デモクラタイズなゲーム業界へ!――2008年のGDCを総括:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その21)(3/8 ページ)
北米サンフランシスコで開催されたGame Developer Conferenceから1カ月。ようやくハニィが帰って参りました〜。とりあえず総括してみましたのでよろしこ〜。というか、なんで翻訳されているの?
カーツウェル博士のキーノートスピーチ
インベンター(発明家)兼フューチャリスト(未来思想家)であるレイ・カーツウェルさんのキーノートはすごい難しかったんですわ。「The Next 20 Years of Gaming」(ゲームの今後20年)ってはずだったんですが、実は「ゲーム業界がどうなる?」って話ではあまりなかったような……。きっと原稿を書かなきゃならないゲーム系ライターは苦悩されたでしょうなぁと同情していたら、あ、ハニィもだった、ガーンみたいな!
いろいろな産業において活躍する彼は、バイオの世界、燃料の世界、いや、すべての業界において、常に今後どのように発展、進化していくのかを考えているらしいのね。彼の意見によれば、現在の進化は若干の世界史の異変(戦争とか)による若干の影響以外は「通常進化」、つまり過去から見て予想した軌道上の進化であるとのこと。へー、実は「夢の○○」って場合の「夢」は実現可能なことだったんだなぁ、って思うとちょっとハニィのパラダイムもシフトしたような(横文字並べりゃいいってもんじゃないか……汗)。
「人間という生き物だけがバイオロジーに制限されるのを拒む種なのだ」って言葉通り、人間は自然の流れに身を任せることなく研究開発に勤しみ、進化を求めてる。生物学で言われる進化論と、人間が人工的に導き出す進化を加味して「通常進化」を予期できれば、未来がどうなっていてどういうものが必要になってくるかということを考えることができる、ってことなのかな。「成功の鍵は、タイミングです。プロジェクトはそれなりのリソースがあればそれなりの結果が得られるはずで、その確率は95%である。ただし、それらのプロジェクトは95%は失敗に終わる。なぜならタイミングが間違っているからです」。深いっすね〜。
特にコンピュータや携帯電話などのデバイス群は、今後さらに低価格かつ高機能で小型化という目覚ましい発展を遂げるでしょう、って言ってたけど、もっと小さくなるんだ……。置き忘れそう、などと不謹慎なことを考えつつ、彼が何を言いたかったのか、と考えてみた。「このデバイスにパワーを与えるのは『ソフトウェア』です。ただし、このソフトウェアも、ソフト開発者がデバイスの進化を予期して設計しなければ意味がない」。やっと分かってきたぞ〜。そうか! ゲーム開発をするにしても一緒で、開発を開始して世に出るまでの期間は長く見積もって2年くらいだけど、そのたった2〜3年後の世界であっても、今現在とはデバイスそのものやその環境が違っていることを適切に予測すべきであるってことですな。
ただし、クリエイティビティと技術進化の話はある意味相反するものなので、すべてがこの論理にあてはまるものではないとも思うのね。一概に未来だけ見てろってのは乱暴な話だとハニィは思う。ここでは、デバイスやその環境という物理的なインフラのことを言っているだけですからね。
最後に付け加えておくと「クリエイティビティのツールはデモクラタイズされるべき、また、制作や生産に関するツールもデモクラタイズされるべきである」と博士は言ったんだよね。出たよ、「デモクラタイズ」! 前日のマイクロソフトのキーノートと被ってるし。ソフト供給側にも未来を予測する能力が問われると同時に、デバイス(ハード)側での未来予測能力とオープン化が求められてるってことね。ある程度の開放がないと、通常進化も滞りがあるってことなのでしょうかね〜。ハードメーカーさん、よろしくお願いしますね!
セッションとアワードは盛況! 日本離れは鮮明
60分刻みで行われていたセッション、とても盛況でした。セッションが始まる前に並ぶ列の長さも例年より長い気がしましたよん。帰国後、史上最多参加者と聞いて納得。ホント、人が多くて大変でしたよ。サンフランシスコのある一角は、ゲーム関係者だらけって感じでした。ただ、キーノートも任天堂やSCEなど日本からの参加がなかったことや、例年に比べると若干ながら日本からのセッション講師が少なかったことが影響してか、日本人率は昨年に比べて低かったと感じましたわん。
これらのセッションは会期中、ビジネス面、制作面、その他制作パーツ(プログラム、サウンド、グラフィックなど)面などなどテーマ別のセッションに分かれてたくさん行われてました。有名クリエイターやその関係者が招待されて、質疑も含めた講義がいろいろなところで行われていましたよん。また、ラウンドテーブルと言って、いわゆるパネルディスカッションですが、これもたくさん行われてましたね。ま、必ずしも実になるかと言えば、ぶっちゃけこれだけあるんで、良いものもふーん……なものもありました。
ハニィが見に行った「MMOの将来」(「MMO」に関しては、通常の「最近どうよ?」で今後触れていく予定なのでお楽しみにっ!)ってラウンドテーブルでは、 EA、Blizzard、Nexonから夢の競演? と思いきや、やっぱしけん制しあってるのかなぁ、それとも「MMO」って枠でくくるにはあまりに色が違うのかなぁ、時間を大きく余らせてた(笑)。60分中30分くらいでディスカッション(しかも平べったい……笑)は終了、質疑にたくさんの人が並んでいたのが印象的だった。
日本からの講師も複数招かれていて、もちろん盛況でしたけど、残念ながら立ち見まででる「Assassin's Creed」などの講義とは印象が違いましたね〜。日本人講師のセッションではやはり日本人率が高い。いわゆるクリエイティビティのところでのセッションは日本から学ぼうという姿勢も少なからずあったんですが、ビジネス面やテクニカル面でのセッションがほとんどないことを考えると、ちょっぴり危機感を感じたりして。
アワードで日本勢のノミネートが2つだけだったってのも会場にいて悲しい気持ちになりましたね……。第8回Annual Game Developers Choice Awardが会期中のど真ん中、現地時間の2月20日(水)に行われたんですが、ノミネート段階で日本勢はほとんど名前を聞くことがなかったし、「The Legend of Zelda:Phantom Hourglass」はベスト携帯ゲーム機向けゲームソフトとして表彰されたものの、あれ〜? アワードってこんなんだったっけ?と思わせるほどでしたね……。
今回アワードを総ナメと言った感の開発会社Valve。ある意味、北米では知らない業界人はいないかも。「HalfLife」シリーズの会社ですが、北米の会社だけがフィーチャーされるようになったのかと言うとそうでもなくて、フランスや東欧の会社が名を連ねてノミネートされてたりして、ゲーム機としてPCやXbox 360が出回ってない日本市場では触れられる機会がないって意味では、日本とのさまざまな乖離を浮き彫りにしにくい状況になってるなと。
また、さらに大きな溝が日本と欧米の間に生まれてしまった気がするのはハニィだけだといいな……。
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