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2006年はどうだったんよ――そして、2007年はどうなんよ?くねくねハニィの「最近どうよ?」(その5)(2/2 ページ)

海外のゲーム動向で日本の市場が見えてくる。クリスマスも正月も返上でゲーム業界を憂うハニィの「最近どうよ?」5回目は、なんとなく今年を総括してみました。いろいろあった今年を振り返り、未来をしっかり見据えてみたのでよろしこ。

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2007年はどうなる?

次世代機競争の本格化

 いよいよ出揃いましたからね、次世代機。1年先んじているXbox 360にPS3やWiiがどう迫っていくのかが見ものです。各ハードメーカーは潤沢なハード台数の供給をお願いしたいところですわ。欲しいユーザーがいて、タイトルを売りたいソフトパブリッシャーがいて、「あれ? ハードがない」って機会損失状況は小売店も含めて迷惑な話。それぞれ事情はあるでしょうが、そこんとこよろしこ、と言っておきたいっす。

 1年先んじたXbox 360で手馴れてきた欧米のデベロッパー達が、遜色なくPS3という新規ハード上でリッチなコンテンツをいかに実現できるか、これから見えてくると思うけど、Xbox Liveで実現されているネットワークインフラ(ここでいうインフラとは、対ユーザーということでもあり、対パブリッシャーと言うことでもあるのね)と同等のものがPS3で実現されるのか、というのも鍵になるに違いないんだわ。

 PS2独占だったRockStarの「グランド・セフト・オート」シリーズも、次作はPS3とXbox 360双方に同時発売との発表があったし、UBIソフトのPS3独占と言われていた「Assassin's Creed」、コーエーのコンバットレーシングゲーム「Fatal Inertia」やミリタリーアクションの「Bladestorm: The Hundred Years' War」は、Xbox 360での発売も発表したの。第4回「最近どうよ?」でも書いた通り、マルチプラットフォーム化も進んでいるのよね。

 パブリッシャーがコスト回収の場所(チャネル)を少しでも多く、と考えるのは自然で、高コストが絶対視されている次世代機向けのソフトではもう止められない流れですわ。そういう意味では、Wiiは特殊な立場になるでしょうな。なぜなら「遊び方」までも新しいわけですからマルチプラットフォームの枠に入るのか? という議論はあるよね。さらに、スペック的にはどうしてもPS3、Xbox 360と同じようにはいかないわけですから、そのまんまってことには行かないわけで、プラットフォーム戦略の中でどのように位置づけしていくかが、パブリッシャーの課題ですわ。

 いずれにしてもソフトによる牽引は必須で、Wiiがローンチタイトルで大きく台数を伸ばした場合は、パブリッシャーはチャネルとして無視できないプラットフォームになるでしょうね。PSP向けだけにタイトル供給を考えていたパブリッシャーがニンテンドーDSにも開発ラインを引くようになったように! 大手パブリッシャーがモバイル(携帯電話)向けのソフト供給のためにモバイル事業部や子会社を作ったりしたように!

 携帯ゲーム機も含めて、いよいよすべてのゲーム機でネットワークが可能になったから、オンライン機能は必須も必須ですね。Xbox 360では「ネットワーク機能がなければ発売自体もマイクロソフトから許されないのでは?」との噂が出るくらい。オンラインゲームのゲーム性もこの競争に加味されることは間違いないはず。いよいよ日本のパブリッシャーもデベロッパーも鎖国政策を転換しなくちゃだね。

ジャンルの乖離

 ネットワーク機能の意味でもそうなんだけど、ジャンル的な意味でも、日本と欧米の乖離は進むと思われるの。欧米の2006年のヒットソフトのキーワードは、FPS、ミリタリー、オンライン。ちょっと日本とは違うでしょ? また、アドベンチャーでもアクションアドベンチャーであって、日本のリニアなアドベンチャーはマルチエンディングであっても「ゲームではない」んだってさ。自由度がない(行きたいところにいけない)ってのは欧米のゲームの定義の範囲には入らないらしいよ……。おもしろいのにねぇ。

