コーエーの目指すエンターテインメントサービス戦略とは:CEDEC 2007
東京大学で開催されているCEDECの2日目は、コーエー松原氏の基調講演から始まった。松原氏はコーエーの戦略を簡単に3つの点にあると説明する。
東京大学で開催されているゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2007」(以下、CEDEC)2日目は、コーエー代表取締役執行役員社長COO・松原健二氏による基調講演「コーエーの目指すエンターテインメントサービス戦略について」から始まった。
松原氏は「信長の野望Online」、「大航海時代Online」、「真・三國無双BB」のプロデュースに従事し、2007年4月より独立行政法人情報処理推進機構未踏ソフトウェア創造事業プロジェクトマネジャーに就任している。
冒頭、来年創立30周年を迎えるコーエーの国内外の従業員数や事業内容に触れた松原氏は、世界の人々の心を豊かにする「世界No.1のエンターテインメント・コンテンツ・プロバイダー」になることであるとビジョンを改めて説明。「歴史シミュレーション」、「タクティカルアクション」、そして「オンライン」という3つのゲームコンテンツが柱であり、歴史モノを得意としていることを改めて紹介する。
昨年の家庭用ゲーム機販売本数では9位にランクインしているものの、増減比ではマイナスで1位の任天堂との差は10倍あまりと大きく開けられていると、2006年度の連結売上高を表示して見せ、自らを「負け組」だったと謙遜してみせる。
現在、ゲーム市場を取り巻く状況は、次世代機が発売されたとはいえ、PS3やXbox 360、Wiiなど、どれもいまだ1千万台にはとどいておらず、携帯ゲーム機のニンテンドーDSが約3千万台、PSPが約2千万を越えている状況。依然として1億台を越すプレイステーション 2が大きく締めている。また、ソフトの販売累計本数では、ニンテンドーDSを例にするとトップ10はすべて任天堂関連が締め、トップ30になってようやく10タイトルほどサードパーティのタイトルが顔を出す程度だと松原氏は解説する。
WiiとPS3のタイトル販売累計本数の比較でも、Wiiは任天堂のタイトルがやはり強く、サードパーティにとってはスクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔」がようやく50万本に届こうかというところ。PS3はサードパーティのタイトルが多く顔を出しているものの、基本的に本数が出ておらず、採算は取れていないと、サードパーティとして今後の戦略が重要だと3つの考え方を提示した。
曰く「事業ポートフォリオに基づく開発、コンテンツ・エクスパンション、グローバル展開」となる。
「事業ポートフォリオに基づく開発」とは、企業として分野別の投資配分を新世代機など新規チャレンジへの“挑戦”は元より、シリーズの新作などで“収益”を確保し、既存シリーズでの“改革”が必要だと呼びかける。また、多様化が進む市場に対応するためにもマルチプラットフォーム化や開発コストの削減は命題だと語る。
とはいえ、マルチプラトフォーム戦略も簡単ではないと松原氏。日本や欧米でのハード分布地域差への対応はもちろんのこと、新世代機――Xbox 360とPS3を比較してみても、同一CPU3個のXbox 360に対して、PS3はGPU1個にSPU7個のCellと異なり、開発者の慣れを含め、適応する開発環境の整備が急務なのだ。
また、デザインやプログラム、CG開発など次世代機への技術革新に対応すると、開発コスト削減がついてまわると松原氏。PS2とPS3を比べてみるとソフト開発費がPS2が1億円に対し、PS3が20億円と約20倍の開きがあり、採算分岐点も高くなると、一例を出して説明する。とはいえ、これはひとつの例に過ぎず、開発コストは開発工数の適応化でそれほど大きな開きを出さないように留めることもできると表で解説する。
開発コストおよび工数削減には開発環境の整備、特にミドルウェアをどう取り込んでいくかだとコーエーカナダでの実例を紹介する。コーエーカナダでは、アンリアルエンジンを導入したことで、ユーザーが直接確認できるグラフィックやAIなどランタイムとしての機能の充実や、マルチプラットフォームへの対応、そしてユーザーには見えないところでボトルネックの見直しをはかり、開発工数を減らすためのプロセスの見直しも容易だったと、国内がまだまだ遅れている点を挙げる。
コーエーとしては、家庭用ゲーム機の現行機であるPS3、Xbox 360、Wiiともに、PS2がそうなったように、どこかが全世界的にひとり勝ちになるということはここ数年はないと判断。地域によっての特性が出たまま推移すると見ている。こうした現状を生き残るためにも、いっそうのマルチプラットフォーム化およびグローバル化への道を推進していくものと思われる。いわゆる歴史モノを得意としているコーエーは、欧米においては新たな柱を創造し、国内外ともにタイトルラインアップの充実を命題としている。
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