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周囲を良く観察して行動しましょう――災害時の知識が当たり前のように身に付くリアルサバイバル「絶体絶命都市2 ―凍てついた記憶たち―」レビュー(2/2 ページ)

崩壊する都市からの脱出劇を描いたシリーズの最新作。押し寄せる洪水。陥没する大地。クリスマスイブの騒がしさは一瞬にして地獄のような惨状と化した! ……だが、怖いのは天災だけではなかったのだ。果たして主人公たちの運命は?

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体温を維持することが生存の絶対条件

 ここまではシナリオに散りばめられたユーモアについて触れたきたが、では肝心のサバイバルはどうなのか? というと、こちらも多様なシステムが用意されている。まず、前作では「渇き」が死亡条件となっていたが、今回は「凍え」が死因になる。季節は冬で、流れ込んできた水は氷のように冷たいからだ。寒風も吹き荒れ、氷雨が降り、時には雪もちらつく。

 主人公たちは、ろくな防寒具も持たない状態で、そこへ放り出されてしまうのである。血路を開いて行こうにも、体が動かなくてはどうしようもない。体温が一定以下になってしまうと、主人公たちは「行き倒れ」になってしまう。すなわち死、ゲームオーバーだ。

photo あたたまりポイントは、セーブ可能な唯一の場所でもある。体はわずかな時間ですぐに冷えてしまうので、こまめに戻りながら探索をするのが安全だ

 体温を保つためには、ともかく暖を取るしかない。本作では、ヒーターやストーブ、あるいは焚き火などがある場所を「あたたまりポイント」と呼ぶ。探索で凍えた体を暖め、次なる探索に備える場所。つまり、サバイバルの拠点である。

 あたたまりポイントでは、食事を取ることもできる。食事には、TPと呼ばれる体調ゲージを保つ効果があり、十分に暖まったうえでさらに食事を取れば、TPの減少が一定時間抑えられる。これはかなりうれしいボーナスだろう。サバイバルの基本は「食料の確保」というわけだ。

何を携行するかの判断も大切

 先ほど、主人公たちは着の身着のままで放り出されたと言ったが、そのせいで彼らは鞄やバッグなど、物を入れる道具を持っていない。探索を進めていくと、バックパックやポーチなどが見つかるが、いずれにせよそれほど大量の品を持ち運ぶことはできない。

 そのため、何かを見つけても持っていくかどうか、慎重に考えねばならないのだ。見つける端からやたらと持っていくと、もっと重要な品を見つけたときに回収できなくなる。この場合は、何かを捨てるしかないのだが、捨てたアイテムは削除され、2度と手に入らない。冷静な判断力が問われることになるだろう。

photo アイテムにはそれぞれ重さがある。限界重量を持ち歩いていると、少し重めのアイテムを見つけたときに、2個以上のアイテムを捨てないと回収できない

 例えば食料にかんして言えば、大規模な災害が起こっているのだから、生鮮食料などは望みようもない。手に入るのは原則としてレトルト食品やインスタントフードだ。これらは調理しないと食べられないから、調理器具がないと役に立たない。つまり、食事を取るには、食料と調理器具を携行しなければならないわけだ。携行品に限りがあることを考えると、これはなかなか厳しい。

 となると、いくら食料を見つけたからといって、食べきれないほど持っていくのは無駄だ。拾ったら、その場で食べて一時的にTPを保つ、という感じで使ったほうが賢明だろう。主人公たちは無人の砂漠やジャングルにいるのではない。救急隊が来ている場所まで生き延びればいいのだ。

歩くだけでは街を脱出できない

 移動は基本的に歩くか、走るかして行う。シナリオによっては、ジェットスキー、タクシー、ゴムボートなどの乗り物を使うことになる場合もあり、乗り物の操作は、徒歩で移動している時とは、少し感覚が異なる。

photo ジェットスキーやゴムボートなど、水上を移動する乗り物は、水の流れによる影響を受ける。大きな波や濁流が押し寄せた場合、流れを読んで操縦しないと、あらぬところへ流されてしまう

 例えば、ブレーキやハンドルを入れるタイミングで走りが変化することがある。ミスすれば思わぬ方向に暴走するし、上手くキメればスムースな移動も可能になる。こうしたテクニックの差が生死を分ける時もあるのだ。

 体温の維持、携行品の選択、移動手段の確保――これらはある意味、災害からの避難という点では基本と言えることではないだろうか。ゲームのマニュアルには、末尾に「災害対策マニュアル」が付いている。これはゲームの攻略ではなく、一般的な災害対策について書かれているものだ。この辺り、遊びながら災害時の大切な知識を得られる、教育ソフト的な側面もあるかもしれない。

