12年待った――糸井重里さんへの手紙:「MOTHER3」レビュー(4/4 ページ)
はじめまして糸井様。古くからのゲーマーであれば、一度くらいは名前を聞いたことがあるソフト「MOTHER」の最新作が、12年ぶりに発売となりました。ずいぶんのご無沙汰ですが、お変わりないようで安心しました。僭越ながら、シリーズ初プレイの立場で本作に対する手紙をしたためた次第です。
“MOTHER”が意味するのは、人と人との絆なのかもしれない
3章ではこれまでとはうってかわって、サルのサルサが主人公になる。といっても、サルサは恋人のサルをサル質にとられてしまっているので、行商人のヨクバのいいなりになるしかない。場所も、これまでの暗めな雰囲気から一転して砂漠地帯へと変貌し、その後にタツマイリ村へと戻る。ここではヨクバの指示通り、シアワセのハコを配ることになる。いとしい恋人……恋ザルのために、辛抱強く言われたことをこなすサルサ。その行動を不審に思ったクマトラたちが気づき、ある晩に逃がしてもらえるのだった。しかし、うまく脱出したのもつかの間、クマトラとサルサ、ウエスたちは山間部に追いつめられてしまう。その時に現れたのは、泣き虫だった双子の兄弟の弟、リュカだった。彼は味方のドラゴに頼み、ブタマスクとヨクバたちをあっという間に追い払ってしまう。そしてついに、村のために正しい行動をとり続けた人物たちが、一堂に会するのだった。
いわば、ここまではプロローグのようなもので、第4章からが本当の物語の始まりともいえるだろう。ちなみにデータは、各所にいるカエルに話しかけることでセーブできる。とにかく、そこかしこにカエルがいるので、セーブポイントに困ることはまったくなかった。また、戦闘終了後に得られるDP(お金)も、パーティーが直接もらえるのではなく、一度カエルの懐に入る仕組みになっている。もし買い物などでお金が欲しくなったときは、カエルに話しかけて引き出す仕組みだ。
なお、ストーリーの節目に登場するボスには、必ず何らかの弱点っぽい部分が存在する。それを知らずに戦うと痛い目を見るのが、ちょっと厳しいところではある。もっとも、それはとあるPSIだったり、宝箱から入手可能なアイテムだったりするので、気づけば何でもない程度のものだ。
ここまでプレイして分かったのは、“MOTHER”というタイトルは、決して母親だけを指しているのではなく、人間すべてが持つ絆というものを示しているのではないかということです。子供と妻のために活躍するフリント、師匠に教え込まれたテクニックを信じる良き心を持つドロボーのダスター、恋ザルを助けるために我慢するサルサ。彼らは皆、絆という1つの言葉で結びつけることができるのではないかと推測したわけです。そして、その絆の一端をプレーヤーも握っているのではないでしょうか。だからこそプレーヤーは、物語中の登場人物と一緒になって泣いたり笑ったり、時には怒りを感じることがあるのです。
第4章から先も、正しき心を持つ者達の絆を通して、次々と物語が展開していきます。そして最後には、誰もが驚く結果が待っています。プレイしていると、どんどん先が見たくなるストーリー、サウンドバトルという独特の戦闘システム、そして、親近感溢れるキャラクターたち。プレーヤーも、友人や家族といった周囲の人々との絆を考えながらプレイすれば、きっとMOTHER3の面白さが心に染み込んでくるのではないでしょうか。事実、自分もいきなり死を迎えてしまった母親に涙しました。
現実で起こることは、この世界の中でも起きています。価値観は時が経つと変化していきます。ゲームの中でも村の価値観はわずかの間に劇的に変化していったように、本作が1作目から17年という時間を経過していく間に、ゲームそのものの価値観も、生活のリズムや時代性に応じて変化していきました。でも、この空白の時間には、なにかしらの意味があったのではないでしょうか。シリーズを愛する人々が、最新作を長年待っていたことを忘れてはいけない、ゲーム中では変わらないものもあるのだと、本作は教えてくれます。それがどれだけ大事なのかと。だから、待った時間は無駄ではありませんでした。本作では、その大事なものが何なのかを改めて教えてくれるから……。
MOTHER3 | |
対応機種 | ゲームボーイアドバンス |
メーカー | 任天堂 |
ジャンル | RPG |
発売日 | 2006年4月20日予定 |
価格 | 4800円(税込) |
Sound:(C) 2006 HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
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