21年目のスーパーマリオは、デッカくなったり、ちっちゃくなったり:「New スーパーマリオブラザーズ」レビュー(3/3 ページ)
あの時の感動を思い出させてくれる新しいマリオが帰ってきた。ニンテンドーDSというハードの利を活かした今作は、アクションゲームとして新しくも、しかも懐かしい道を切り開いている。
セーブ方法と隠しコース
今作のセーブは、任意の場所でしかできない。それは、1〜8の各ワールドにある砦や城をクリアした時と、スターコインを5枚消費して、看板の先に進んだ時だけだ。それ以外の場所ではセーブすることができないが、実は一度でもワールド8をクリアし、そのデータで引き続きプレイを開始すれば、マップ上のどこででもセーブすることができるようになる。ゲームのデータに★がつけばクリアしたという証なので、その状態で開始すればいいわけだ。各コースをじっくり楽しみたい人は、まず一度ゲームをクリアして終わらてもいいかもしれない。
その時に役立つのが各ワールドに設置されている大砲の存在だろう。スターコインを5枚消費して行けるアイテムキノコハウスなどとは違い、その近くにある隠しゴールからでなければ行かない大砲を使用すれば、最速クリアもできなくはない。最短ルートを選択し、一気に駆け上り一度クリアしてから他のコースをじっくり遊ぶという楽しみ方もある。とはいえ、できればひとつずつ順に腕を磨いてクリアしてもらいたい。
ルイージ&ミニゲーム集
今作でのルイージは、対戦ゲームやミニゲームでも登場する。しかし、ディスクシステムで発売された「スーパーマリオブラザーズ2」のように、驚異的なジャンプ力と滑りやすい慣性は持ち合わせてはいない。つまり、見た目がルイージなだけで、性能はマリオとなんら代わりがないのである。気分を変えたい時にでも使ってみよう。
ソフトが1本あれば、最大4人で遊ぶことができるミニゲームも入っているので、友達が集まった時などにも重宝するだろう。マリオvsルイージも含め、単純なルールだからこそ盛り上がりは間違いない。
探索、発見、上達、開拓、あらゆる感覚を研ぎ澄まさせる仕様に感嘆
最後に個人的な感想を。21年前に出会ったスーパーマリオが、長年の時を経て新たなスタイルとして自分の目の前に帰ってきた。その、どこか懐かしさを感じさせる今作は、「スーパーマリオ64」や「スーパーマリオサンシャイン」と違い、2Dの動きにこだわった生粋のスーパーマリオなんだと感じてしまう。十字キーとボタンを2つしか使わないその仕様は、ともすれば単調になってしまう危険性をはらんでいたはずだ。
しかし、そこは作り手のアイディアで、より深みを与える方向へと持って行っているのはさすがと言うべきだろう。基本のアクションだけでクリアできるように設計されたコースレイアウト。だが、自分なりの攻略法を探し出す事で、新たな道を切り開く事ができるゲームデザイン。この探索→発見というサイクルは、アクションゲームとしては、かなりのキモであり、ゲームのレベルデザインの構築がしっかりできていなければならない。その点、スーパーマリオシリーズは、今まで21年に渡り蓄積してきた技術やアイディアを存分に発揮してくれている。今作も例外ではなく、自分自身で見つけられる喜びを、至る所で感じる事ができた。それは、ともすればプレーヤーのテクニックが上達した証でもあるのだろう。
あくまでも個人的な感覚で言わせてもらえるならば、今作は無駄な仕様を排除して、ある意味「原点回帰」を狙った作品に感じられた。それは、アクションゲームの“楽しさ”という根底を存分に感じられるタイトルに仕上がっていると思う。
もちろん、すべてにおいて満足しているわけではないし、自分自身納得のいかないところもある。一番大きいのは、誰もが感じるセーブの部分だろう。なぜ2周目でないとマップ上のどこででもセーブができないのか? 携帯ゲームという特性上、電車の中で1コースだけクリアして、セーブをしておきたいという人は多かったはず。逆にそれにより緊張感が生まれたのも事実だが、つい先を急ぐかのような衝動に駆られたのは否めない。やはり、「次のワールドはどんなステージだろう?」と、のんびり遊べたほうが良かったのではないだろうか。ゲームが進み、コインを存分に使えるようになれば問題はなくなるのだが……。
あとは、ルイージの扱いについて。せっかく対戦ができ、さらにキャラクターを選べるのであれば、挙動に対して性能差を出してほしかった。見た目と声が変わるだけでは、あまりにも寂しい。ある意味ルイージというキャラの魅力を存分に引き出している仕様なのかもしれないが、「2」を知っている世代からすれば、あの理不尽なまでのジャンプ力と慣性があるだけで、まったく違ったゲーム性を提示してくれたのではないだろうか。
と、いろいろ言いたいことを書いてきたが、今作「New スーパーマリオブラザーズ」は、最近のアクションゲームの中でも群を抜いたできであるのは間違いない。筆者のようなファミコン世代だけでなく、21年前の作品を知らない人でも楽しめるタイトルと言えるだろう。テレビCMの影響とニンテンドーDSというハードの特性から、女性のプレーヤーが多いのが、その顕著な例と言えるのではないだろうか? アクションゲームはテクニカルな操作を要求されるため、どうしても敬遠がちだった人たちもいたはず。携帯ゲームというハードの利を活かした今作は、アクションゲームとして新しくも、懐かしい道を切り開いてくれたのではないかと思う。
New スーパーマリオブラザーズ | |
対応機種 | ニンテンドーDS |
メーカー | 任天堂 |
ジャンル | アクション |
発売日 | 2006年5月25日 |
価格 | 4800円(税込) |
「New スーパーマリオブラザーズ」(DS)(C)2006 Nintendo
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