 また、2006年に売れたRPGは、一部のビッグタイトル(任天堂やスクウェア・エニックスのタイトル)がほぼ独占していて、実はジャンルとして大きく受け入れられたという状況ではないということは言っておくね。昔に比べれば確かに許容されるようになったもののマスマーケットと思うのはちとばかしセッカチってもんです。ただ、固定ファンはいるし、欧米のニッチ市場は今の日本市場に比べると無視できない大きさになってるから、大きな数は見込めないけど、ターゲットを明確化すれば手堅く売っていけるとも言えるのだよん。RPGもアクションRPGのほうが欧米パブリッシャーが販売しやすいって声も聞かれまする。とにかく、自分が能動的に動くことってのが基本みたいですわ。

 そういう意味では、アクションアドベンチャーなら、ストーリー性やゲーム性(ユーザーが感情移入できる度合いが高いもの)では日本はまだまだ負けないから、積極的に行って欲しいな。ただ、一昔売れると言われていた「サムライ」、「忍者」系は多少飽きられている傾向はあるまする。出しすぎました、ちょっと。

 スポーツゲームは定番ですわ。能動的だし(笑)。欧米はある程度タイトルのトレンドに類似性があるって言われてるけど、スポーツジャンルはホントに地域性が出ていておもしろいの。サッカーソフトはものすご〜く欧州で売れるんだけど、アメリカではさっぱり。アメリカは同じ「フットボール」でもむしろ「アメフト」。アメリカではNBAやMLB、ホッケーなんかがあるけど、イギリスには何とクリケットがあったり、フランスには自転車ソフトがあったりして、地域性があるのよね〜。次世代になってもこういう地域性は残って欲しいな、なんて考えたりするの。だって、たくさんの人がやるゲームソフトもあるけど、数は少なくても、好きな人がとことんやるゲームってのがあって真の「エンターテインメント」だと思わない? それは、PS3やXbox 360じゃなくても、PS2向けでいいと思うけど。

 というわけで、日本独自のジャンルの創造が期待されるわけ。欧米のパブリッシャーと同等のアクション系で闘えるデベロッパーはそれでいいけど、任天堂の「脳トレ」やSCEの「トークマン」など、日本発のシリアスゲーム(ノンゲームとも言えるかな)のような日本発の新しい発想も楽しみだね〜。頑張れニッポン!

携帯ゲーム機も熱い

2006年はニンテンドーDSの年だったわ

 いよいよ多くの人の手に出回って、PSP向けに開発していた独立系のパブリッシャー(ゲーム機メーカーではないパブリッシャー)やデベロッパーが、一斉にニンテンドーDSへラインアップをシフトしてきたんだ。2007年には任天堂以外の多くのソフトメーカーがニンテンドーDSに向けて、タイトルを入れてくるのが予想されるわ。出回ったハードにそれなりに勝負をかけるのは当たり前。ただ、このニンテンドーDS、決して独立系パブリッシャーには“おいしい”ビジネスではないの。

 

 まずは、先に述べたマルチプラットフォーム展開において、ハードスペックやユーザーへの遊ばせ方の独自性が高く、簡単な移植が考えにくいこと。相当なカスタマイズが必要か、または同じ名前のタイトルだとしても、ニンテンドーDS向けに別の遊び方をイチから考えなければならない、というところでは、ビジネス的には“リスキー”だってことがあげられる。

 あとは、価格の問題もあるの。PSPタイトルの価格帯なんだけど、新作の通常タイトルであれば希望小売価格(SRP)は39.99ドル(4700円くらい)で売られるんだけど、ロイヤルティや製造費を含めてもニンテンドーDSと比べると同等または安いくらいなの(まぁ、ROM媒体ですからねぇ……)。だけど、ニンテンドーDSのソフトはカートリッジ形式ってこともあって、メモリに比例したそれなりの製造費がかかってしまう(第2回「最近どうよ?」を見てね)にも関わらず、平均的なSRPは29.99ドル(3500円くらい)なのね。要は、1本当たりの粗利がPSP向けより小さいってこと。より高い損益分岐(Break Even と言いまする)売上げ本数が求められる、つまり、PSPよりもいっぱい売らないと儲からない構造になってて、製造費だけ考えると割が悪いってことなの。

