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“new generation”の文字に偽りなし――新たな局面を迎える元祖マルチサイトアドベンチャー「EVE new generation」レビュー(2/2 ページ)

人気アドベンチャー「EVE」シリーズの最新作「EVE new generation」が登場した。これまでの流れをいったんリセットし、気鋭のゲームシナリオライター・打越鋼太郎氏を迎えた新生「EVE」は注目に値する。

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キャラクターの魅力は強烈

 本作は、前提条件がなくても楽しめるものの、やはりキャラクターを知っていれば、それだけ愛着もわく。ここではシリーズ初心者のために、レギュラーキャラクターの基本的な設定を紹介しておきたい。

photo 普段はデタラメだがやるときはやる小次郎。今回は“正義の味方”として少女を救う姿に惚れる!?

天城小次郎
 かつては数々の難事件を解決した名探偵だったが、所属していた探偵事務所の所長で育ての親でもあった桂木源三郎の不正を暴いたことから独立。港のオンボロ倉庫に、あまぎ探偵事務所を開設し、住んでいる。
 とにかくスケベで下ネタ大好き。しかも、しがない貧乏探偵なのに、不思議と美女にモテる。桂木の娘で元恋人の桂木弥生とは微妙な関係。事務所の唯一の所員で現パートナーの氷室恭子は今回は有給中だ。
 直感で行動する天才型の探偵で、普段はだらしないが、ここぞというときはビシッと決める。「EVE」シリーズの柱ともいえる小次郎は、男が憧れるカッコよさを持っている。


photo 有り余る行動力で突っ走るまりな。だが、非情な展開がこのあと彼女を待つことに。絶体絶命の危機をどう切り抜ける?

法条まりな
 内閣情報調査室の1級捜査官。冴える頭脳と卓越した身体能力を武器に、任務達成率99%を誇る。ただ、任務をやり遂げるために命令無視や規律違反の数々を起こすトラブルメーカーでもある。やることなすこととにかく豪快で、露出度の高い服から髪まで全身ピンクでまとめた姿は、とても公務員とは思えない。
 小次郎の元恋人の弥生とは親友で、今も同じマンションの隣に住んでいる。渋い中年男性が極度に好きだが、男運は悪い。今回はある事情で組織から孤立し、いつもは強気な彼女も、弱い一面を見せる。ここがまたいい。


photo 同じ地区にある探偵事務所同士、張り合うこともある小次郎と弥生だが、今回は2人が協力して事件にあたる

桂木弥生
 桂木探偵事務所所長で小次郎の昔の恋人。バージニア・スリムをこよなく愛し、口から片時も離さない。小次郎と別れた後、ひとりで事務所を切り盛りし、地域ナンバーワンへと育て上げた。“女の子相手にムキになるなんて、おまえらしくないぞ”、“だっておまえ、気づいてるんだろ?”なんて口調で、一見ぶっきらぼうだが、その実は寂しがり屋でもある。今でも小次郎に未練があるものの、意地っ張りでなかなか素直になれない。


photo まりなの直属の上司、本部長。口調はオネエ言葉っぽいが、かなりできる人物。上層部から問題児扱いのまりなが未だ公務員なのは彼のおかげ

甲野三郎
 自称“ダンディー中年”と名乗るまりなの上司。とぼけた顔して実は切れ者で、まりなのよき理解者であり、彼女の暴走をかばえるだけかばう。内務調査官でまりなの天敵である香川とは、長らく不倫関係を続けている。一応おじさまではあるが、まりなの好みではないらしい。脇を固める味のある人物だ。


 いつものキャラクターが大活躍し、その様子は掛け値なくカッコいい(氷室恭子の出番がほとんどないのは少々残念だが……)。初代をプレイして衝撃を受けた人なら、懐かしさとともにうれしさもこみ上げてくるんじゃないかと思う。そして、レギュラー陣とともに、事件の鍵を握る謎めいた少女たちも魅力的だ。

photo “私が知りたいのは「私の」……。私の名前”。記憶を失った乃依。彼女の過去に秘められた秘密とは……

乃依(のい)
 小次郎が港にある事務所の近くで出会った少女。無表情でおとなしいが、口をきくときは小生意気。突然密室だったはずの部屋から消え失せ、“私には、なにか不思議な力があるみたい……。「テレポーテーション」っていうのかな……?”、“だって私は……蜂の子だから……”。彼女の言葉は何を意味するのか?


photo 人質になっても、警察に追われても、あっけらかんとした様子のアルト。彼女の名前に、まりなは心当たりがあるようだが……

アルト
 日銀襲撃事件でテロリストグループの人質となったことから、まりなと知り合った少女。活発で明るい性格で、まりなに事件の重要な情報をもたらす。乃依の太ももにペンで書かれたメッセージ“アルトをさがして”との関係は?


 ほかにも、日銀幹部のスキャンダルを追うドイツ人ジャーナリストの「ミカエル」、小次郎の事務所に加わるミニチュア・シュナウザーの子犬「大五郎」、公園のブルーシートハウスに住む情報通のホームレス美女「三六九(みろく)」など、新キャラは多い。

 初代からのファンとしてちょっとうれしかったのは、余計な場所を調べた時の外れメッセージにニヤッとできること。普通、アドベンチャーではそっけないものが多いが、本作では「空」に話しかけると、小次郎がいきなり“ああ、青空よ! 答えてくれ、真夏の天空よ!”と叫び出すなど、さまざまなリアクションを見せてくれる。初代のメッセージをふまえたものもあり、隅々にまで愛を感じた。

もっと小次郎とまりなの活躍が見たい

 実際にプレイしてみた感想としては、これがかなりの大満足。「EVE」の個性的なキャラクターもしっかりと生きているし、打越氏独自の大胆な発想もストーリー後半に披露される。プレイ時間は予想より短く、20時間弱といったところだったが、テンポも良くてあっという間に過ぎてしまった。

 設定が「EVE burst error」の数年後なので、初代を遊んでいたほうがより楽しめるが、これが初めてのプレーヤーでもまったく問題はない。幾重にも張られた伏線も一気に回収され、カタルシスも強い(本作ではグラフィックにもヒントが隠されている。見落とさないように!)。終盤で一気に情報量が増えるため、やや難解ではあるが、ストーリーをじっくり読むのが好きなアドベンチャーファンには、ぜひオススメしたい1本だ。

 あえて気になる点を挙げるなら、キャラクターの立ち絵、特に脇役陣の絵がもう少し豪華ならよかった気がする。ちょっとチープに感じて冷めてしまうところもあった。それと、読み返し機能があるにはあるが、使いづらい印象を受けた。こうした部分で作品全体の評価が下がってはもったいない。また、プレーヤーによっては、ほぼ総当たりで進めるゲーム性に物足りなさを覚える人もいるかもしれない。

 とはいっても、作品としてよくまとまっていて、全体的なクオリティは高い。今回の“打越EVE”は成功と言えるだろう。今後も小次郎とまりなのキャラクターを生かすことで、さまざまな展開が期待できそうだ。気鋭のシナリオライターを次々と起用して、基本のベースは同じでも、各自の持ち味を生かすパターンが続けば面白い。アニメでいえば「ルパン三世」の映画版やTVスペシャルみたいな感じだろうか。末永くアドベンチャーファンを楽しませてくれればと思う。

EVE new generation
対応機種プレイステーション 2
メーカー角川書店
ジャンルマルチサイトアドベンチャー
発売日発売中
価格通常版:7140円(税込)
DXパック:9240円(税込)
(C)2006 角川書店/HQ/シャルラクプラス
(C)TYRELL LAB.
(C)C's ware


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