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パワプロシリーズ、ついに海を越える――野球の本場メジャーリーグの風を感じろ「実況パワフルメジャーリーグ」レビュー(3/3 ページ)

軽快な実況とコミカルなキャラクター。しかしそのかわいらしい見た目とは裏腹に、かなり本格的な野球的思考を要求される「実況パワフルプロ野球」シリーズ。そのコミカルさとストイックさをあわせもった大人気シリーズの、メジャーリーグ版がついに登場。

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シリーズでの大人気モード「サクセス」は2つのシナリオが

 自分で作成したキャラクターを、練習や試合、時折起こるイベントなどで育てあげ、メジャーの舞台に立たせるのが、「サクセス」モード。パワプロシリーズのファンは、このモードを楽しみにしている人が多い。作り上げた選手を既存のチームのレギュラー選手として登録することも可能で、やろうと思えば全選手を自らが育てた選手だけで構成してしまうこともできてしまう。

photo 独立リーグからメジャーリーガーになった選手も、実際にいるため、本当の夢物語、というわけではない

 スタートして選択できるのは、「アメリカン編」の1シナリオのみ。アメリカ独立リーグに所属し、スカウトの目にとまるプレイをしてメジャーにのし上がろうという下克上ストーリーだ。当然、主人公はアメリカ人。とはいえ、サクセスモードに慣れている人ならば、安心してプレイできる雰囲気である。継承システムもパワプロシリーズの流れをくんでおり、前回の経過が次回のプレイに引き継がれるようになっている。

 今回は、サクセスで作成した選手が登場したり、アイテムショップのメニューが変化するだけでなく、バイト先のピザ屋のメニューが増えたり、医者であるナオミ先生の治療法が増えていたりする。つまり何回もプレイすればするほど、選手を育てるのが楽になってくるという仕組みだ。

photo どちらを選択してもストーリー上それほど変化はないものの、筆者にとってプレイしやすかったのは、サムライ編

 継承システムをオンにしてプレイし、アメリカン編をクリアすると、日本人プレーヤーがメジャーに挑戦する、「サムライ編」がプレイできるようになる。こちらのほうが感情移入がしやすいだけでなく、選手の能力があがりやすいようで、思わず繰り返し遊んでしまう。

 もっとも斬新だったシステムは、練習のときに選択できる「ガッツ練習」だ。ガッツをためてから練習をすると、普段の練習よりも経験点を得ることができる。また、チームメイトとの連鎖練習も発生するため、かなり有利に進めることが可能だ。この練習をいかに効率的に行うかが、育成する上での重要なカギになってくる。とはいえ、ガッツを確実にためることができるのは3つまでで、それ以上ためるには、運が絡んでくる。3つでやめておくか、4つたまるまでチャレンジするかは、プレーヤー次第だ。

photophoto サクセスの画面はパワプロシリーズのものとそれほど変わらない。ただし、今回から新たに導入されたガッツ練習が、強い選手を作るうえでのキーとなってくる

 サクセスモードの経験者に向けた話をすると、サクセスをいくらプレイしても、選手の投球フォームや打撃フォームは増えなくなっている。これは、ショップでポイントを消費して購入するようになったからだ。また、精神ポイントがたまりにくくなっているため、「エラー回避」や「キャッチャー◎」を取得するのが難しい。どちらも取得するとなると、運の要素が強くなってくるだろう。

 また、彼女を作りにくくなった印象もあり、例え作ったとしても、これまでほど恩恵を得られたように感じなくなっている。この辺り、プレイに好みが出そうだ。ちなみに、筆者は姫野カレンが登場してくれることを楽しみにしていたのだが、残念ながら本作では登場しない様子。パワプロシリーズを楽しみにしたほうがよさそうだ。

MLB初心者が楽しく学べる「シーズン」モード

 一番驚かされたのは、「シーズン」モードだ。パワプロシリーズには「ペナント」というモードがあり、日本のプロ野球の試合スケジュールをそのまま再現している。つまり、交流戦を含めたセ・リーグ年間146試合、パ・リーグ年間136試合+プレーオフ(パ・リーグのみ)+日本シリーズの試合数を戦い続けるというモードであり、ストイックに黙々と試合を消化していくイメージがあった。

photo ピザの配達にきただけの主人公が、いきなりGMとは!? さすがアメリカ。夢はどこにでも転がっているということだろうか

 しかしパワメジャでは、いきなりピザの配達にきただけの主人公が、チームのGM(ゼネラル・マネージャー。人事権や運営方針を決定する球団運営者)に任命されてしまうのである。チームを率いて練習し、シーズンを戦い抜き、新人を獲得し、育てていかなければならない。つまり育成シミュレーションの要素を新たに加えたことになる。サクセスで育てたオリジナル選手を加えて、自分だけのチームでシーズンをスタートさせることも可能だ。

 試合日程は、本物のMLBと同じだ。東、西、中、各地区戦の1位とワイルドカード(各地区2位同士の敗者復活戦)がプレーオフ(7戦4勝で勝ち抜けのトーナメント)に進出し、最終勝者同士がワールドシリーズで戦う。ア、ナの両リーグどうしで交流戦を行うインターリーグも当然再現されており、同じニューヨークに本拠地を持つヤンキースとメッツのダービーマッチは、サブウェイシリーズの名を冠している。これでMLBの仕組みを学ぶことができるため、MLB初心者はこのモードを遊び尽くすだけで、シーズンの流れすべてをつかむことができるはずだ。サクセスモードも面白いが、一度はこのシーズンモードを1シーズン通して遊んでみてもらいたい。ただし、最長でも5年までしか続けることができないので注意が必要だ。

photophoto メジャーリーガーはほとんど休みなく試合を行う。全試合を休まずに出場することがいかに重労働かがよくわかる。そんな選手たちの疲労を考えながら、GMはチームをマネージメントしていかなければならないのだ

なじみの薄いMLBに光を当てた貢献度の高い1本

 これまでMLBを題材にした野球ゲームは、惨敗とまでは言わないまでも、それほどかんばしいセールスを残せなかった。本作の好調は、日本人メジャーリーガーたちの活躍と、パワプロという王者の冠に支えられていることは否めない事実だろう。

 しかし、そこにパワプロという枠を一歩外れた場所で展開された本作だからこそ、本家のシリーズでは成しえなかった、実験的な要素を含むことができたのではないか、と勝手に推測する。

 とはいえ、そこに妥協も手抜きも一切ないのが、パワプロシリーズたるゆえん。パワプロの雰囲気を損なわず、MLBの空気を表現しきったのは、さすがとしか言いようがない。本家パワプロでは、セ・リーグにしか興味のなかったユーザーが、ゲームを通してパ・リーグにも興味を持つようになった。それと同じように、本作をプレイすることで、MLBに対する造詣が深くなったとするならば、それこそがこの作品の、最大の成功ではないだろうか。

実況パワフルメジャーリーグ
対応機種プレイステーション 2
ニンテンドーゲームキューブ
メーカーコナミデジタルエンタテインメント
ジャンルスポーツ(野球)
発売日発売中
価格7329円(税込)
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