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求められるのは正確な操作、観察力、思考力――ひさびさに骨太なアクションをやってみないか「プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂」レビュー(2/2 ページ)

目で見て、頭をひねってルートを探すパズル性。基本操作を組み合わせて、複雑かつ流麗なアクションを紡ぎ出す操作性。その2つが相まって作り出される、個性的な面白さ。前作までをプレイしているかどうかは無関係。この面白さを味わうのに前知識はいらない。

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複雑に組み立てられたマップが生むパズル性

 この正確な操作性だけでもアクションゲームとしては十分面白いだろうが、そこへ加わるのが、もうひとつの要素であるパズル性だ。一見行き止まりになっているように思えたり、深い亀裂の向こうに次の足場が見えているのにそこまでの道がない、といった状況によく出くわす。こんな時、無茶な行動は禁物だ。

 本作では、主人公が自分の3倍くらいの高さから落下すると、無条件で死亡するというルールがある。従って何となく飛べそうに思えたからジャンプしてみた、といった感覚的なプレイをすると、死亡の連続になること間違いないのだ。

 ではどうするか? 実は一見どんなになさそうに見えても、必ず道は用意されている。その意味でハマリはないのだ。ただ、その道はマップの地形の中に巧みに溶け込んでいる。つまり、A地点からB地点に渡るのに、途中の足場、C、D、Eを経由しないといけない、といった構造になっていて、しかもそれがパッと見にはわかりにくいというわけだ。

 このパズル性に対処するには、よく周囲を見渡すこと、そして良く考えることしかない。答えは必ずあるのだから、焦って行動したりせず、どこかに手がかりはないか、どういったルートを通れば道が開けるか、きっちり考えなくてはならない。

photo 画面左下に目のアイコンが表示された場合は、L2ボタンを押すことで、ランドスケープ視点に切り換えることができる。マップを遠距離から見た視点で確認できるうえ、この状態でズームをしたり、そのまま操作することも可能だ。敵の姿も映るので、移動するタイミングを計るのにも役立つ

 ただ操作性の場合と同様、敵がいたり、制限時間がある中でこうした判断を求められることがしばしばある。初めて行ったマップで、敵の攻撃をかわしたり、時間がない中、即座に周囲を観察し、ルートを考察し、正確に入力する……となれば、これがかなり難しいのは容易に理解してもらえるだろう。

 日本語版では文字によるガイド機能が付いていて、その場所で何をすればいいかを教えてくれるので、オリジナル版と比べれば随分楽なのだが、それでもゲームが進むにつれ、そういうガイドは少なくなっていく。あくまで自分で考え、道を切り開いていくのが基本なのだ。

 周囲を観察してルートを探し出す観察力と思考力、そしてそうして見出したルートを正確に進んでいく操作性。この2つの要素が生み出す難易度は、対応不能な反射性などとはまるで違う。マップの解析ができるまでは、ゲームオーバーになることも多いかもしれない。その代わり、一度分かってしまえば、何とかなる。

 繰り返すうちに、あなたのプリンスは、ハイスピードで無駄のないアクションを見せてくれるようになるだろう。それこそが、本作はもとより、初代のPCゲーム以来、プリンス・オブ・ペルシャというシリーズを貫いている面白さなのだ。

シリーズをさらに進化させた新システム

 そして、プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂では、パズル性と操作性の融合というシリーズの伝統を継承しながら、さらにシステムを追加して面白さをいっそう高めている。その要となっているのが、敵を瞬時に倒す「スピードキル」と、「ダークプリンス」という特異なキャラクターの存在だ。

 本作では、敵がかなり手強い。いわゆるザコが存在しないので、1対1ならともかく、複数の敵に囲まれると非常に危険な状態になる。しかし、実際には2〜3体の敵がセットされている個所はけっこう頻繁にある。

photo 複数の敵に対してどう戦うか。投げ飛ばしても間合いを取る、動き回って挟まれないようにするなど、アクションの工夫でもある程度は対抗できるが、できればこうした事態そのものを避けたい

