システムソフトウェア1.80でPS3は何が変わったのか――PS3システム開発担当 川西泉氏インタビュー(2/3 ページ)
システムソフトウェアが1.80にバージョンアップされ、さまざまな機能向上が実現されたプレイステーション 3。それら新機能の詳細を、ソニー・コンピュータエンタテインメントの川西泉氏に聞いてみた。
リモートプレイは、前提として設計されていれば全てのタイトルで実現可能
――リモートプレイに関してですが、リモートプレイでの制限事項のようなものはありますか?。基本的にリモートプレイでやっていることはPS3からPSPへの画面データの送信と、PSPからPS3へのキー入力情報の送信のみだと思うので、やろうと思えば全タイトルでリモートプレイに対応できそうな気がしますが。
川西 理論上は対応可能と言えますが、現状は全ての場面で動くとは限らない状況です。リモートプレイを実現するには、PSPに(画面情報を)転送するためにエンコーディングを行いますが、そのためのパワーをSPE(Synergistic Processing Element、Cell Brordband Enginel内のプロセッサコア)を1個使って確保しています。その余裕がゲームソフト側に必要なので、現時点では全編通しての動作保証が難しいと言えます。
――逆に言えば、初めからパワーを空けておけば大丈夫ということですか。
川西 ええ、そうですね。ソフト開発の際にリモートプレイに対応することを前提に作っていただければ、外からでも遊べるようになります。
――現状で、リモートプレイを快適に楽しむためにはどの程度の通信速度が必要になりますか。
川西 部屋の中と外出先からとでは確保できる帯域が異なるので、同じように遊ぶというのは難しいと思います。現状では、屋外からつなぐ場合にはボタンのレスポンスも考慮してビットレートは標準で低い方に合わせており、画質は落ちますがレスポンスはそれなりに使えるように調整しています。逆に部屋の中では屋外ほど帯域を考慮しなくていいので、ビットレートを上げて映像を出すようにしています。
――あと、「Wake on LAN」(LAN経由での電源投入)のような仕組みは実現可能だと思いますが。
川西 その機能が実現できればユーザーの方々の使い勝手が向上するので、検討はしています。
――では、逆方向のリモートプレイのようなことはできませんか?
川西 その場合は、PSP側にエンコーダを乗せないといけなくなりますけど、さすがにPSPにはそこまでのパワーはないですね。ゲームを動かしながら、その余力で画面のエンコーディングを行って無線で飛ばすというのはPSPではできないので。Cellを入れれば良かったかな、という感じですが(笑)。
――そういった処理をPSP側でやらずに、UMDから読み出したデータをそのままPS3に転送して、必要な処理を全てPS3側で行わせるという方法であれば実現できませんか。
川西 (PSPの)完全なエミュレーションみたいな感じですね。UMDの転送レートで帯域が保証できればやれるかもしれませんが、技術的なハードルは高そうです。
――PSPとPS3をUSBケーブルで接続して、PSPをUSB接続のUMDドライブとして扱うようにするとか。
川西 そういうのはあり得るかもしれませんね。ただ、PSPは今333MHzで動作するので、Cellでエミュレーションするにしてもそれなりのパワーがいるんですよね。今後の課題ですかね。
本当はファイル共有をやりたい
――DLNAに対応したのは非常に興味深いのですが、なぜストレージデバイスを接続してデータを表示・再生させるだけでなく、ネットワーク経由での表示・再生をサポートさせようと思ったのですか?
川西 さまざまなメーカーがDLNAをサポートしてきている中で、そういったネットワークが家庭内に普及するならPS3を使ってほしい、という発想からサポートしました。ソニーの製品にもDLNAをサポートしているものがたくさんありますので、PS3がDLNAに対応すれば、それらをつないで活用して、それによって普及できると考えています。
――対応フォーマットは、現状で映像ではMPEG 1/2、H.264(MPEG4 AVC)などですが、これらの拡充はありますか。
川西 サーバ側の対応もあるので、サーバ側が送り出せないデータには対応できません。でも、その対応の範囲内であれば、PS3側で制約をかけるつもりはないので、PS3で対応できるものであれば対応たいと考えています。
――逆に、PS3がサーバになる、というような構想はありますか。
川西 それも良く聞かれることです。これもリモートプレイと同じで、まずゲームをプレイしている時に(サーバを稼働させるの)は難しいですよね。そういう制限が付いてしまってサーバの機能を果たすのか疑問、というのが1点。もう1つは、PS3はチューナーを持っていないので、放送コンテンツを貯めるにはあまり向いていません。そういうことを考えると、現時点では、別の場所に貯まっているコンテンツをTVに1番近い場所にあるPS3で受け取って出力する、という方が使い勝手としていいのかな、と思っています。
――せっかくHDDを搭載していますし、データのダウンロードもできるので、サーバとしても使いたいと考えている人はいると思います。チューナーを持っていなくても、ダウンロードを基本としたサーバ、と考えると十分に魅力的だと思います。
川西 ダウンロードコンテンツとしてもっと映像が増えてくれば、それはあり得ますね。ただ、ダウンロードしたコンテンツを何で見るかということになると思いますが、PSPを使うとすると、リモートプレイでいいですねということになっちゃうので(笑)。我々はもともとファイル共有をしたいという気持ちのが強いんです。これは音楽や映像に限った話ではなくて、どんなファイルでもネットワーク上で見られる、というのが本当にやりたいことです。そういった意味ではSamba(UNIX系OS上でWindows系OS互換のファイルサーバを実現するソフト)でも良かったですが(笑)。
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