総合芸術としての「超兄貴」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(3/3 ページ)
「超兄貴」(1992年・メサイヤ)は熱い。変な方向に熱い。私も原稿執筆中、あまりの熱さにアテられて、39度の熱出してダウーン。薬の副作用でまだ眠いけど、そんな状態で原稿書いたらどうなるかってところを見せてやるぜ!(←変な方向に熱い)
アニマゲドンin武道館
1995年、「超兄貴」に続編が誕生する。
タイトルは、「愛・超兄貴」!
今度はアドンとサムソンが主人公。やはりこのゲームのBGMも質が高い。
「愛・超兄貴」では、前作の葉山宏治氏ではなく、新たに岩崎琢氏が音楽を担当している。
強烈なインパクトや破壊力では、葉山氏に一歩譲るかもしれない。しかし岩崎氏のサウンドには、葉山氏とはまた別の魅力があった。
実は私が「愛・超兄貴」の曲を初めて聴いたのは、ゲーム中ではない。
ビデオ「ゲームの殿堂'95」(ユーメックス製作・東芝EMI発売)である。
1995年8月、週刊ファミコン通信(現・週刊ファミ通)が、日本武道館で2日にわたって行なったイベント、「ゲームの殿堂'95」。初日の28日は、今の東京ゲームショウに近い、各メーカーの新作展示が中心だった。しかし2日め、29日は一転して、各メーカーの音楽スタッフなどによるライブイベントとなった。(ゲームに関係ないプロのアーティストも多数出演していて、その中にはシャ乱Qもいたらしい)
このイベントで岩崎琢氏が、その名も「アニマゲドン」というバンドを率いて、「愛・超兄貴」のBGMを演奏していたのだ。
私は当時、会社の仕事の関係で、初日しか行けなかった。だからビデオを探して購入したのだが、このときのお目当てはアニマゲドンではなく、FII Sound Unit。ファミコン通信の編集者、MIDIはらふじ氏と、チャイルド秋恵こと佐々木秋恵さんが結成したユニットである。
私は佐々木さんの大ファンで、ライブがあると聞くと、高円寺の小さなライブハウスにまで駆けつけていたほどだ(その割にここ最近、忙しさを理由にして、佐々木さんのライブに全然行けてない。反省)。
しかしいざビデオを見てみると、一緒に収録されていたアニマゲドンのライブに、すっかり引きつけられてしまった。
まず曲自体のノリがいい。のっけから「上海パワースラム」(「愛・超兄貴」1面BGM)でテンションMAX。
ノリのいい曲なら、前作にも多数あった。しかし岩崎氏はそこに、エスニック音楽のテイストを加えるのだ。ガムランの音とお経の声が印象的な「スラッシュ寺院」。三味線や尺八がメロディーを構成する「ヒート・オブ・トムヤン」。
さらに“兄貴ダンサーズ”のパフォーマンスも良かったし、ドン・マッコウ氏の、パワーあふれるパーカッション演奏とコーラス(というより雄たけび)にも圧倒された。
こうしたライブが加わることで、「超兄貴」はより一層、総合芸術的な性質を強めている。
(葉山氏のライブの映像は、残念ながら見たことがない。アニマゲドンのライブ映像を見たら、葉山氏の方も見たくなってきた)
音楽と映像とゲームを一緒に楽しみたい!
「超兄貴」シリーズはさらに続く。同じく1995年に「超兄貴 爆烈乱闘編」で、遂にスーパーファミコンへ進出。韋駄天、弁天、アドン、サムソン、うみにんらが戦う、対戦格闘ゲームになった。
プレイステーション版「超兄貴〜究極無敵銀河最強男〜」(1995年)は、再び正統派のシューティングゲームとなる。特徴は何といっても、各キャラが実写になったこと。
「究極無敵〜」では、「超兄貴」シリーズのBGMを担当していたサウンドクリエイターが集結した。
「超兄貴」の葉山宏治氏と、「愛・超兄貴」の岩崎琢氏。そして「爆烈乱闘編」の曲を手がけた、ドン・マッコウ氏と笠原咲奈恵氏が、それぞれ楽曲を提供している。
葉山氏の存在感、岩崎氏のノリ、マッコウ氏のパワー。それぞれすごいけど、私はあえて笠原氏の曲を推したい。4人の中でいちばんゲームミュージックっぽいのだが、それだけにいちばん明るさがある。
曲調は多彩で、「行くッス」は女子プロレスの入場テーマに使えそうだし、「GUN TRAIN」は、今スーパーベルズがやっているような電車サンプリング音楽を、この時期に既にやっていたというのがおもしろい。
ただ、私はこれらの曲も、初めて聴いたのは音楽CD。しかもそのうち数曲は、いまだゲーム中に聴いたことがない。
「超兄貴」シリーズは「愛・超兄貴」以降、難易度が上がっている。
「超兄貴」はイージーモードにすれば、この手のゲームが苦手な私でもクリアーできる。だが「愛・超兄貴」は、難易度選択とコンティニューをなくしたことで、ちょっと取っつきにくくなってしまった。
ゲームシステムも特異。格闘ゲームのように方向キーでコマンドを入力して出す技があるのだが、意図しない時、意図しない方向に技が暴発しがちで、困った。
これは「爆烈乱闘編」も同様。自分も敵も空に浮いている状態では、なかなか攻撃を当てられない。
「究極無敵〜」のシステムは第1作に近いが、メンズビームなどの特殊攻撃を使える回数が、第1作のボムよりも少ない。ゲームの難度も非常に高く、コンティニューには回数制限があり、イージーモードでも一見さんお断りな難しさになってしまった。
やはり、こと“気持ち良さ”に関しては、第1作がいちばんだと思う。
もし今後、「超兄貴」の新作が出るならば、いっそのこと最初からアート作品と割り切って、誰でも体験できる程度まで難易度を落とした「超兄貴」を見てみたい。個人的には。
……そういえば、ワンダースワンでも「超兄貴 男の魂札」というゲームが出ていた。カードバトルゲームになっていて、あれはけっこうアートだったような気がする。
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