自分の目で見て、自分で考え、自分の手足を動かせ

 ゲームとして見ると、絶体絶命都市2の難易度はやや高めになっている。高所や水のほとりなどでは、落ちたら即ゲームオーバーという個所はかなりあるし、そうでなくても、体温の低下が早く、探索しているうちに凍え死んでしまうことも珍しくない。

 また、本作では全般に視界が悪く、自分の周囲の状況をプレーヤーが一瞬で把握することがかなり難しい。地図を見る機能はあるものの、かなり大ざっぱな地図なので、方角が分かる程度だ。実際にはあまり役に立たない。

photo 一見、ムービーかイベントに思える場合でも、のんびり見ているとゲームオーバーになることがある。油断せず、しっかり目をこらしていよう

 場合によっては、強いストレスを感じるプレーヤーもいるかもしれない。だが、主人公たちが置かれている状況を想像すれば、こうした障害が設定されていることは、必ずしも理不尽とは言えないだろう。何しろ、何の訓練も受けていない一般人が、まったく予想もしない災害に見舞われたのだ。常識的には、生還率は低いはずである。そう考えれば、難易度が高いのもうなずける。

 ただし、本作では落下などの突然死を、周囲を良く観察することでほとんどカバーできる。自分の周囲を見渡す機能があるので(場所によっては効かないこともある)、これであたりをよく見てから行動すれば、そう簡単には死なないはずだ。逆に言えば、観察せず適当に走り回ったりすると、死が待っているということになる。これは本当にリアルだ。

複雑な相互干渉シナリオを解き明かせ

 難易度という点で、もう1つ無視できないのがシナリオの複雑さとなる。絶体絶命都市2では、各シナリオの主人公たちがほぼ同時刻で行動しているため、互いの行動が干渉し合う仕組みになっている。

 例えば、篠原編で別のシナリオの主人公A(ネタバレ防止ためにAとする)と出会ったとする。この時、Aとのやりとりである選択肢を選んだとしよう。すると、やがてAのシナリオをプレイしている時、同じイベントが今度はA側の視点で発生し、前にプレーヤーが選んだ通りの反応を篠原がするのである。

photo 選択肢は多い時には10種類近く表示される場合もある。ウケ狙いで、わざとヘンな選択肢を選んでみたくなることも

 こうした相互干渉は、セリフや反応が変わるだけの場合もあるが、ゲーム展開そのものを変えてしまうものも用意されている。そうした細かな違いの積み重ねが、シナリオを分岐させていき、エンディングを変えてしまうこともあるのだ。

 1度遊んだくらいでは、とてもシナリオの全貌を解明できないだろう。特に、第3話以降で顕在化してくる陰謀については、分厚いベールの奧に隠されていて、暴くには第1章から計画的にゲームを進めていかねばならない。絶体絶命都市2は、複雑なアドベンチャーゲームを解くような面白さも持ち合わせているのだ。

張りつめた神経はコスプレで慰めよう?

 最後になるが、本作のコスプレ要素にも触れておきたい。サバイバルの一環として、衣服は重要な役割を持っている。寒風の中、シャツ1枚でいるか、セーターを着ているかの差は大きい。ダウンジャケットを着ていれば、雨に打たれても体の冷えはずいぶん違ってくるだろう。そういうわけで、本作にはいろいろな服が出てくるのだが、その中には明らかにギャグとして用意されているものも多い。

photo クリスマスイブの事件ということで、サンタのコスプレも用意されている。ちなみに男女それぞれあって、女性用はミニスカサンタになる

 例えば、帽子のひとつとして用意されているアフロ。これはアフロヘアのかつらで、ごていねいに小さな角がついている。黄色の雨ガッパと合わせて着れば、雷様だ。ほかにもネコミミやナーススーツなどもあるので、これでサバイバルに疲れた精神を癒すのも一興かもしれない。

 実践的なサバイバルシステム、入り組んだシナリオ、遊び心満載のコスプレ、そして随所にちりばめられたブラックな笑い。それらが相まって、ただのサバイバルに終わらない、もっと間口の広いエンターテイメントに仕上げられているのが、絶体絶命都市2という作品なのである。

絶体絶命都市2―凍てついた記憶たち―
対応機種プレイステーション 2
メーカーアイレムソフトウェアエンジニアリング
ジャンルサバイバル・アクションアドベンチャー
発売日発売中
価格7140円(税込)
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