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国家事業としてe-sportsが推進される中国は、日本人の想像を絶する世界だった(1/2 ページ)

12月5日〜8日、中国・武漢にて行われた中韓政府共催によるデジタルゲーム競技イベント「International E-sports Festival」。日本代表選手団リーダーとして渡航した筆者が見た中国e-sportsシーンの現状。

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中国を駆けめぐるデジタルゲーム競技「e-sports」の波

 「e-sports」とは、家庭用ゲーム機やPCゲームなどのデジタルゲームを競技。つまりスポーツとして捉えるカルチャーで、現在世界のさまざまな国で「e-sports」イベントが行われている。昨月ドイツ・ケルンで開催された「World Cyber Games2008」(←記事はこちら)も世界に名だたるe-sportsイベントのひとつだ。

 現在、アジア圏では韓国・中国のe-sportsブームがめざましく、ゲーム試合専門テレビ番組の放映や、プロゲーマーの存在、賞金型トーナメントの開催など、一昔前の少年マンガの世界がそのまま現実になっている。中国で人気の高いタイトルは、リアルタイム戦術ゲームの「ウォークラフトIII」や「スタークラフト」で、特に「ウォークラフトIII」は中韓のトッププレイヤーによる試合は多くの人々から熱い視線を集めている。

 もともと、中国ではe-sportsは市民的な運動として行われていたが、インターネットカフェにおける痛ましい事件の続発、ゲームに関する社会からの厳しい視線などを受け、青少年の健全な育成のために、現在は中国共産党青年団によって管理・監督が行われている。

 今回、中国南部の都市、湖北省の中央に位置する武漢市で開催されたのは中国政府、韓国文化観光省が主催するe-sportsイベント「International E-sports Festival」(以下、IEF)だ。2005年、中韓政府共同で提唱された「中韓電子競技ゲーム」から端を発するIEFは、中国共産党青年団、中国文化部、国家体育総局など14の中央省庁と、韓国文化観光省、韓国e-sports協会によって運営され、開催4年目となる今年は規模を拡大、中国・韓国・日本・シンガポール・フランス・スウェーデン・香港によって試合が行われた。

IEF2008韓国内予選の風景。多くの人々が集まっていることが分かる
2005年、IEFの前身となる中韓電子競技ゲーム大会。開幕式は中華世紀壇で行われた
参加国の国旗が会場となる武漢科技大学体育館に掲出された

日本代表が参戦する「カウンターストライク」

左から、domi(小村光平)、batch(大箸紘也)、noppo(谷口純也)、ENZA(千嵜勇和)、barusa(大田健)

 IEFの参加は初めてとなる日本が今回、選手団を派遣したタイトルは一人称視点のシューティングゲーム「カウンターストライク」。テロリスト側、対テロリスト側、それぞれ5人1チームに分かれてのチーム戦で競われるもので、その競技性の高さから欧米、アジア諸国で活発に大会が開催されているタイトルだ。過去、「World Cyber Games」や「Cyberathlete Professional League」などの国際大会に日本チームが参戦していたが、成績がふるわず、

今年8月に国際大会「Electronic Sports World Cup」日本予選が開催されるまでの数年間、国際大会への扉は閉ざされていたままであった。

 この理由として、「カウンターストライク」の試合環境を再現できる場所が日本に数少ないことや、大会の参加を目的とするチーム(クラン)活動が活発でないこと、渡航コストの捻出が難しいことなどがあげられる。多くの海外プレイヤーは大会への参加、あるいは勝利を目的として日々チームでのプレイにいそしんでいるが、日本ではそもそもチームの絶対数が少ないため、練習試合の環境を構築することすら難しい。

 また、海外との対戦を行おうとしても、ネットワークラグの問題でゲームがうまく成立しないのも問題になっている。ゲーム大国日本とはいえ、国内ではややマイナーなタイトルの「カウンターストライク」は国際大会での優勝はおろか、予選リーグ突破もままならない状態が続いており、国際的なレベルが高まっている近年では予選リーグの突破が悲願になっている。

