今度の戦いは仲間たちとともに。孤独な戦士スネークは、絆を得て“BIGBOSS”となる:「メタルギア ソリッド ポータブル オプス」レビュー(1/2 ページ)
誕生から20年が経過してなお、絶大な人気を誇る「メタルギア」シリーズ。その最新作となるのが「METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS」だ。PSP用ソフトながら正統シリーズに位置づけられ、「METAL GEAR SOLID 3」の直接的な続編となっている本作。多数の仲間との共闘や、シリーズ第1作「METAL GEAR」へとつながる物語など、興味深い要素が盛り込まれている。
逃げて、隠れて、20年
主人公が単独でミッションに挑む、ミリタリーもののアクションゲームといえば、映画「ランボー」ばりの超人的な兵士が、機関銃やロケットランチャーを撃ちまくりながら、群がる敵兵士をばったばったとなぎ倒していく。そんな作品を思い浮かべるのが、まあ普通ではないだろうか。
ところが、1987年に誕生したあるゲームは、“主人公が単独でミッションに挑む、ミリタリーもののアクションゲーム”でありながら、主人公がほとんど敵を倒さない。それどころか、敵が来たら、ひたすら逃げたり隠れたりすることに労力を費やす。知らない人が聞いたら、「それって面白いの?」と言われてしまいそうなこのゲームは、しかし、またたく間に大ヒット作となり、日本のみならず、世界中に多くのファンを獲得してしまった。もちろん、そのゲームこそは、言わずと知れた「METAL GEAR」である。
そんな第1作の誕生からすでに20年。メタルギアは、ハードの進化とともに続編が生み出され、さらなるファンを得るとともに、人気作としての地位を不動のものとしていった。そして、2007年1月現在、シリーズ最新作となるのが、PSP用ソフト「メタルギア ソリッド ポータブル オプス」(以下、MPO)だ。
これまでも、メタルギアのタイトルを冠したPSP用ソフトとしては、「METAL GEAR AC!D」「METAL GEAR AC!D 2」の2作が発売されているが、この2つはパラレルワールド的な位置づけの作品であり、「メタルギア正史」とでも言うべき正統シリーズに連なるものではなかった。だが、今回の「MPO」は、2004年発売の「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」から続く物語であり、ファンが待ち望んでいた正統シリーズ作品となっている。
そして、物語は原点へ
今作は、前作「METAL GEAR SOLID 3」から6年後の、1970年の物語。主人公であるアメリカ特殊部隊員ネイキッド・スネークは、かつての功績から救国の英雄として讃えられ、“BIGBOSS”の称号で呼ばれながらも、現在は除隊し、一線を退いていた。
ところが、ある日スネークは謎の集団によって拉致され、南米コロンビアのサンヒエロニモ半島の軍事施設に監禁されてしまう。その後、施設を脱出し、かつての仲間に連絡を取った彼が知ったのは、古巣である特殊部隊「FOX」の一部が反乱を起こし、米軍の機密兵器を奪取して何かを画策しているらしいということだった。しかも、その反乱の首謀者として、スネークに容疑がかかっているという。現在の情勢では、通常の方法で自らの嫌疑を解くことができないと知ったスネークは、自ら事件を解決することを決意。戦いを開始する。
しかし、反乱部隊は、祖国に見捨てられたソ連軍駐留部隊を指揮下に置いており、とてもスネーク単独では対抗できそうにない。そこで彼は現地で協力者を確保し、即席部隊の指揮官となって活動することになるのだ。
そんな「MPO」のストーリーのポイントとなるのは、第1作のメタルギアへとつながっていく物語の流れだ。本作の主人公であるBIGBOSSことネイキッド・スネークは、シリーズ1作目および2作目の事件(本作の事件から25年後以降の物語)の黒幕であり、1作目以降の主な主人公であるソリッド・スネークの前に敵として立ち塞がる人物だ。
前作で、兵士という存在のあり方について考えさせられることになった彼は、さらに今作の事件を通して、国家や世界に対する疑念を抱くことになる。作中では、その後のBIGBOSSの部下や同志となるキャラクターなども登場しており、長年のシリーズファンには、特にうれしい限りだろう。
