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「MI2」のプロデューサーになぜ大抜擢されたのか?KOFマキシマムインパクト2:FALCOON氏インタビュー(3/3 ページ)

3Dの新しい“KOF”はどう作られていったのか。「KOFマキシマムインパクト2」プロデューサーFALCOON氏に話をうかがった。イラストレーターからプロデューサーへの転身、そして氏の中にあった葛藤とは。

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―― ゲームを買う1つの理由として「MI流に解釈されたあのキャラクターを触ってみたい」と思ってもらいたいと?

FALCOON そうですね。そういう思いもありますし。現行、2D版のKOFだと、なんとなくキャラクターの登場が予測されがちかな、と思っているんですよ。だから、それをいい意味で裏切っていきたい。

―― MI2はコンシューマーベースのチューニングがされてるということですが、アーケード版のMI2についてはどうですか? 会社的、現実的にできる、できないという判断ではなく、個人的にやりたい、やりたくないといった意味では。

FALCOON 僕としてはやりたいですが……会社としてビジネスの部分がどうかというのがあって。GOがかかればもちろんやりたいと考えていますし、こちらからも持ちかけたりといったことはしています。アーケードって、やはり敷居の低さが素晴らしいなと。アーケードは1プレイ100円。MI2を試しに遊ぼうとする7140円(税込)かかりますから。それはアーケードからすると70倍じゃないですか。やっぱりユーザーがこわくて手を出しにくいのも理解できます。

2Dから3Dへの変更は、ただの移植作業ではない。MIシリーズの目指す場所とは。

―― 2Dから3Dの変更というところでは、いままでにいろいろなメーカーさんがチャレンジされています。たとえば、アリカさんは「ストリートファイターEX」シリーズを手がけていて、その先に今なおファンを多く抱えている「ファイティングレイヤー」があります。「鉄拳」や「バーチャファイター」とは違った「2D格闘ゲームっぽい3D格闘ゲーム」というところでは、どんな考えで作ってらっしゃったんでしょうか。

FALCOON ファイティングレイヤーは基板を持ってますよ(笑)。個人的にかなり好きです。3Dという部分で、やっぱり意識せざるを得ないのがバーチャファイターと鉄拳ですね。バーチャファイターは、MI2を作る軸で考えたときに、興味の対象ではなくて、やはり鉄拳が大きくあるんです。個人的に好きなゲームっていうのもありますけど。バーチャファイターって、「ものすごい良くできたジャンケン」だなっていう印象があるんです。完成されたシステムの中で行われるジャンケンにどれだけ勝てるか、というのが気持ちいいと思ってるんですね。

 鉄拳はまぁ、もっと違うところにあるのかな、と。僕が好きなところは、コンボの組合せにすごく自由度があるところとか……。僕の中で鉄拳は半分パズルゲームで、コンボの構築がすごく楽しいんですよね。「これは意図してこの猶予フレームを残してるのかなぁ」とか思いながら遊んでいるんです。僕はコンボを試すのにマクロを組んだりもして調べているので、そのときに「おお、ここでこのフレーム残しておくのは神だな」とか楽しんでいます。

―― それは、作り手側の視点で、という事ですね。

FALCOON そうなんですよ、もちろんデザイン部分でハッとする部分もありますし、キャラクターの構築の仕方っていうのも勉強になりますし、システム部分に関しても……たまに、「ちょっとこれはどうかな」というのもありますけど、それは僕自身の好き嫌いの部分だから問題ではなく、基本的にはやっぱり面白い。ただ、僕は別に鉄拳を作ろうと思っているわけじゃないんです。あくまでも、MIを作ろうとしているので……。2DのKOFを3DのMIにしていく上で避けられない、超えなければならないのはやはり「ストリートファイターEXの壁」なんです。

―― 2Dの一大タイトルを3Dへとうまく変更していった前例いうことですね。

FALCOON ええ、あれをどうやって越えいくんだろうと。EXはかなり前衛的なシステムを入れ込んでいるゲームなんですよ。ただ、EXとMIで一番違うかな、というのはジャンプの感覚です。MI2を作るにあたって考えたのは「3D的な作りにしましょう」というのではなくて、もうほんとに2Dで遊ぼう、と。2DのKOFって悪い意味で「バッタゲー」と言われたりしているんです……ぴょんぴょん飛んだ方が強い、飛ばないと死んじゃう、と。MIを作るにあたって、一番プレイしてくれる人たちはどの層なのか、と考えると、やっぱり2DのKOFユーザーたちなんですね。3Dだからって鉄拳やバーチャの人たちが「やってみようか」なんて思わないでしょうし。