 ただ、そもそも開発費をPSPほどかけずに作れば、これは相殺されるわけで、「出回ってる台数(インストールベースと言うの)がそれなりに大きいこと」が要求されてたわけ。ここはクリアしたよね。まさに機が熟したのだぁ! さらに、任天堂様のおかげで(脳トとかnintendogsとかでね)ライトユーザーへの訴求が行われたので、コアゲーマーが求める「グラフィックやアクション性」ではなく、「ゲーム性や新規性」が問われているんだ、ってとこをいかに攻略するかだよね〜。そういう意味ではWiiを含めた「次世代コアゲーマー向け競争」から一抜けしている任天堂フォーマットは、日本の高い独自性コンテンツのよりどころなのかもしれないなぁ、とも思ったりして。

 一方、苦戦が強いられているPSPは、パブリッシャーの利益率はある程度確保して上げられるハードなわけだし、グラフィックスペックもかなり高いんだから、あとはいかに市場に台数を浸透させるかだよね〜。パブリッシャーからすれば、PS2のノウハウを利用してPSPソフトが作れるし、損益分岐本数もハードルが低いんだから、売りたいハードであるはず。

 機能が多すぎて、ライトユーザーには敷居が高いってことはよく言われるけど、ネットワークもつながります、と言われても、つなぎ方が難解ではライトユーザーは使えません。さらに言えば、「いろいろできるのはわかるけど一体何をメインでしたいのか?」がわからないってこと。ユーザーが使いやすくて新しいインフラの整備をして欲しいところ。まぁ、その第1弾として映画のダウンロードが始まるんでしょうけど!

 また、SCEがPSP本体の価格を大幅に下げるようなことがあれば、これもまた好条件となる。ユーザーに使ってもらえれば「機能のすばらしさ」はわかってもらえるはずだし、ある程度の台数が伴えば、ゲームタイトルも供給しやすくなるってもんよ。2007年に発表されるSCEの価格戦略、インフラ戦略には要チェックですわ。この戦略によっては市場大逆転も十分考えれれるんだから!

ハニィのあとがき

2007年もよろしくお願いいたします。ハニィは皆さんのため、ゲーム業界のために今日も海外と日本をキックターンして往復する所存よ。よいお年を。そして来年またお会いしましょう〜

 次世代が出揃う年末までは、欧米市場は「買い控え」傾向にあったの。欧州ではPS3が遅れていること、Xbox 360が英国以外ではイマイチって状況の中でWiiが好調な滑り出しをしたみたいね。それにしても昨年末のXbox 360に引き続いて「出荷台数不足」がイタイですな。ま、SCEも任天堂も継続供給を約束しているから、時間の問題でしょうけど。

 そこで、次世代が発売されると、いわゆる旧ハードであるPS2は死んでしまうのか? という議論をひとつ。欧米、特に北米では、「安い」というのはすごく魅力。ニンテンドーDSが発売されても、値下げされたゲームボーイアドバンスが売れるって話は有名。ハードコアゲーマー達が次世代で遊ぶ一方、値段が下がったPS2が売れることは容易に想像できるよね〜。もちろんソフトの値段も下がりますわ。だけど、その市場は明らかにあるし、すでに蓄積された開発ノウハウによって開発費は抑えられるはずだと思うのだよ。「ようやく子供が持てるようになる」PS2となるわけで、子供向けがお得意な日本のゲームソフトはPS2で出て欲しいと思うのですわ。PS2はまだまだイケるハード! だって、世界で1億台以上普及しているハードなんだよ! そして、日本の開発陣が得意なところ! 次世代に挑戦しつつ、堅く売っていくハードであることは確かですよ。

 PS3ばかりが取り沙汰されるSCEのハードだけど、PS2もPSPもあります! PSPは本体価格を下げてくれ〜と叫びたい。素晴らしいハードをこのまま眠らせてはいけないと思うハニィですが、ダメでしょうかね?

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコダ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用してます。この度、なんだか公認してもらったそうですが、どういう経緯でそうなったかはよくわかりません。


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