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完全新作で戦場の再現を目指す、ω-Forceの新たなるチャレンジ「BLADESTORM 百年戦争」開発者インタビュー(1/2 ページ)

「真・三國無双」シリーズでおなじみのコーエー開発チーム「ω-Force(オメガフォース)」が、満を持して送り出す「BLADESTORM 百年戦争」。“鎧袖一触(がいしゅういっしょく)”という新たなコンセプトの元、今までにない爽快感を与えてくれるというこの完全新作について、チームを代表して鈴木亮浩氏に話をうかがってきた。

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“鎧袖一触”がかつてない爽快感を生む

 8月30日に発売を予定しているプレイステーション3用アクションゲーム「BLADESTORM 百年戦争」。歴史物に強いコーエーらしく、今回も過去の戦争にスポットを当てた、壮大なバトルが楽しめる作品だ。ちなみに発売日は未定ながら、Xbox 360版も発売が予定されている。

 本作の舞台は、「真・三國無双」や「信長の野望」シリーズのようにアジア史ではなく、中世ヨーロッパの百年戦争が舞台。プレーヤーは1人の傭兵となり、百年戦争という大スケールの戦いに身を投じていく。

 百年戦争は、フランスとイングランド間で発生した戦いだが、主人公はどちらかの陣営に所属するわけではない。あくまで傭兵として、その時々の戦いに応じて、所属する陣営を変えていくのである。

 さて、コーエーと言えば「無双」シリーズのイメージが強いが、本作は開発が同じω-Forceながら、まったく別の作風となっている。主人公1人で戦うのではなく、戦場の“部隊”を率いる指揮官として戦い、部隊単位で行動するからだ。通常攻撃は基本的にオートで行われるため、より戦略もしくは戦術に特化したゲームに仕上がっているようだ。

 今回は、そんな「BLADESTORM 百年戦争」がどのようにして生まれたのか、コーエーの開発陣に直接聞いてみた。

常に新しいモノを作ってきた自負

コーエー 執行役員 ソフトウェア事業部 ソフトウェア1部長 鈴木亮浩氏

―― 2005年9月に行われた新作発表会で「今までにないアクションゲームを作る」とお話されていた作品が、ようやく完成しましたね。

鈴木亮浩氏(以下、敬称略) ええ、最初に立てたコンセプトどおりのモノ、目指していたモノがそのまま完成したという感じです。

―― コーエーといえば、今や「真・三國無双」シリーズが有名です。このシリーズの新作ではなく、あえてゼロから新作を作成した、その理由を教えていただけますか?

鈴木氏 ω-Forceは元々、新しいモノを作るチームだったんです。弊社初の格闘ゲーム(プレイステーション用として登場した「三國無双」のこと)を作ったのもウチですし、マイナーですが「デストレーガ」という対戦アクションゲームも作りました。その後に「真・三國無双」を開発した……というように、すべて新しいモノを作ってきたんです。「真・三國無双」がヒットし、ユーザーさんから続編が望まれたこともあって、プレイステーション 2ではシリーズ物が多くなりましたが、新作を作ろうという意識は常に前面にありました。だから今回、せっかくの次世代機なんだから新作で行こう、と。チーム本来の方針に戻ったわけです。

―― 開発は、PS3という新しいハードで苦労されたと思いますが。

鈴木氏 PS3だからとか、Xbox 360だからとかではなく、やっぱり新しいハードは、慣れるまでが大変です。頑張ればなんとかなるんですけど(笑)。実は、それ以上に大変なのは、シリーズものではなく完全新作ということです。当初もくろんでいたゲーム性を本当に出るのかが難しい。開発序盤は苦しみましたが、今ではコンセプトどおりのゲーム性が出せたと確信しています。本作の場合、全部の要素がそろってこないと、ゲーム性が分からないんですよね。ある部分ができあがっても、全体像が見えてこない。作ってる人間は「あと、コレとコレを組み合わせればこういう風になる」と予想できるのですが、テストプレイする人は完成図が予想できなく、それを理解させるのが苦労しました。

―― コンセプトのお話が出ましたが、今回は「真・三國無双」の“一騎当千”に対して、“鎧袖一触”という言葉を使われてますよね。これについてお聞かせください。

英国軍のエドワード黒太子を敬愛するイアマール

鈴木氏 “鎧袖一触”とは「触れただけで相手を倒す」といった意味です。リアルな戦闘を描いた歴史スペクタクル映画とかですと、戦場で大群同士がぶつかった場合、その最前線にいる兵士は一撃で死んじゃいますよね。普通、ゲームではそこまでリアルに表現されてはおらず、例えば「無双」シリーズなどでは立ち回りの面白さを追求してますので、ザクザクとありえないくらい斬られるようにしています。逆に本作では、そのあたりのリアルさを追求したかったのです。大群同士がぶつかったら、前線で兵士がバタバタと倒れていく……。そんな、実際の戦場の再現を目指して作りました。最終的には、きちんと表現できたのではないかと思います。

―― “鎧袖一触”には、“戦わずして勝利する”という意味もありますよね。ですから、自分も戦いはするんですけど、どちらかというと周りの人間をどう活かすかという部分が大きいのかな、とも思ってました。


鈴木氏 本作では、自分で部隊を操り、敵部隊を一撃でなぎ倒していく、というところに主眼を置いてます。部隊同士の相性がありますので、それを考えながら、自分で部隊を切り替えながら戦っていく、というのを楽しんでもらいたいですね。AI自体もかなり作り込んでいて、NPCが今までにないような動きをするので、しっかり戦場を表現できたと思ってます。このため、本来の遊び方とは外れてしまいますが、自分が戦わなくても──といった遊び方もできるとは思います。

―― プレーヤーにとっての爽快感はいかがでしょう?

鈴木氏 部隊の仲間(AI)がどういう行動をすると、プレーヤーが爽快感を得られるか、というのが重要です。騎兵ならこういう動き、弓兵だったらこういう動き、というのを兵科ごとに考え、それをいかに戦場の中に押し込んでいくかが難しかった。部隊を率いて、敵部隊を一撃でなぎ倒していくというのは、今までのゲームにはなかったと思うんです。敵も味方も、非常に大人数がいる戦場にて、一撃で敵部隊をなぎ倒していく……。「無双」シリーズと比べると、一段階大きいスケール感を楽しめると思いますよ。それと、今までのような“連打”ではなく、もうちょっとシンプルな操作で爽快感を味わえるようにしています。なので、アクションゲームファンだけでなく、ライトなユーザーにもぜひプレイしてもらいたいですね。

百年戦争

 フランス王国の王位継承をめぐるヴァロワ朝フランス王国と、プランタジネット朝およびランカスター朝イングランド王国との戦いを指す。通常、1337年11月1日のエドワード3世によるフランスへの挑戦状送付から1453年10月19日のボルドー陥落までの116年間の交戦状態のことを意味するが、異説も多々ある。いずれにしても、現在のフランスとイギリスの国境線を決定した戦争である。


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