PSPで味わう、正真正銘のメタルギア
「MPO」の基本的なゲームシステムは、これまでの「METAL GEAR SOLID」シリーズのものが受け継がれている。多くの敵が存在するフィールド内を移動し、さまざまなアクションを行ったり、アイテムを手に入れたりしながら、あくまで隠密裏に任務を達成することを目指す。各ミッションの目的は、特定のポイントへの到達や、決められたアイテムの入手、あるいは施設の爆破などさまざまで、そうしたミッションをひとつひとつクリアしていくことでストーリーが進んでいくのだ。
ただ、どんな任務であれ、多くの場合にプレーヤーに課せられるのは、スタート地点から一定のポイントまでを、いかに敵に発見されることなくスマートに移動するかということ。逆に、それ以外にはほとんど制約がないので、どんなルートをたどるのか、どんな武器や装備を持っていくのか、障害になりそうな敵を無力化しながら進むか、あるいは、あくまで干渉せずにかわしていくかなど、プレーヤーの腕や好み、また、その時々の状況などに応じて、プレイ内容を自由にアレンジすることが可能となっている。その点が、このシリーズの面白いところであり、難しいところでもあるのだ。
もちろん、最終的に目的を達することさえできれば、敵と派手に撃ち合いながら進んでも構わない。しかし、スネークは潜入作戦のエキスパートではあっても、ランボーのようなワンマンアーミーではない。何十人もの敵を相手に正面からぶつかっても、勝ち目は限りなく小さいだろう。
では、あくまでスマートに任務を達成するにはどうすればいいかというと、注意力や判断力、忍耐力なども重要ながら、やはり、さまざまなアクションを状況に合わせて使いこなしていくことが第一となる。
移動速度は遅くなるものの、足音が小さくなって敵に発見されにくくなる「ストーキング」、地表を這って狭い隙間などもくぐれる「ホフク」、崖などにぶら下がったまま移動する「エルード」、壁に沿って隠れながら動く「張り付き」など、移動だけでも、地形や周囲の敵の動きに応じていくつものパターンを使い分けていく必要があるし、移動以外にも、壁を叩いてわざと物音をたて、敵を誘導したり、ロッカーの中に隠れたりと、選択肢となる行動や、利用できる状況は数多い。「この状況なら、これをやるのが正解!」という行動は無く、プレーヤーの創意工夫によって、いくらでも行動の幅が広がるのだ。
そして、さらに微妙な判断やアクションの使い分けが必要になってくるのが、敵に対する場合だ。一番理想的なミッションクリアの仕方は、敵に何の干渉もしないまま終えることだが、多くの場合、なかなかそうもいかない。ある程度の敵は、何らかの方法で無力化しながら進んだ方が楽な場合が多いからだ。
主な無力化のパターンには、殺害する、気絶させる、眠らせるという3つが存在するが、殺害のためには格闘したり銃器を使用する必要があるため、周囲に気づかれやすく、うまくやらないと逆に窮地を招く原因になりかねない。また、眠らせるためには、麻酔銃を使う必要がある。これは音も小さく便利な武器だが、弾薬には限りがあるため、そういう意味では「首絞め」によって気絶させるのが最良の手段と言える。
首絞めを行うには、背後からのストーキングによって相手に気づかれずに接近し、適切な間合いで攻撃ボタンを押して、まず「拘束」状態にしなければならない。そして、そこから攻撃ボタンを連打することで、首を絞めるのだ。相手の移動パターンを計算した上でのストーキングや、その後の間合いの取り方などは、コツが掴めるまで失敗することも多いが、慣れてしまえば大概の敵にはこれで対処が可能となる。是非とも習熟しておきたいアクションだ。
さらに、敵を拘束した状態からは、首絞めだけでなく、引き倒したり、盾にしたり、尋問したりといろいろなアクションへと派生できる。また、ストーキングで接近した場合も、拘束するだけではなく、投げ倒したり、ホールドアップさせるなど、やはり別のアクションに移ることが可能だ。これらの行動を自在に使いこなすのはなかなか大変だが、マスターできれば、よりテクニカルで効果的な立ち回りができるようになるはずだ。
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