「イース」シリーズの名作がニンテンドーDSに:「イースDS」「イースII DS」レビュー(2/2 ページ)
イースシリーズといえば、日本ファルコムの看板タイトルの一つとして君臨する名作だ。中でも1、2作目は評価も高く、さまざまな機種に移植されている。今回取り上げるのは、NDSに移植されたバージョン。果たして出来はどうなのか? PC版からずっとイースをプレイしているという友人の意見も交えてお届けしよう。
BGMもPC版ライクな仕上がり
「イース」シリーズのファンならば誰もが気になるBGMの出来栄えだが、Windows版から比べると、残念ながら疑問符が付いてしまう完成度に思えた。ところが友人曰く、PC版ライクで思いの外に高く評価できる出来栄えだという。もちろん、ハードの限界からWindows版のような音楽を望んでも無理なのは分かってはいるものの、PC版に近い完成度になっているとは思わなかった。ある意味、昔のファンに訴求する部分になっていることは間違いないだろう。しかも、一度ゲームをクリアするとメインメニューに「MUSIC MODE」が現れ、ここで収録曲+俗に言われるボツ曲までを自由に聞くことができるのだ。これこそ、イースらしいオマケモードかもしれない。
ただ通常のBGMと比べて、アイテムをゲットした時の曲が若干こもっているように聞こえたのが気になった。BGMは内蔵音源で、アイテムゲットの曲のみWindows版から収録してmp3などで流しているのでは? と思ったのだが、あくまでも個人的な聞こえ方による差異かもしれないので、よほど気にする人以外は無視しも大丈夫だろう。せっかくなので、「イースDS」「イースII DS」のBGMをセットにした音楽CDなども、是非発売してほしいところ。ゲームだけで完結させるには惜しい、そう思わせる曲だと思えた。
全体的には忠実な移植だが、残念な部分が目立つのも事実
こうして各所を考察しながらクリアまでプレイしたが、全体的に基本に忠実な移植であることが非常によく分かった。例えば「イースDS」では、ダームの塔に入る前に上限レベルに達してしまい、後はアクションゲームとも言える展開になるが、本作も同じスタイルを採用している。これなら、シリーズをプレイしている人にとっては違和感のない仕上がりと感じられるだろう。マップもほぼ同じだし、ストーリーやトラップの類なども変わっている部分は見受けられなかった。まさに「ファンなら安心してプレイできる」移植度だ。もちろん、イベントシーンもWindows版そのままの、顔グラフィックが大きく表示されるスタイル。イラストも同じようなので、違和感なくプレイできた。
ただし、いくつかの部分に関しては、不満の残る作りになっているのも事実。「イースDS」では、十字キーを押しっぱなしにしていても、場面が切り替わると再び押し直さないとキャラが動き出さないのだ。これが思った以上にプレイアビリティを下げていて、途中でイライラしてしまった。
また、なぜかは分からないが「イース」「イースII DS」ともに、敵を倒した時に金袋または薬草を落とすようになっている。そのため、距離を取って敵を倒したり、敵の密集地帯に金袋が出た時などは、回収できないことが多い。正直言って、この変更には全く意味を見出せなかった。これなら、オリジナル版と同じ処理にした方が、明らかに親切だと思うのだが……。さらに、レベルアップした時のエフェクトがチープだったり、一部のデカキャラのデザインがPC版よりセンスなく見えたりと、元が良いゲームなだけに余計アラの部分が目立った感があった。
もっとも、これはゲーム自体が面白いから際だってしまうのであり、今挙げた部分によりゲーム性が顕わしく損なわれてしまうことはないとは思う。逆に、PC版やWindows版と比べて、思わず「おっ!」と言ってしまったのが、ザコなのにデカいキャラ。ボスキャラ並みのデカさがあるので、迫力は十分。これは面白い試みだと思った。
なお「イースDS」「イースII DS」の中で、唯一オリジナルとなるのが、「イースDS」のバギュ=バデットでの戦いだ。ワープを何度か繰り返しながら先へと進んでいくのだが、マップを見ながらならば迷うこともないので、非常に簡単。また、オリジナルのボスキャラも登場するのだが、「イースDS」「イースII DS」を通してもボスキャラがどれも弱すぎるため、ほとんど印象に残らず倒してしまった。せっかくのオリジナル要素なのだから、もう少し頑張って欲しかったところ。
ボスに関してはもう1つ、ダルク=ファクトの戦闘シーンは、もっと頑張ってほしかった。敵の攻撃は友人が見せてくれたPC版より迫力がないし、剣を振って攻撃するため連続して「ガガガガッ」という感じでダメージを与えられず、爽快感が全くなかった。ただ、しつこいようだが、この辺の言い分は作品を愛しすぎたからこそ出てくる些細なこと、だと思ってもらいたい。上で述べたとおりゲーム性を損なうものではないし、何よりもプレイしていて面白かったのは確かだ。いまさらながら、「イース」という作品の完成度の高さを思い知ったほどだった。
ただし、どうしても目をつむれなかったのが、このボリュームで各5040円は、ニンテンドーDSのゲームとしては高いのでは? という点。両作品をエンディングまでプレイしても、クリアまでは6〜10時間程度しかかからない。なので、「イース」という由緒ある作品に価値を見出せるかどうかが、購入時の鍵になるだろう。無論、当方と友人は、各1本ずつ買うことが決定していたりする。
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