなりの頻度で入ってくるのだが、それが鼻につくことがほとんどないのだ。ため息が出るほどのその美しさがそう感じさせてしまうというのももちろんあるだろうが、全体的に短くまとめられているのが大きいと、個人的には考えている。それらはあくまでゲームを盛り上げるためのアクセントであるという本分が、しっかり守られているのだろう。また、短めのイベントシーンなどにおけるキャラクターの会話が、ボイス入りではなく字幕だけで処理されているところなども、気の利いた作りだと言える。

広く美しい世界と、自由な冒険

 FFXIIでは、3Dのフィールド上でキャラクターを移動させつつ、戦闘や街での会話、買い物などを行うことができる。見た目のイメージは、シリーズ前作「FFXI」にかなり近く、その時に与えられた目的をひとつひとつ達成していくことで、ストーリーは進んでいく。ただし、冒険は一本道というわけではない。「モブ」と呼ばれる、賞金のかかったモンスターを倒すフリーミッションや、街の人間との会話によって発生する小イベントなどが数多くちりばめられているのである。メインストーリーに関連した強制イベントなども少ないので、準備が十分でないまま戦闘になってしまうといったことはほとんどないだろう。

photo ゲームデータのセーブは、街などの要所に配置された「セーブクリスタル」で行う

 また、メインストーリーを進めるためのイベントに突入したあとも、その舞台となるフィールドから自由に抜け出せることが多く、自由度は非常に高くなっている。加えて、その時点で自由に行動できるフィールドの範囲もかなり広く設定されていて、モンスターの強さなどを気にしなければ、広い世界をどんどん進んでいくことができる。美しいグラフィックで描かれた世界をストーリーそっちのけで隅々まで堪能するのも、なかなか楽しいものがあるだろう。

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