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くねくねハニィが語る日本と欧米のゲーム作りの違いくねくねハニィの「最近どうよ?」(その11)(2/3 ページ)

自宅前ですっころんで3針も縫う怪我をしたボケボケのくねくねハニィが語る「最近どうよ?」。今回は、PCゲームソフトの存在が大きい欧米開発現場と、家庭用ゲーム機向けソフトが主流の日本のゲーム制作の違いについてボケずにきびきびと語ってみたんでよろしこ。

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承認承認承認!

 また、縛られているのはスペックだけではないのよね。品質や倫理に関してプラットフォーマー(ハードウェアメーカー)からの制約がある。まず、ゲームを開発する前のおうかがいである「企画承認」(コンセプトアプルーバルといいます)、そして開発最終工程である「マスター承認」。これがないとそのハードウェアでは発売できないわけで、ソフトを作る人や売る人の独断で開発から発売までできるわけではないのですな。ここがPCとの大きな違い。こういう観点で見ると、品質や倫理もひっくるめてパブリッシャーが自らの責任でソフト開発、発売できるPCは、自由度の高いプラットフォームと言えましょう。

 だからこそプラットフォーマーからお墨付きを受けている家庭用ゲーム機専用ソフトは、品質的に安定感があったわけですね。ほとんど誰の制約も受けていないPCゲームソフトは、ユーザーにとっては「買って遊んでみないとおもしろいかわからない」物だったし、コピー、返品、マークダウンリスクに備えているため、とても「高額」なものだったのね。ちなみに欧米で映画ライセンスなどの「版権」ものに頼る傾向は、ここからきているのかもしれないね。ユーザーに対して安心感を与えるためにも、パブリッシャー側としてはビッグネームが必要だったわけですな。

 せっかく世に出そうとしてもプラットフォーマーという門番のOKが出ないと発売すらできないこともある家庭用ゲーム機向けソフト。日本で発売されている、つまり承認されているソフトだからといって、必ずしも欧米で発売できるとは限らないのですよ。倫理観や品質は市場によって違うから、そのエリアを統括する法人(SCEならSony Computer Entertainment America、任天堂ならNintendo of Americaなど)に改めて申請をしなければならないのね。せっかくワールドワイド向けに作ったつもりのソフトも日本のみの発売だった、なんてことはよくある話なんですよ。厳しいよねぇ。

 逆も然りで、欧米のソフトが残虐すぎて日本で発売できないとか、内容変更を余儀なくされるとか、よく聞く話だよね。日本市場が欧米市場に負けないくらいの大きさだったときには、欧米のパブリッシャーがこぞって日本攻略を図っていたけど、成功の声を聞く前に、彼らにとって日本市場がそれほど魅力的でなくなってきたのか、「異質」と捉えられてあまり相手にされなくなってきた感があるのはハニィはとっても悲しいぞ……。

職人気質があだになる???

 世はまさにハイスペック時代。家庭用ゲーム機は「ゲーム機」でありつつも、PCの能力へと近づいています。しかしながら制約はつきまとい、コストは高額になるため、ソフトメーカーはマルチプラットフォーム化を余儀なくされる時代になったのですね。ここに日本のソフト開発の落とし穴が待っていた! 家庭用ゲーム機以外に逃げ場がなくなってしまっているじゃない! 日本にはPCゲームソフト市場は家庭用のものほどないし、PC向けに開発する人よりも、家庭用ゲーム機に向けてだけ作っていた人たちが多いんだから。限られたスペック内で最良のものを作り出す「職人気質」な日本の開発陣だけど、スペックが上がったときに、コスト高も含めてどう対応するのか?

 ゲームソフトをマルチプットフォームで展開するにあたっては、スペックの高いものから作って下位機に落とし込むというのが効率的な流れだと思うんだけど、欧米の場合は、まずPC向けに作ってからXbox 360やPS3などのハイスペック家庭用ゲーム機向けに落とし込むという流れが一般的なの。日本にいるとあんまり気がつかないんだけど、欧米では、家庭用ゲーム機向けのタイトルがPC向けでも作られていることはごくフツーのことで、万が一家庭用ゲーム機のさまざまな制約によって発売できない場合でも、PC向けは自由に販売することができるのだよ! また、家庭用ゲーム機向けに販売してコケた時にも、PC向けである程度販売できれば、トータルのソフト開発の回収も難しいことではないのですな。

 結果的にはアプローチが正反対である、ということが言えますね。高スペックのPCソフトを制約のある家庭用ゲーム機に移植していた欧米のソフトメーカーと、制約のある家庭用ゲーム機向けに精一杯作っていた日本のソフトメーカー。特にXbox 360なんかでは、PCソフト開発資産はほとんど生かせるわけで、欧米のソフトメーカーが台頭してくるのは当然のこととも言えるよね。コストの面でも欧米ソフトメーカーからすると日本のソフトメーカーに比べて「単に上がる」とも言えないのよね。むしろ作り直していた部分がそのまま使える、とかいうメリットもあったりして。

 これも余談ですが、現在の欧米ソフトメーカーは、効率を考えて、PCソフトからまずXbox 360向けに移植、それからPS3やその他のハード向けに移植するのがスタンダードになっているようですね。PS3は本来のスペックをフルに活用してもらうためにももっと存在感を上げていかないといけないと思うの。効率よりもPS3で先に売ったほうが利益率が高い! という状況になればソフトメーカーだってPS3から作ってくれるはずですから!

ネットワーク対応の遅れ

 PCゲームソフトを機軸に開発を行ってきた欧米のパブリッシャー/デベロッパーがネットワークに強いのは当たり前と言えるよね。MMORPGやRTSなどのマッシブなネットワークゲームは、ずいぶん前からPCの世界では大きく展開されていたわけだし。それに伴うサーバなどのインフラも、物理的にもノウハウ的にも現在の家庭用ゲーム機向けのネットワークの元になったことは間違いがないのだ。日本では対応が難しいと言われていたプレイステーション 2のネットワーク対応も欧米のメーカーさんたちは難なく(実は大変だったと思われますが)こなしていたわけですね。

 ネットワークがなかった、または制限されていた家庭用ゲーム機向けだけであれば、ネットワークをふんだんに盛り込んだソフトを作ることはリスクでしかなかっただろうけど、PC向けならその制約は取っ払われるもんね。日本で「ネットワーク機能つき」というと、ネットワークにつないでも遊べる(裏を返せばスタンドアローンがメイン)、ってことでしかなくて、アイテムダウンロードやランキングのアップロードくらいがメインだったけど、欧米では思い切ったネットワーク機能がつけられてたのよね。これもPC向けで最初からネットワークありきのゲームを家庭用に落としこんでいるので、単なる付加機能としてのネットワーク対応ではない。

 スタンドアロンを前提としていた日本の家庭用ゲーム業界においては、この急激な対応についていけなかったのもやむを得ないと思うの。歴史が違うもんね。欧米が持つネットワークインフラは彼らの試行錯誤の結晶でもあるわけだし。このネット対応に遅れた日本のソフトは家庭用ゲーム機向けにいよいよ厳しい時代を迎えることになったと言えます。

 そんな中、カプコンが北米でXbox 360向けに発売した「LOST PLANET EXTREME CONDITION」は、オンラインを駆使したすばらしいタイトルで、北米のコアユーザーに向けて60万本も売り上げてくれました(2007年4月末現在)。「日本のゲームはネット対応が下手」というレッテルを払拭してくれた歴史的なタイトルだと思うハニィであった。

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