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次世代クオリティで描かれる“戦争”はすごく美しくて、何より重い「NINETY-NINE NIGHTS」レビュー(2/2 ページ)

マイクロソフト ゲームスタジオが放つ、Xbox 360用大作アクション。敵で埋め尽くされた戦場から、何を感じて、何を楽しめるのか。単純に爽快(そうかい)感を求めて楽しむこともできれば、テーマについて深く考えることもできる本作、その魅力に迫る。

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選ぶキャラクターによっては、違うゲームのような感覚に

 プレーヤーキャラクターは7人用意されている。ただし、最初に選べるのは、聖堂騎士団に所属する少女「インフィ」だけだ。プレイを重ねて条件を達成することで、プレイ可能なキャラクターが増えていく仕組みが採用されている。

 正直、最初は“7人だけか、ちょっと少ないなー。やり応えはないんじゃないかな?”と思っていた。だが、2人目、3人目と、次々と新しいキャラクターでプレイすることで、そんな予想はまったくの思い違いであることを思い知らされた。

 なぜなら“キャラクターごとにアクションがまったく異なる”から。例えば、インフィは全体的にスピードが速く、ジャンプ攻撃が多彩なのだが、聖都教団の神父であり、こん棒のようなものを振り回して戦う「カラーラン」は、なんとジャンプができない。さらに言うならば、相手をつかんで投げて攻撃できるなど、インフィと共通点を捜すほうが難しいくらいなのである。

 キャラクターによって特長がガラリと変わるので、ステージの攻略法も大きく変化する。例えば、魔法使いの「テュルル」は防御力は低いが、水を飛ばす遠隔攻撃が可能だ。そのため、常に一定以上敵と距離をとって戦う戦闘になる。迫り来る敵をかわしつつ、遠隔攻撃で倒していくその様は、アクションというよりもシューティングゲームに近いだろう。遊ぶキャラクターを変えるたび、本作のまったく異なる一面を見られるのも、大きな魅力のひとつだと筆者は感じた。

photo インフィのジャンプ攻撃は、混戦状態の戦場に飛び込むときにも使える
photo 敵をつかんだあと、振り回したり地面に叩きつけたりするカラーランの攻撃。とても聖職者とは思えない……
photo 頼りなく見えるテュルルの攻撃だが、相手を吹き飛ばすほどの威力を秘めている

7人の視点に立つことで、初めて明らかになる重厚なストーリー

 ここからは、ストーリーと世界設定について語っていきたいと思う。いきなりで何だが、本作はストーリーが非常に分かりにくい。ゲーム中に流れるムービーで、基本的な世界観を説明するためのセリフがあまりにも少ないからだ。何の説明もないまま、突然ゴブリン族と戦うことになった時は、筆者も面食らった。

 実は、世界で戦争が起こっている理由や、種族関係のイザコザに関しては、説明書で詳しく解説されている。筆者も相当プレイを重ねたあとでそのことに気づき、ショックを受けた。最初から説明書を読んでいれば、もっとスムーズに世界へ入りこめたのに、と。

 まだ本作をプレイしていない人――特に普段からゲームに慣れ親しんでおり、説明書を読まなくてもプレイできるという人――は、筆者のように残念な結果にならないためにも、プレイ前に説明書を一通り読んでおくことを強くオススメする。ストーリーをしっかりと理解できるようになれば、感情移入度も大きく変わるからだ。ちなみに、バックグラウンドストーリーを簡単に説明すると、以下のようになる。

N3バックグラウンドストーリー

photo 人間やゴブリン族以外にも、カエルような風貌を持つ「ゲゲ族」といった種族も登場する

 人間やゴブリン族などさまざまな種族が存在する世界。その世界は、オーブの不思議な力によって均衡が保たれていた。ところが、何者かにそのオーブを半分に割られてしまう。オーブが分かれたことで、世界は光と闇の勢力の2つに分かれ、互いに正義を掲げて争いを繰り返すようになった……。


 N3は、このひとつの大きな戦争を、立場も種族も違う7人のキャラクターで体験できるのだ。当然のことながら、立場が変われば敵も正義も変わるので、ゲーム中の雰囲気も完全に別のモノとなる。操るキャラクターによって、多数の世界観を楽しめるのが、本作の大きな特徴だろう。

 最初に操るキャラクターが人間のインフィということもあり、筆者は“人間の敵なんだから悪い奴に決まっている”と思い、特に何も考えずにゴブリン族をズバズバと斬りまくっていた。だが、ゲームを進めていくと、ゴブリン族の「ディングバット」が使用キャラクターとして登場する。ディングバットで遊ぶ場合、敵として現れるのはもちろん人間だ。しかも、インフィやアスファといった、それまで自分が使用していたキャラクターまでもが、強力な敵となって目の前に立ちふさがる。

photo 気が引けつつも斬るしかない。悲しいけど、これ、戦争なのよね

 それでも“ゴブリン族に正義なんてあるものか”という気持ちで、なんとなくプレイを進めていた。だが、人間が無抵抗なゴブリン族に対して行った行為などを知っていくうちに、“本当にひどいのは、実は人間のほうなんじゃないのか……!?”と考えるようになる。そうなると、再び人間のキャラクターで遊んだ時、ゴブリン族を斬るのに少し気が引けてしまう。これには筆者自身も驚いた。いったい何が正しいのか、何が正義なのか。ゲームでそんなことを考えさせられるとは、思いも寄らなかった。

目の肥えた3Dアクションファンも満足させる仕上がり

 勧善懲悪ではない重厚な物語と、大迫力でド派手な戦闘が絶品のN3。誰でも楽しめる作品であり、大作と呼ぶにふさわしい完成度を誇っていると思う。だが、既存タイトルと比較した場合、決定的な差別化となる戦闘システムがないのも、また事実だ。そのため、“定番タイトルとあまり変わっていないじゃないか”という評価を受ける可能性もあるだろう。

 だが、現在のところ唯一の次世代機であるXbox 360、そこで登場した最高クラスのクオリティを誇る3Dアクションゲームに触らないのは、非常にもったいないと思う。操作自体も非常に簡単なので、3Dアクションゲーム好きはもちろん、アクションゲームが苦手だという人にもプレイしてもらいたい作品だ。

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