よく見て考えろ! 洋ゲーならではのパズルアクション:「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」レビュー(2/2 ページ)
人気のファンタジー映画を元にしているだけに映画を見てからプレイするのが普通。だが、あえて言おう。いい意味でユーザーを突き放す、洋ゲーらしいテイストが好きなら映画を見ずとも楽しめる。次々と現れる数々の仕掛けを頭と指先を駆使して突破しよう。
セカンドステージ:ケア・パラベルあと地
スーザンの角笛を手に入れると第1ステージは終了。物語は一挙に数世紀の時を飛び越え、映画本編の主人公であるカスピアン王子が城から脱出するムービーが挿入される。これは映画からの引用。だいぶ短くなっていて、映画を見ていることが前提の説明になっているが、それでも最低限、王子が命を狙われていることは分かる。
逃走劇の最中、敵に追い詰められた王子は学問の師から授かった角笛を吹くのだが、この角笛こそ、幾星霜の時を超えてカスピアンの手に渡ったスーザンの角笛。ナルニアの危機に際し、古の王たちを召喚する力を持っているマジックアイテムだ。こうしてカスピアンと並ぶ主人公であるペベンシー兄妹、長兄ピーター、長女スーザン、次兄エドマンド、次女ルーシーの4人がナルニアへと招かれる。彼らは第2次世界大戦中のイングランドで暮らす10代の少年少女。ナルニアではちゃんと成人して王や女王になったが、故国に戻った時に子供になっていて、今回はその姿のまま出現する。場所はあのケア・パラベルの跡地だ。
セカンドステージは、ケア・パラベルの廃墟を臨む海岸とそこに隣接する森が舞台。操作するキャラクターはペベンシー兄妹だ。
ゲームが始まると、最初の操作キャラは長女スーザンになっている。彼女が選ばれている理由は、映画と関係している。ここでは海岸に置かれた小舟を調べることでイベントが進むのだが、実はそこには1人のドワーフがいる。彼はその後のストーリーの中で、スーザンをいろいろ言い合う間柄になるのだ。ただ、それは映画の事情。ゲームでは他のキャラクターで小舟を調べてもイベントは発生する。
ドワーフが兄妹が出会うくだりはムービーで語られるのだが、かなりはしょられているので、ちょっとつながりが悪い。Fさんも「話が飛んでる」とつぶやいたが、あまり気にはならない様子。洋ゲーを少しやっていれば、誰でもこんな具合になってくる。ガサツと言われようが、大雑把と言われようが、こういう大らかな作りも洋ゲーの特徴だ。
ドワーフとともに海岸を離れると、ステージは森へと移る。ここでは熊がキーになる。彼らの突進力を利用して道を塞ぐ樹木を壊していくのだ。要は闘牛のノリで、樹木の前に立って熊をひらりとやり過ごせばいい。熊の攻撃は強力なので喰らうと危険だが、難易度自体は大したことはない。Fさんもだんだん慣れてきて、起こす前にアイテムをしっかり集めてから熊をポカポカやっている。
サードステージ:ミラースの城へ潜入
森を進み、4姉妹とカスピアンが出会ったところでセカンドステージは終了。ここでまた映画からの引用が入り、彼らがナルニアの民と共同軍を組んだことが示される。カスピアンたちの狙いは王位を狙う伯父のミラース卿が立て籠もる城の攻略。ゲームでは詳しく説明されないが、実はこの時ミラースはナルニアの民を討つため、主力を森に向けている。その隙を狙って本拠を落とそうという作戦で、映画でも前半のヤマ場となっている。ただし、ゲームでは映画になかったシーンが多めに補強され、広大な城を探索するという雰囲気をいっそう強く出している。
闇夜に浮かぶ城の情景はファンタジー色たっぷりで、仕掛けと戦闘のバランスもいい。いよいよ本格的なアクションが始まるというところなのだが、残念ながらFさんが時間切れ。感想を聞いてみると若干難しいと感じたようだが、要所要所で頭をひねらされた結果で、進めないという難しさとは異なるようだ。
実際、彼女のプレイを後ろで見ていると、多少突っかかりながらも、全体として詰まることなくプレイを進めていた。
ファーストステージを始めた直後は、アクションに慣れていないこともあってか、結構頻繁にダメージを受けていたが、それでも敵がライフ回復アイテムを出してくれることもあって、低空飛行を続けながらもゲームオーバーを回避。そして、ここでいろいろな操作を繰り返した結果、セカンドステージでは各種の操作に対する慣れが生まれ、それがステージをクリアするスピードにつながっていた。これは、このゲームが非常に優れたバランス感覚によって作られていることを物語っている。残念ながらストーリー面での説明不足は否めないが、システム面でのバランスは悪くない。これも洋ゲーの特徴だ。
サードステージ以降、アクション面がやや難しくなってくるが、いきなりそのステージをプレイするならともかく、ファースト、セカンドのステージを抜けてくれば、十分対応できるはず。仮にゲームオーバーになってもチェックポイントからのコンティニュープレイができるので、そんなに激しいストレスは感じないと思われる。ミッションのクリア条件はつねに確認できるので、それを追っていけばゲーム自体が停滞することはないだろう。
著名なタイトルを通して洋ゲーに親しんでみよう
日本では、洋ゲーというだけで避けて通る人が多い。それは洋ゲー=難しいの図式が強いためだろう。だが、20年くらい前のパソコンゲームならいざ知らず、現在の、それもコンシューマに限れば、そんなハードな作品はあまりない。日本移植版が出るタイトルは特にそうだ。中でも「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」は映画という原作を持ち、しかも映画自体がファミリー層向けの内容だ。戦争を扱っているので主人公が敵を斬るシーンもあるが、極力刺激を与えないカットに工夫されていた。そうした映画をゲーム化するのにあたり、プレイヤーを選ぶような難易度を設定することは考えられないだろう。
逆に言えば、こうした著名タイトル作は、これまで洋ゲーをプレイしていなかった人が初めてプレイするのに適していると言えるかもしれない。今回協力してもらったFさんのように、原作には興味があるが映画は見ていないといった人は、特に適性が高いだろう。映画をゲーム化した作品は映画の追体験を基本に制作されているように思われがちだが、すでにスター・ウォーズやマトリックスなどでは、世界観やキャラクターだけを借りた、完全なオリジナルとしてゲームを作り、それによって世界を補填する独立のエピソードを構成している例が珍しくない。これらは当然のことながら映画のストーリーとは無関係に作られているので、単体でプレイしても何の支障もないだろう。
ハリウッド映画は日本でも人気を集めるが、そのゲーム化は必ずしもヒットしない。そこには洋ゲーに対する、抜きがたい抵抗感がある。著名作のネームバリューが、洋ゲーに対する認識を変え、それによってゲーム業界そのものの活性化に弾みがつくことを心から願ってやまない。
「ナルニア国物語 第2章 カスピアン王子の角笛」 | |
対応機種 | Wii/ニンテンドーDS |
ジャンル | アクションRPG |
発売日 | 2008年6月19日 |
価格(税込) | 6090円(Wii)/5040円(DS) |
(C)DISNEY/WALDEN
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