8年の歳月が流れても、その感動は色あせない──泣きゲーの金字塔をPSPで遊んでみました:「Kanon」レビュー(2/2 ページ)
“泣きゲー”というジャンルを確立させた元祖である「Kanon」がPSPで登場した。オリジナル版は8年前の作品だが、今遊んでも泣くことができるのだろうか!? 泣きゲー好きの筆者がプレイしてみました。
今も昔も、泣ける話は泣けるんです
今回「Kanon」をプレイして、最初のうちは「そんなに泣けないのでは?」と思っていた。しかし、その予想は見事に裏切られる結果となった。
最後までプレイして、泣いた。ボロボロ泣いた。えぇ泣きましたとも! あゆシナリオには泣かせてもらいました。ネタバレになるので詳細は語らないが、終盤でとてつもなく印象に残るあゆのセリフがある。この一言に込められたあゆの想いを考えると、……もう涙腺が緩みきってしまい、泣いても泣いてもとめどなく涙があふれてきた。思わず「この展開はずるい! ずるいよ開発者さん!!」と内心毒づいてしまう。レビューを書かなくてはいけないのに涙が止まらないのだ。
しかし、あゆエンディングの余韻に浸りながら、ある疑念が浮かんだ。「本当に5人全員泣かせるエンディングが待っているのだろうか? あゆだけ特別に泣かせるシナリオになっているのでは?」と変に疑いだし、2周目は、あゆが泣けると言ったライターにまた助言をもらい、次に泣けるヒロインは沢渡真琴(さわたりまこと)だという情報を得て、真琴を攻略することにした。
メッセージは「環境設定」より、一度読んだテキストをスキップする「既読のみ」と全てのテキストをスキップする「既読無視」が選べるので、それを活用してクリア。結局、真琴シナリオでも泣いてしまいました。特に印象的なのが、終盤での水瀬親子と祐一、真琴の掛け合い。血はつながらなくとも、家族をほうふつとさせる関係に、ただただ涙。
8年前はどうか分からないが、あゆのシナリオも真琴のシナリオも、今となってはありふれたオチと言える。しかし、話の展開や、キャラクターたちのセリフといった演出が絶妙なのだ。Keyの楽曲についてはコチラでも触れているが、音楽もやはりよい。シナリオ後半は夢中になり、“泣きゲーに今も昔も関係ない”ということに気づいた。泣きゲーは、どれだけ時間が経とうと、いつプレイしても泣けるのだ。
泣きゲーにも萌えはあるの?
本作は泣けるのか? という点に集中しすぎて危うく忘れるところだったが、本作は美少女ゲームであり、萌えゲー。そして筆者は萌えゲーレビュアー。ならば萌える部分を探すのが、筆者の務め。というわけで、登場するヒロイン5人を、筆者の独断と偏見で、星5つからなる萌え度で評価してみた。
月宮あゆ CV:堀江由衣
- 萌え度:★★★★☆
たいやき好きの明るいドジっ娘で、羽のついたリュックとミトンの手袋、そして“うぐぅ”という口癖が特徴的。特にこの口癖は、本作をプレイしたことがなかった筆者でも、よく知っていたほど有名なセリフだ。暗い場所や幽霊といったホラー系がダメで、深夜のトイレにいけないというエピソードはかなり萌えた。
水瀬名雪 CV:國府田マリ子
- 萌え度:★★★☆☆
祐一の幼なじみにして、従姉妹でもある名雪。同年代の女の子と一緒に暮らすというシチュエーションが、なんだかエロイなぁ。だが、名雪や母親の秋子の言動を見ていると、そんな劣情も吹き飛んで、ものすごく癒される。また大のネコ好きで、野良猫を追いかけるシーンの「ねこーねこー」というセリフには萌えた! 萌えと癒しのサブミッションですね。
沢渡真琴 CV:飯塚雅弓
- 萌え度:★★★☆☆
祐一を恨んでいるということだけ覚えている、記憶喪失娘。他のヒロインを攻略中の時は、なにかとちょっかいをだしてくるのが邪魔に感じてしまう。しかし、真琴ルートに入ると、イタズラから、徐々に甘えに変わりはじめるのだ。その過程がたまらなく萌える。もしかしたら、今で言うツンデレなのかもしれない。真琴が履いているボーダーの靴下が、なんだか1990年代っぽく感じるのは筆者だけ?
美坂栞 CV:佐藤朱
- 萌え度:★★★★☆
祐一の後輩で、体が弱いため学校をよく休むヒロイン。“病弱”という設定が、泣きゲーにぴったり当てはまりすぎて、若干“狙ってる”感が否めない。でもニーソックスがまぶしい。この頃だと、今のように“エロかわいいから”という理由で、若い女性を中心にニーソックスブームが起きるとは思っても見ないだろう。“絶対領域”なんて言葉も、まだ使われていないはず。ニーソックスを考えた人に国民栄誉賞を送りたい。
川澄舞 CV:田村ゆかり
- 萌え度:★★★★★
筆者的最萌え賞は川澄舞。彼女の魅力は、もう声! 声が最高! 普段から無口な舞が、時折しゃべると、その一言一言が貴重に思えてきてしまう。夜な夜な学校に忍び込んでは魔物を倒すという設定とミステリアスなシナリオは、筆者にとって実はどうでもよく、ただ舞と普通の日常を送りたい。舞と一緒に登下校して、一緒に昼ごはんを食べて、そんな妄想をレビュー中ではずっとしてました。はしを口にくわえつつ「……タコさんウィンナー」と言いながら物ほしそうにこっちを見てきたら! もうその場で転がりながら悶えます。
終盤で魅せる展開が秀逸
個人的に、泣きゲーというジャンルの土台を作り上げた記念碑的作品なだけあって、プレイして変に感慨深いものがあった本作。美少女ゲームとして見たら割と普通だが、泣きゲーとしてなら文句なく泣かせてくれるので、まだ泣きゲーをプレイしたことがない人には、オススメできる作品だ。ただ、PSPの“ジーッジーッ”というロード音が、ちょっと耳障りかもしれない。
気をつけてほしい点は、うっかり電車内などでクライマックスを迎えると、とても恥ずかしい思いをしてしまうかもしれないことだ。お外で本作を遊ぶ場合は、人通りの多い場所で泣いてしまわないよう、注意してほしい。
Kanon | |
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発売日 | 2007年2月15日 |
ジャンル | 恋愛アドベンチャー |
機種 | PSP |
価格(税込) | 5040円 |
CERO | B区分(12才以上対象) |
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