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汎用兵器ヴァンツァーを駆って勝利をつかめ――人気シミュレーションRPG、DSに推参「フロントミッション 2089 ボーダー・オブ・マッドネス」レビュー(2/2 ページ)

自ら死地に身を投じ、明日を生きるために今日を戦う傭兵たち。最高の仲間たちとともに戦い、ともに泣き、そしてともに笑え。キャラクターはユニークで、掛け合いはポップ。だが、その底に流れているのは紛れもなく戦場のリアリズム。

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ミッションは開戦前から始まっている

 ストームたちはヴァンツァーと呼ばれる人型の汎用兵器に乗って戦っていく。どんな悪条件でも戦闘を行うことができる強力な陸上兵器だ。

 ヴァンツァーはボディ、右腕、左腕、脚という4つのパーツで構成されている。ボディはヴァンツァーの中枢部。左右の腕は銃器や接近戦武器を持つために不可欠だし、脚部は移動力の要――。このように各部位にはそれぞれ役割がある。機体の耐久力は部位ごとに個別にカウントされる。例えば、左腕のHPが0以下になれば、左腕が破壊されたことになり、装備していた武器も使用不可能になってしまう。

 脚部が壊された場合は、移動力が大幅に減ってしまう。完全に動けなくなるわけではないが、お話にならない遅さなので非常に困る。そして一番気をつけなければならないのがボディで、ここが破壊されたらそのヴァンツァーは強制的に戦場からリタイアとなる。他の部位にいくらHPが残っていても意味はない。なお、敵のヴァンツァーも同じ構成になっているので、運良くボディを破壊できれば戦闘がかなり楽になる。

 攻撃がどこに命中するかは基本的にランダムに決まる。キャラクターが修得できるスキルで多少狙う場所を調節できるが、それでも100%の保障はない。だから例えばマシンガンなどを装備して無数の弾丸を撃ち込んだのに、ダメージが全身に散ってしまって相手の攻撃力がまるで低下しない、なんてこともある。反対にスナイパーライフルやミサイルなどの破壊力の大きい武器がヒットして一発で腕をへし折ってしまうこともある。このあたりの運不運が勝負のアヤとなるのだ。

 壊されないためには、とりあえずHPの高いパーツを使えばいいことになるが、これがそう簡単ではない。ボディに「出力」というパラメータが設定されており、武器も含めたヴァンツァー全体の重量をこの数値以下におさめなければならないのだ。ここで注意すべきは、武器もその重量の中に含まれてるということ。例えばミサイルポッドは遠距離から敵を攻撃できて威力も高いといいことずくめの武器なのだが、やたら重量がある。無理なカスタマイズをしたりすると、かえってメチャクチャになってしまう。このあたりのバランス感覚が大切だ。

 武器に関しては、今作で新しい趣向が加えられた。もっとも武器と呼んでいいかはちょっと微妙だが。

 これまでのシリーズでは、原則として腕を破壊されると武器は使用できなくなった。両腕を折られたヴァンツァーは、壁ぐらいの役にしかたたなかったのだ。しかし、今作では体当たりができるようになっている。両腕が破壊された場合でも、脚部を破壊されていなければ、自らのボディを叩きつけることで相手にダメージを与えられるようになったのだ。ただし、体当たりを行った方も相当なダメージを受けてしまう。まあ、本当にどうしようもない時の手段といってよく、プレイヤー側があまりこれをやることはない。怖いのは敵。連中はおかまいなしに敢行してくる。まさにカミカゼアタックの恐怖だ。

 また、主人公たちはそれぞれ得意とする攻撃方法を持っている。ヴァンツァーのカスタマイズをする時にはこれも重要だ。ストームは近距離戦向きなので、もっとも適した武器はマシンガンだし、チャンプは格闘型なので接近戦武器が得意。別に苦手な武器を装備してもいいのだが、それではやはりトータルでの攻撃力が下がる。やはり適性にあった装備がベストなのだ。

 なお、新しいパーツは戦場で得た金で購入してそろえていく。資金繰りはそれほど厳しくはないが、かといって何でもかんでも買えるほどの大金ではない。結局このへんは自営業と同じなわけで、節約を心がけて切り盛りしていくしかないだろう。傭兵も気楽なだけの商売じゃないんだね。

同じパーツで構成するとデザインが統一されて格好いい。しかも比較的バランスの取れた設計になる
各ヴァンツァーは最大4つのアイテムを装備ができる。緊急時に備えて回復アイテムを持たせるといい
ミッションを達成すると報酬がもらえる。成功度合いによって金額も変動するので勝ち方にも気をつけたい

戦場での駆け引きと基地での掛け合い

途中ミッションの分岐があることも。選択しなかったミッションは別の部隊が遂行するため、今回のプレイでは挑戦できない

 ヴァンツァーのカスタマイズが終われば、いよいよ出撃となるのだが、本作では1ステージが比較的短く、あまり大多数の敵が出現してくることもない。基本1ケタの攻防でマップもさほど広くはない。その意味では、シリーズに馴れていない人も遊びやすいだろう。このあたり、いかにも元は携帯のコンテンツだった名残を感じる。

 しかし、コンパクトだからといって内容まで薄いわけではない。それどころかバランス感覚は非常にいい。接戦必至の緊迫感あふれるミッションや敵を一掃できる爽快感あふれたミッションなどが上手い具合に配列され、飽きることなくプレイを続けていける。正規のミッション以外にも、アリーナの賭け試合に出て賞金を稼ぐことも可能。オッズ制が採られているので、相性がよくて倍率のいい敵を倒していけば、金の面では不自由することはなくなるかもしれない。

 さて、こうして勝利を収めれば任務は完了、ストームたちは基地へと帰還することになる。かくしてミッションとミッションのつなぎ、いわゆるインターミッションになるわけだが、ここでのストームたちの掛け合いはちょっと驚くほどに明るく軽い。

 フロントミッションをバリバリのミリタリーものだと思っている人は、面食らうかもしれないが、彼らのはしゃぎぶりはそれほど凄いのだ。堅苦しいことを考えると、兵隊のくせに規律がなっていない……などと怒りたくなるかもしれないが、ちょっと待った。

ストームたちはまるで高校生の仲良しグループのよう。とにかくはしゃぎまわり、よく語らい、よく笑う

 もともとストームたちは傭兵なのである。金のために命を売っているわけであり、死んだところで誰かが悲しんでくれるわけでも、名誉が与えられるわけでもない。そうした状態でありながら、毎日のように死ぬかもしれない戦場に出かけていかねばならないのだ。だとしたら、せめて基地にいる時ぐらい、浮き世の憂さを忘れたくなるのが人情ではないか。おおはしゃぎしているからといってたるんどる、というのはあまりにもつれない話では。

 悲惨な戦場から帰ってきた後まで、シリアスである必要はない。むしろ過酷な環境から解放された喜びを爆発させるのが普通の感覚だろう。今日が終わったことに感謝し、明日を生きられることに感謝する。互いの無事を喜び、つかの間の休息を全力で楽しむ。それもまた戦場の確かなリアリズムといえるかもしれない。

 シリーズ伝統のシステムを継承し、それをポップなキャラクターという外観でくるんだ、「フロントミッション 2089 ボーダー・オブ・マッドネス」。コンパクトながら、よくまとまった好編だ。

「フロントミッション2089 ボーダー・オブ・マッドネス」
対応機種ニンテンドーDS
ジャンルドラマティックシミュレーションRPG
発売日2008年5月29日
価格(税込)5040円)
プレイ人数1人
CEROA区分(全年齢対象)
(C) 2005,2008 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.


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