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歴史とファンタジーが融合した新しいシミュレーションRPG「ジャンヌ・ダルク」レビュー(1/2 ページ)

「ジャンヌ・ダルク」はレベルファイブが手がけた初シミュレーションRPG作品。歴史とファンタジーが見事に融合した世界観と抜群のゲームバランスで、すべてのシミュレーションRPGファンにオススメしたい良作だ。

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レベルファイブの新たな挑戦

 14世紀から15世紀にかけて起きた百年戦争で、突如として現れたヒロイン、ジャンヌ・ダルクをご存じだろうか。もともと、普通の羊飼いの娘だったジャンヌは、神の声を聞き、17歳のときにフランスを救うため剣を手に故郷を旅立った。男装したジャンヌは、神がかり的な勢いで快進撃を続ける。だが、最後はイングランド軍に捕らえられ、火あぶりにされてしまった……。

画像 凛々しい美少女ジャンヌが数奇な運命をたどる……。現実の歴史は悲劇で終わるが、このゲームが迎える結末は?

 短いながらもドラマチックな生涯を送ったジャンヌ・ダルク。それだけに、500年以上経った今でも、数多くの小説や映画、マンガのモデルになっている。ただ、不思議なことに、ジャンヌをメインにしたゲームはあまり思い浮かばない。そんな中、シミュレーションRPG「ジャンヌ・ダルク」は、フランスの聖女ジャンヌが主人公。しかも、お堅い歴史ものではなくファンタジー要素も入って、ゲームに合わせて絶妙にアレンジされている。パッケージ裏の“史実とファンタジーを織り交ぜて描く「if」の物語”という売り文句通り、ただの作り話ではなく、歴史の授業でもない面白さがそこにある。

 制作したのは福岡のゲーム制作会社、レベルファイブ。レベルファイブは「ダーククラウド」、「ダーククロニクル」、「ローグギャラクシー」など、「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」以外でもオリジナル作で人気を得てきた会社だ。本作以外にも、今後はファンタジー世界の変身ヒーローもの「白騎士物語」など、さまざまな方向性のゲームを予定している。筆者も「ダーククラウド」の面白さにハマり、それ以来レベルファイブを追いかけてきたファンのひとりとして、今後も熱く注目していきたい。

ファンタジーと歴史が融合したストーリー

 ゲームを始めると、まず美麗なアニメムービーが流れる。これがハイクオリティで、いきなり物語に引き込まれてしまう。このアニメの内容が、すべての始まりだった。

 ――嵐の夜、イギリスの摂政・ベッドフォード公は、幼いイギリス王ヘンリー6世に昔あった死神戦争と腕輪のおとぎ話を聞かせていた。

 ……遠い昔、魔王率いる死神たちが、人間界を侵略しようと、死神戦争を起こした。邪悪な力を封じる腕輪をつけた5人の勇者たちは、ついに魔王を封じ込めるが……。

「この乱世にヘンリー様が勝利するためには、圧倒的な魔王の力を利用するしかないのです」

 ヘンリーの寝顔を見て、そう締めくくったベッドフォード公は、怪しげな儀式を始める……。

 一方、フランスにあるドンレミ村は祭りに湧いていた。村の少女ジャンヌは友人のリアンと教会にお使いに出かけた。「いつものお供えものか。……仕方ないな」。教会につくと、そこにはぐったりと動かない騎士がいた。ジャンヌは騎士が持つ、光る袋に目を留める。手を伸ばすと光が腕に巻きつき、腕輪になった。そのときジャンヌを魔物が襲う!

画像 羊飼いの父親を手伝うごく普通の村の少女ジャンヌ。性格は勝気でボーイッシュ
画像 教会で馬から落ちて倒れた騎士が持っていた不思議な腕輪。ジャンヌはこの腕輪を手に入れ天の声を聞く

 シナリオもシステムもカギを握るのは“腕輪”だ。死神戦争で作られた腕輪は魔物に対抗する力を持っている。腕輪の継承者となったジャンヌは天からの声に導かれ、焼け野原となった故郷を旅立つ。

 シナリオの前半は、シノンでの王太子謁見、オルレアン解放と、史実に近い形で進む。史実と異なる部分は、ゲームに登場するキャラクター。実在の人物をゲームキャラクターとして魅力的にアレンジしている。何人か紹介してみよう。

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ジャンヌ・ダルク:故郷のドンレミ村を焼かれてしまい、自ら長い髪を切り落として、フランスを救う決意を固める。凛とした美しさは、周囲の人々の心を動かしていく。必見は腕輪の力を解放する変身シーン。まぶしい光が体を包み、コスチュームが装着されるムービーはまさに魔法少女ものや変身ヒーローもののノリ! 思わず応援したくなる!?

 ちなみに歴史上のジャンヌは、「オルレアンの聖女」と呼ばれ、剣でバリバリ戦うよりは、むしろ旗持ちとして兵士を勇気づけたという。本作のジャンヌは、変身すると見違えるような強さになり敵を蹴散らす。こっちのほうがゲームとしては楽しい。


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ジル・ド・レ:冷静沈着な性格でどこか影のある騎士。ゲームでは、イギリス軍の魔物に襲われているところをジャンヌに救われる。ジルはジャンヌと同じく腕輪を継承し、戦闘で変身もできる。槍使いなので反撃を食らいにくいのが特徴だ。

 もちろんジルも実在の人物で、ブルターニュ地方の名門出身の貴族。ジャンヌに忠誠を誓い、彼女の部隊で司令官として活躍した。ジャンヌが火あぶりになったあと、少年大量虐殺の容疑で処刑されたのは有名なエピソード。童話「青ひげ」のモデルにもなっている。


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ラ・イール:外見は片目のライオン男。獣人である自分を平等に扱ったジャンヌを気に入っている。仲間入りした当初から高いHPと攻撃力でとっても頼れる奴。配下には犬男のルーファスがいる。

 歴史上は、ジル・ド・レと並び、ラ・イールもジャンヌとともに戦った猛将。本名は別にあるが、怒りっぽいことから「ラ・イール(怒り)」と呼ばれていたそうだ。獣人ではなく当然普通の人。でも、ライオン姿はイメージに合っている!?


 こんな感じで大胆にアレンジされているキャラもいれば、比較的、史実に近いキャラもいる。また、架空キャラも何人か登場する。特に、ジャンヌの幼なじみでお菓子作りが趣味という心優しい女の子・リアンは、シナリオのポイントとなる重要な役回りを果たす。と、これ以上は詳しく書けないが、ストーリーが進むにつれ、シナリオは一気にドラマチックに盛り上がっていく。

 エルフ、オーク、リザードマン、獣人が登場し、シナリオはファンタジー色も濃いが、思ったよりも荒唐無稽なおとぎ話ではなく、歴史とクロスオーバーし厚みが出ている。このゲームをきっかけに、歴史本や小説でジャンヌ・ダルクに触れてみるのも面白いのではないか、と思う。

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