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NEXONにとって日本は特別――オンラインへの可能性があれば器は関係ない(1/2 ページ)

NEXONは「G★ 2006」を前にメディアツアーを敢行。韓国江南区にある本社へと招待し、今後日本でサービスを予定しているタイトルの説明会を行った。国民的ゲームとまで言われた「KartRider」など、日本ではいつ頃サービスされるのか?

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説明を受けたネクソンの会議スペースには巨大な「NEXON」の文字がまず目に入る。天井には所々青空と雲が浮かび、全体的に自然をイメージしてデザインされている

 11月9日(木)〜12日(日)に開催された韓国最大のゲームショウ「G★ 2006」の前日、NEXON(以下、ネクソン)は日本からのメディア数人を招待し、自社が今後日本でサービスを予定しているカジュアルレースゲーム「KartRider」やMMORPG「ZerA」について説明した。

 ネクソン本社は韓国のビジネス街である江南区に、現在5つのビルに分かれて点在している。12年前に設立されて以来、近年加速度的に規模を拡大したため、“必要にせまられて”その都度フロアを借り上げているのが現状だ。社員もここ数年で右肩上がりで増加しており、将来的にはひとつのビルへの統合が計画されている。開発チームが独立したスタジオ制を導入したことで、内部スタジオとの連携を持つ意味も込められている。内部外部問わずにスタジオが開発しているタイトルの品質管理を行う「ハードルシステム」の導入と合わせて、ハード面でもソフト面でも整合性を取っていこうという意思が見える。

カンファレンスを受けた会議スペースの壁には自社のキャラクターグッズが並べられている。そして壁をよく見るとチョークによるイタズラ書きが。どうやらここに来た来客者が書き残したものらしい
別のビルの会議スペースも見せてもらったがこちらも自然をテーマに森の中をイメージして作られている。こういった遊び心ある場所で会議してこそ面白い企画が産まれるのだと説明を受けた。カップラーメンやお菓子が食べ放題というからうれしい
福利厚生のために社員が活用するカフェスペース。日本円にして120円程度で飲み物やカレーが食べられる。1カ月前ほどにオープンし、1日500人程度が利用する。お茶をするのが好きな国民性を色濃く反映している施設といえる

 ネクソンは現在までに「KartRider」と「ZerA」、そして「ルニア戦記」を日本でサービス化することを公にしている。また、来年上半期くらいを目処に「Big Shot」のサービス化も検討していきたいとしている。

 今回は「KartRider」と「ZerA」について簡単ではあるが説明を受けた。

「KartRider」がなにゆえ国民的ゲームと呼ばれるに至ったか

ネクソン開発2本部「KartRider」チーム長 チェ・ビョンリャン氏が説明してくれた。ちなみに後ろにある黒板に例のイタズラ書きが見てとれる

 「KartRider」も「ZerA」も、ともにすでに韓国ではサービス化されているタイトル。特に「KartRider」は韓国で爆発的にヒットし、カジュアルゲームの牽引役ともなった国民的オンラインゲームである。「BnB」のキャラクターを利用したレーシングゲームで、キャラクターやゲーム背景がアニメのように表現。かわいらしいビジュアルとなっている。使用するのはキーボードのキーだけで、操作が難しいと尻込みしがちな女性や子供のユーザーでも楽しめることが人気の要因となった。

 各種アイテムを使って対決するアイテム戦と、純粋に順位を競うスピード戦とモードを分けたことで、アイテム課金を成立させた。2005年8月には過去最高の22万人の同時接続を記録し、1600万人の登録会員数を誇った。これは韓国の人口の3分の1に相当し、国民的ゲームと言われるゆえんである。現在、2006年4月に中国がサービスインしており、台湾でも未定ながらサービス準備が進められている。中国でも人気で世界初の同時接続者数70万人を記録したという。しかし、日本へのサービス時期については、実に慎重な姿勢を崩さない。後ほどコメントをいただくネクソンジャパン代表取締役であるデビッド・リー氏曰く「日本は難しい。しかしとても大切だから、慎重に慎重を重ねて時期を見計らってる」とのこと。

 飽きのこない工夫のひとつとして、サービスインしてから2年、ほぼ毎週のようにアップデートを重ねイベントや新規アイテムを投入している。さらに年に1回の大型アップデートを行い、現在3rd lapまでバージョンアップがなされており、PC房(ネットカフェ)においてもいまだに人気を保っている。ちなみにアイテムでの一番人気は「カート」そのものだとか。

 「KartRider」のもうひとつの特徴としては、韓国内においてその集客力を背景に、媒体として機能したことであろう。異業種とのタイアッププロモーションを実施し、双方に大きな利益をもたらすという“ゲーム内広告”の先駆けとして展開してきた。ネクソンのマーケティング展開に関して、グローバル化への方向性が定まったのはこの時期からとも言われている。

 具体的には、コカコーラ・コリアとの業務提携により、ゲーム内広告だけに収まらず、コカコーラ・コリアの「Coke PLAY」サイトにおいて若年層顧客獲得のため企画したオンラインプロモーションが行われた。「Coke PLAY」では、コカコーラ商品に印刷したコードを入力することで得られるポイントで、音楽やゲームサービスが利用することができた。半年のプロモーション期間で400万件のコード入力を記録し、さらに継続サービスが行われている。さらに今年の夏には「コカコーラ杯」も開催され、コカコーラアイテムの販売もされた。