 ここで切り札となるのがスピードキルだ。これを行うには、敵に気づかれずに背後を取ることが前提となる。成功すると画面が一瞬光るので、ここでタイミングを逃さずに△ボタンを押す。これで発動するのだが、その後、敵を倒せるかどうかにも判定がある。

 スピードキルのアクション中、プリンスの武器である短剣が光った瞬間、□ボタンを押さねばならないのだ。このタイミングがかなりシビアで、短剣の光がもっとも輝く一瞬に正確に押さないと失敗になる。スピードキルは成功すれば敵を倒せるだけでなく、原則として無音で倒せるというメリットがある。つまり、敵が複数いる状態で1体をスピードキルで倒せば、残りの敵がそれを視界に収めていない限り、気づかれることがないのだ。

 上手くいけば、そのまま残る敵もスピードキルで倒せる可能性が出てくる。このようにして敵を片っ端から倒していけば、ダメージなどまったく受けない。しかし、最初のひとりで失敗したら、1対複数の不利な戦闘を余儀なくされてしまう。この差は大きい。

photophoto (写真左)効果抜群のスピードキル。それだけにミスした時は相当なショックだ。短剣が光るパターンには複数の種類があるので、それぞれにタイミングを覚えなくてはならない
(写真右)敵の位置関係によっては、複数の敵をまとめて倒せる特殊なスピードキルが発動することもある。これは非常にオイシイが、それだけにミスった時のショックも倍増する

 新システムのもうひとつの中核がダークプリンスだ。これは、主人公プリンスが、自分の心に潜む、もうひとつの人格が現れることで変身した姿。プリンスと違って残忍で冷酷な性格をしており、それだけに戦闘能力が高い。普段なら手こずる複数の敵も比較的簡単に撃破できる。

photo ダークプリンスは、多重人格や他人格のひょう依ではなく、あくまで主人公の心にある負の感情が具現化した、というところがミソ。それだけにシステム面だけでなく、物語のドラマ性にも影響を与えてくる

 ただし、ダークプリンスに変身中は、時間とともに体力が減っていってしまう。ゼロになればゲームオーバーだ。さらに変身はプレーヤーの判断でできるわけではなく、プリンスとダークプリンスのどちらを操作するかはステージよってあらかじめ決まっている。プリンスの時は、戦闘がきつい反面、マップの仕掛けやルート探索には時間が掛けられ、ダークプリンスはその逆という仕組みになっているのだ。

photo ダークプリンスになっている場合、失われた体力は、敵を倒したり、特定のアイテムを壊すか開けるかすると手に入る「時間の砂」によって回復できる

 スピードキルとダークプリンスという新システムを追加することで、従来からあった操作性とパズル性の融合という面白さをさらに発展させたプリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂。ここでは、そのゲーム性の核について説明してきたが、これはいわば基本として抑えておくべきポイント。実際には、まだまだ多くのシステムが組み合わさって、もっといろいろなことができるゲームに仕上げられている。

 こうしたシステムの中には、失敗した時に時間を戻してチャラにしてしまう「リコール」など、便利な機能もあるのだが、それでもこれまでここで説明してきたシステムに比べれば、補助的な役割に留まっている。

photo 戦車や巨人(ゴーレム)に乗って移動しながら敵と戦う、といったステージもある。この時は普段とは違った操作を求められるが、それほど難しくはないので、戸惑うことはないはず。町中を高速で駆け抜けながら敵と戦う戦車戦は中盤の見所のひとつだ

 シリーズ未体験の人でも、操作の入力タイミングがシビアなこと、自分で道を探していかねばならず、しかもそれを短時間でやらなければいけない、というシリーズの基本を抑え、そのうえで、スピードキルを確実に発動させ、ダークプリンスの特性に気をつけていけば、十分に本作を楽しめるはずだ。

 後はひたすら腕を磨いて、流麗なアクションを決めるだけである。ゲームに慣れてきたら、ぜひプレイを録画してみよう。自分で見てもホレボレするほどのプレイができていれば、あなたはもうこのシリーズの虜になっているはずだ。

プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂
対応機種プレイステーション 2
メーカーユービーアイソフト
ジャンル戦闘アクション
発売日発売中
価格7140円(税込)

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