5台ずつPCが並べられたエリアで対戦が行われる。選手は自分が普段から使用しているマウスやキーボードを持ち込んで試合に臨む

 現在、「カウンターストライク」最強とうたわれているのは北欧のスウェーデンとノルウェー、近年では韓国・ブラジルなどがその存在感をアピールしはじめている。その中でIEFにエントリーしているチームは、韓国eStro、Lunatic-hai、スウェーデンの強豪fnatic、中国DF、NR、シンガポールTitaNs、香港のTEAMRSの8チーム。

 今回は開催発表から本戦開催までの期間が短かったため、日本eスポーツ協会設立準備委員会(JESPA)のWebサイト上での公募による日本代表選手選考会が行われ、その結果、「カウンターストライク」をプレイするために決行したスウェーデン留学から一時帰国しているnoppo(谷口純也)選手率いる「ZAMOURAI」が日本代表として武漢に渡ることになった。

何から何まで想像以上の中国スタイルに呆然

各国の代表による国旗入場。参加国数は、今後さらに増えていくだろう

 今回、IEFが開催されたのは、中国中央にある湖北省武漢市。長江を挟み込むように広がる都市で、人口891万人、うち210万人が大学生という、いわゆる大学都市だ。そのせいか、ネットカフェも3000店舗と非常に多く、その中のコンテンツとして、多くの人々がPCゲームに慣れ親しんでいる。残念ながら11月で解散してしまったが、アメリカのプロゲーマーTV番組「Championship Gaming Series」のプロチーム「Wuhan Dragon」もこの都市にホームを置いていた。

 数々の国際大会に参加してきた筆者だが、今回は何から何まで想像以上の出来事に驚かされ続けた。

 まず、会場となる武漢科技大学体育館周辺の警備には中国公安警察が500人配置され、会場内には数百人の大学内警備員が配置されており、やや物々しい雰囲気だ。そして、各国の代表チームには専属の通訳スタッフが付くほか、選手入場のセレモニーで国旗を掲げる選手の前を歩く女性はなぜか、北京オリンピックで同じ国のパネルを持った人(つまり、オリンピック日本代表選手団のパネルを持った人が、IEF日本代表選手団のパネルを持って歩いていた)だったりと、まさに日本では考えられないレベル。

 また、この日は中国武漢市と韓国水原市、太白市の友好都市締結が行われ、それを記念したセレモニーもIEF会場で執り行われた。ゲームのイベント会場でこういった政治的なセレモニーが行われるレベルになっていることに大きな驚きを覚える。

 夕方から行われたオープニングセレモニーは、なんとコスプレイヤーが大量にステージに登壇して国賓の前で乱舞するという演出から始まった。8月のWCGアジアチャンピオンシップでもそうだったが、アジアはすでに「Cos-Play」が通じる国になっているようだ。続いて、中国・韓国の人気アーティストたちによるライブがスタートし来場者が一気に盛り上がると、「ウォークラフトIII」の超人気プレイヤーで今回のトーナメントの優勝筆頭候補2人中国のSky選手と、韓国のMoon選手がステージに登壇。IEF開催を記念してのエキシビジョンマッチを行う、というアナウンスで再び盛り上がる会場だったが、会場のスクリーンに映ったゲーム画面は「PES2008(日本では実況サッカーウイニングイレブン)」のもの。

 中国VS.韓国のサッカー試合は、背面からのアグレッシブなスライディングによるファールの応酬、隙あらばシュートに持ち込む攻撃的なプレイスタイルで大盛り上がりとなったが結果は0-0でのスコアレスドロー。中韓トッププレイヤーの決着は、本戦の場でつけられることになった。

中国コスプレイヤーによるラインダンスはまさに壮観
大歓声の中、熱戦が繰り広げられたエキシビジョンマッチ
会場を埋め尽くす人々。このほとんどが難解なRTSのルールを理解していることにも驚く
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