MI2での新システム「さばき」

FALCOON 今回は開発に許された時間というのが本当に切実で……。海外販売とスケジュールの絡みとかもあったり、ビジネス的に「MI2をどう売っていくか」っていう基本のモデルを1年前に組んだときに、発売予定日は死守しなければならなかった。なので、「本当にMIでやりたいこと」はもっともっと先にあるんです。今回、そこにいくためのひとつの区切りとして、例えば「さばき」を入れたんですね。2を作るにあたって、あんまり多くの変更は望まなかったんです。しかし、それを会社は嫌いましたね。「売りづらい」と。「営業的なインパクトが無い」って言われました。

 2DのKOFっていうのは、毎回変わったシステムを入れています。「なんとかキャンセル」とか、「何とかシフトシステム」とか。オペレーターに売るために「こんなにキャラ増えました」とか、こんな「システムが増えました」とか、営業はアピールしたいわけです。

 それをするときに、「さばき」しかない、「スーパーキャンセル」しかない。「それじゃ売れない」ってことで「タッグ戦に出来ないの?」、「それはもうだいぶ前にナムコさんがやってますから」とか、「じゃあ3対3にしてみればいいじゃない」、「それはもう以前にセガさんがやってます」だとか。

 MIは、ユーザーが時間をかけて新システムに慣れてきて、次にこういうシステムが欲しいって思ったものを乗せていって、、どういうリアクションさせてっていう、長いスパンで考えているんです。「さばき」も、万能に見えてわざと足りない部分というのを残してあるんです。「さばき」慣れた人には次はこれが欲しくなる。そこを、シリーズを重ねる上で、市場を見ながらやっていきたいなと。

―― 「さばき」をやってみて思ったんですが、SNK系の打撃を返して放り投げる、いわゆる「当て身投げ」にしませんでしたよね。そこは、やっぱり試合の流れを中断したくなかったからですか?

FALCOON そうですね。やはりさばいたからどうする? さばかれたらどうする? というところを一番面白くしたかったんですよ。MI2は、とにかくゲームのテンポが速いんですが、慣れてくると結構覚えられるんです。相手の技が見えたときに、ここだっていう「さばきポイント」が確実に見えてくる。「さばき」からの流れを認識してもらったほうがよりゲーム的な部分がが深くなると思ったので。

ユーザーに喜んでもらえるイベント、そしてその先にある「MI」とは

―― 今回、プロモーションはかなり「普通のゲームプロモーション」とは違いますね。イベントの記事を見ていても「開発者が自分たちのものに対して、こうお客さんに伝えたい」という声が届いているイベントだな、という印象がありました。ありがちな「声優を呼んでファンサービスしとけばいいんだろ」とか「体験版配布すればいいんだろ」的なイベントにしていない。そこは、FALCOONさんがプレーヤーとしての視点を持ってるからなのかと推測できるのですが。。

FALCOON そうですね。やっぱり、ファンの方にはサービスをしていきたいというのもあります。悪く言うとファンの抱え込みだとかって事になるんですが、これは作り手としてしっかりやっていくべきところだろう、という使命感が強いですね。言ったらメーカーが主催しているコミケみたいなもんですよね。そういうノリがあるんですよ。敷居が高くない会社というか、ユーザーフレンドリーですよね。

 「忘年会も毎年恒例したい」と言ってますし。ユーザーさんが遊びに来るときには、とにかくステージでゲーム大会やったりとか、コスプレのイベントやったりだとか、クイズ大会やったり、トークショーやったり。とにかくゲームイベントに来て、遊園地に来て楽しんでいるような思い出になるようにしてあげたいなというのがありまして。

―― 「おもてなし」が好きなんですね。

FALCOON そうですね。「おもてなしするから買ってよ」みたいなね。悪魔みたいですよね……僕(笑)。

―― 今回、色々あって辞めようかなと思っていた時期に、プロデューサーになって、念願のゲーム制作をできて、というところですが……辞めませんよね? 「いい区切りになったから……」なんて思ってませんよね?

FALCOON いやいや、辞めませんよ。まだまだやりたいことがありますし、MIはまだ次がありますんで。ストーリー的に、いまは中間のところなんですよ。だから、最低でも完結までは。基本的に、KOFは3部作で完結してきているので、一応次で完結の予定をしています。でも、まずはMI2をぜひ買っていただいてからのお話です!

KOFマキシマムインパクト2
対応機種プレイステーション 2
メーカーSNKプレイモア
ジャンル3D対戦格闘
発売日発売中
価格7140円(税込)
(C)SNK PLAYMORE


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