 また、コカコーラ・コリアに限らず、「BMW Korea」とのタイアップにより2005年10月、BMWグループコリアのプレミアム小型 ブランド“MINI”と共同プロモーションを実施している。 「KartRider」で実装される車に、BMWが販売するミニクーパーデザインするこの試みは両社のイメージアップに貢献した。BMWのほかにも韓国国産自動車メーカーである現代社やKIA社とのタイアップも行われたほか、テレビ番組とのコラボレーション企画なども積極的に行われた。

 ゲーム本来の集客力と、これらの異業種とのタイアップにより、広告のビジネスモデルとしての成功例となっただけでなく、オンラインゲームに関するポジティブな認識向上とイメージアップに結びつき、“オンラインゲーム市場の健全化”に貢献した。カジュアルゲームは寿命が短い、という常識を打破したことも「KartRider」の功績といえる。

 こんな化け物みたいなタイトルといえども日本は特別に気を使っているようだ。サービス開始時期については言及しなかったが、2007年後半でのサービスインを予定しているとネクソン開発2本部「Kartチーム」チーム長 チェ・ビョンリャン氏。「日本では中国や台湾と同様に1st lapからのサービスで、日本オリジナルアイテムなども意見交換しながら取り入れていきたい」と述べるにとどまった。

「Anycall」や「MEGABOX」、「Popeyes」など他業種でのプロモーション活動は盛ん

「ZerA」はほとんど開発し直しと言えるほど日本向けにローカライズしている

ネクソン開発1本部 開発4室 室長 パク・キョンミン氏

 ネクソンが設立されて12年のゲーム開発ノウハウを集約し、開発期間3年、100人以上のスタッフ、そして総額100億ウォン(約10億円)の開発費を投入し製作された本格MMORPGが本作「ZerA」(ゼラ)に当たる。徹底的な秘密保持が行われ、2005年6月に発表されたタイトルだ。2006年2月にオープンβテストを開始し、今年8月に有料ショップをオープンしたことを機にアイテム課金がはじまった。

 “誰でも気軽く楽しめるRPG”、“総合的なゲームの経験を提供する完成度の高いファンタジー”をコンセプトに開発したのは、ネクソン社内の開発チーム“GAMETAB”。その時点ではネクソンになかったリアル系の3DMMORPGへの分野開拓を目指したタイトルで、可変型ダンジョンであるデミ=プレーンおよび多様なクエスト、戦略的なプレイができるようなスキルシステムなどが特徴だ。

 「ZerA」の語源は、ゲームの中の世界「アーカイア(Acaia)」に長い間受け継がれてきた古い言葉で、「新しい世界の誕生」を意味している。平和なアーカイアに、悪の根源「アニメタ(Animeta)」が復活するところから物語は始まる。悪の復活により暗雲と絶望感が漂う世界を舞台に、プレーヤーが不滅の存在「インフェラン(Imperan)」となって冒険を繰り広げていくというもの。

 プレーヤーが選べるクラスは4種類。近接戦闘を得意とし、剣と盾、または両手剣を手に、重い防具を身にまとって戦い、自分の防御力を高めるスキルと、一度に多くの相手に立ち向かう広範囲攻撃スキルを使う「ウォーリア」。唯一遠距離武器が使用でき、素早さを特徴とする「レンジャー」。防御力は低いものの、モンスターを召喚して自分の代わりに戦わせることができる「サマナー」。物理攻撃には弱いが、攻撃魔法を操り魔力で敵を封じ、大ダメージを与えることが可能な「ウィザード」だ。

左から「サマナー」、「ウォーリア」、「ウィザード」

 ネクソン開発1本部 開発4室室長 パク・キョンミン氏は「本作は楽しくプレイすることを重要視しています。企画当初から従来の難しく、退屈なMMORPGにはしたくありませんでした」と答えるとおり、発表されてからも既存のMMORPGでプレーヤーがどこに不満を抱くかとを入念に研究し、その結果を反映していったとのこと。

 各レベルに合わせた豊富なクエストや、AIスクリプトで多様な行動をするモンスターが用意され、さらに迫力のあるグラフィックで、単調になりがちな戦闘に常に“楽しさ”をプラスした。ストーリー上重要なイベント時には、臨場感を与えるため動画によるカットシーンが挿入され、リアルなグラフィックと派手な演出がプレーヤーを魅了する。

 アイテム課金を始めた韓国では、20〜30代の男性をメインターゲットとしているが、若干苦戦している様子。2006年2月の段階ではあるが、最高同時接続数は4万人と「KartRider」に比べると奮っていない。そもそも「KartRider」とは比較できないジャンルであり、タイトルではあるのだが。

 日本へは2007年以降を予定している。現在は、ネクソンジャパンとローカライズのための意見交換を行っているところで、開発チーム内部に日本語化チームが設立されている。ここではただ訳すだけではなく、現状の問題点を洗い出し、インタフェースを初心者向けに改善、日々検討を行っているところとか。どうやら半分近く変更され、ほぼ開発をいちからしているのと変わらないほど手が加えられているという。

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