えっ、前2作を買わなくていいんですか?――これ1本で丸ごと楽しめる「かまいたちの夜」決定版:「かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相」レビュー:(1/2 ページ)
サウンドノベルシリーズの大ヒット作、「かまいたちの夜」がとうとう完結を迎える。謎と恐怖に満ちた三日月島。そこで再び起こる事件は、透や真理を始めとするメンバーに、どのような影響をもたらすのか。
前2作のメインシナリオを収録
1994年11月に発売された、チュンソフトのサウンドノベル第2弾「かまいたちの夜」。第1弾の「弟切草」ではホラー色が強かったが、本作では本格ミステリー作家である我孫子武丸氏をシナリオライターに起用。結果、サウンドノベルシリーズで最もユーザーに支持されたタイトルとなった。選択肢ひとつ間違うだけで、大変な結末を迎えてしまったり、論理的に推理を展開すれば、誰も傷つかずにエンディングを迎えられたり、というマルチシナリオが印象的だ。
8年後の2002年7月には「かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄」が発表される。とうとう出たか、しかもプレイステーション2で! と、当時の筆者はひとりで勝手に盛り上がっていたものだ。グラフィックが美しくなり、謎の規模も相当大きくなったせいか、サウンドノベルも進化したものだなぁ、と感慨にふけった覚えがある。
そして2006年7月27日。“完結”の文字を引っさげて、「かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相」(以下、「かまいたちの夜×3」)が登場した。また、あの“ペンション・シュプール”の面々に会えるのか、と思うと、懐かしさも含めてワクワクしてくる。まるで10年ぶりの同窓会に参加するような気分だ。しかし、前作や前々作をプレイしなおさないと、細かい話は忘れてしまっている。こんな調子で「かまいたちの夜×3」を楽しめるものか、ちょっと心配……。
などと思っていたら、両作品の簡易版が最初からついているらしい。心憎いまでの配慮に手をすり合わせつつ堪能。そうそう、「かまいたちの夜」は“こんや 12じ だれかがしぬ”ってメッセージがOL三人組の部屋に投げ込まれているんだった……。「かまいたちの夜2」は正岡慎太郎が死ぬところからスタートするんだったね。しかも不気味なわらべ唄の見立て殺人で……。
どっぷりつかってしまう。当然、元は大ヒット作なのだから、これだけをプレイしていても十分に面白い。それどころか、本作で初めて「かまいたちの夜」シリーズに触れる人は、3本まとめてプレイできるなんて、なんとお得なのだろうか。過去にこの作品をプレイしたことがあって、なおかつ真相にたどり着けなかった人は、「かまいたちの夜×3」の前に最後までちゃんとプレイしてみてもらいたい。でないと、面白さも半減以下だ。
帰ってきた監獄島。そして館も完全に再現
そろそろ「かまいたちの夜×3」の話に移ろう。いきなりビックリしたのが、プロローグとなる部分を読み終えると、キャラクター選択画面になること。しかも、最初に選べるのは、透でもなく、真理でもなく、香山誠一だ! “男の大往生”というテーマソングが鳴り響く、大阪の大商人である。
前作までをプレイしたことがある人なら分かると思うが、ミステリーにもっとも不向きな主人公といえば香山だろう。にも関わらず、まず、彼をプレイしなければならないのである。「かまいたちの夜」シリーズの登場人物を、透以外の視点でプレイするのは、前作の「サイキック編」(真理が主人公)以来だ。しかもこの様子だと、香山をプレイし終われば、そのほかのキャラクターを主人公にできる様子。それもまた楽しみのひとつだ。
物語の内容に関しては、プレイしてから楽しんでもらいたいので、細かい内容は割愛するが、「かまいたちの夜2」の最後に大津波で破壊された館を、香山が私財を投げ打って再建したことになっている。
すべて忠実に作り上げているため、2つのみある窓の下には剣山があり、庭の中央には人工の池がある。「かまいたちの夜2」で事件解決の大きなポイントとなった例の仕組みもそのままだ。詳細な地図も初めて登場し、この館自体が、これから起こる事件の、最も大きくて、最も重要なアイテムになっている。
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