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任天堂と一緒に「へんてこなもの」を はてな近藤社長に聞くDSi「うごくメモ帳」

「へんてこな人たちが、面白いものを作っている」――任天堂ははてなと似ていると、近藤社長は言う。共同開発したDSi「うごくメモ帳」向けサービスで、「インターネットは面白い」とたくさんの人に伝えたいという。

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 はてなの近藤淳也社長は、任天堂について語り出すと目が輝く。はてなと似ているのだという。「へんてこな人たちが、面白いものを作ってるんですよ」

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任天堂の小泉歓晃・情報開発本部東京制作部ゲームプロデューサー(左)とはてなの近藤社長(12月18日の発表会見で)

 ファミコン以来、ゲーム機は買ったことがなかった。だがWii発売当初、Wiiをプレイする人のYouTube動画があまりに楽しそうで欲しくてたまらなくなり、家電店に通い詰めてやっと手に入れた。米国に住んでいたころだ。

 「Wiiは今までのゲーム機の概念とまったく離れた“へんてこなもの”。へんてこでも世界で支持されているのは、本当に面白いから」

 日本の京都の会社が作り、世界に投げかけた「へんてこなもの」が、言語や文化の壁を越えて熱狂的に受け入れられている。はてなもそうなりたい。任天堂と同じく、本社を京都に置くものづくり企業として、強くあこがれた。

あまりのスピードに、任天堂が驚いた

 その任天堂から声がかかったのは今年の8月。「ニンテンドーDSi」のソフト配信システム「DSiウェア」で配布するメモ帳アプリ「うごくメモ帳」(うごメモ)用のネットサービスを作ってもらえないか、と打診があった。

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 うごメモは、手書きメモ帳アプリで、スケジュール帳と連動したメモを書いたり、パラパラ漫画を作れるというもの。はてなが打診を受けたのは、作ったパラパラ漫画を投稿・公開できるDSi用サービスと、PC・携帯電話向けサービスの構築だ。

 「これ、売れるのかな?」――うごメモのプロトタイプを見たとき、近藤社長は疑問に思ったという。DSiやDSiウェア発表前で、無料配信することも知らされておらず、有料のパッケージゲームかと思っていた。

 だがチャンスだと思った。任天堂と一緒に仕事ができる。任天堂の“中”に入り、Wiiのようなへんてこなものを作るプロセスを学びたい。DSゲームという新たな入り口を手に入れれば、はてなのユーザー層を拡大できるという期待もあった。

 早速社内でプロジェクトチームを作り、サービスのプロトタイプ開発に着手した。Webブラウザ上にDSの2画面を再現。パラパラ漫画を描き、投稿・再生できるFlashベースのサービスのを3日で作り上げ、次のプレゼンに持って行った。あまりのスピードに任天堂側も驚き、一緒にやることが決まった。

東京で「開発合宿」 「任天堂も、はてなと同じだった」

 DSゲーム開発は初めてのはてな側エンジニアと、Webサービス開発に慣れていない任天堂側エンジニア。リリースまで時間がない。お互い、分からないところをすぐに聞ける距離で開発した方がいいと考え、双方のエンジニアが集まって“合宿”で開発しようと提案した。

 はてなにとってはおなじみの「開発合宿」だが、任天堂には驚かれたという。場所は秋葉原にほど近い、任天堂の東京支店。DSi用のパラパラ漫画共有サービス「うごメモシアター」と、PC・携帯電話向けの「うごメモはてな」の開発が始まった。

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 近藤社長は内心ドキドキしていたという。はてなはものを作るとき、仕様書をあまり書かない。「コードが仕様書だ、というぐらいの勢い」で。だが任天堂のようなきちんとした会社は、厳しい進行管理などが行われているだろうと緊張していた。

 ふたを開けてみると、任天堂もはてなと似ていて、仕様書や進行表よりもまずはコードというスタイル。プロトタイプを動かし、面白ければふくらましていじっていくというはてなと似たスタイルで、「とてもうれしかった」という。

 もちろん違う点もある。「いろんな意味でレベルも違うし、スタッフの専門性も違う」――例えばデバッグ。パッケージゲームは、発売後にバグが見付かっても修正できないため、時間をかけて何重にもデバッグするシステムが整っている。

 「50%ルール(50%程度完成したβ版で公開し、利用してもらいながら改善するというWebサービスの開発手法)とか言ってられない。もっとちゃんとやらなきゃと思った」

 Webサービスはエンジニアとデザイナーで作るが、ゲームはさらに「サウンド」の担当者がいる。そんなことも発見だった。トップがものづくり出身で、マネジメント層が充実している――組織形態にも学ぶことが多かった。

はてなユーザーに頼る「通報」

 任天堂が望むものをただ作るだけではなく、はてな側からも積極的に提案した。問題のある投稿をフィルタリングする仕組みはその1つだ。

 投稿されたパラパラ漫画はまず、PC・携帯電話版「うごメモはてな」で公開される。その中で、一般DSユーザーにふさわしくない作品があれば、はてなユーザーが通報。一定期間待って通報がなかったもののみ、DSiの「うごメモシアター」でも見られるようにする。

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うごメモはてなのPCサイトと携帯サイト

 任天堂側からは「DSiからプラス・マイナス評価を付けられるようにし、マイナス評価の多い作品は見られないようにする」という提案もあったが、はてな側が別の方法を提案した。「マイナス評価を付け合ういじめのようなものが起きても嫌だし、DSiで遊んでいる人に、ネガティブな情報は見せたくなかった」

 投稿作品への評価は、はてなの既存サービスで使われている「はてなスター」の星マークを付けることで表すことにした。「任天堂のゲームとはてなって、相性がいいんですよ。スーパーマリオには、星マークもはてなマークも出てくるし」――任天堂とはてなの共通点を話すときの近藤社長は、本当にうれしそうだ。


画像 うごメモシアター
画像 人気作品を閲覧し、「はてなスター」を付けられる

 うごメモは、手描きイラストなどを投稿できる「はてなハイク」と似たサービス。連携も検討したが、ハイクでうごメモの動画形式を扱うには専用の処理を加えなければならなかった点や、うごメモ専用サイトでしかできない機能を作りたいといった理由から断念した。

初めてネットに触れるDSiユーザーに、ネットの面白さを

 両社間に金銭のやりとりはなく、サーバなどはすべてはてな持ち。うごメモシアタートップページには「サービス提供:株式会社はてな」と書かれている。

 DSi向け「うごメモシアター」は無償提供することになっているため、収益は、PC・携帯サイト向け「うごメモはてな」から得ることになる。DSiは特に携帯サイトと相性がいいと考えており、携帯サイト中心に広告を掲載したり、オプションで有料サービスを提供したりといったことを検討する。

 うごメモ経由ではてなのユーザーが増えることも期待。うごメモはてなには、はてなIDユーザー専用の機能も付け、うごメモユーザーにはてなID登録を促しているほか、はてなのトップページは初心者にもとっつきやすいよう、内容やユーザーインタフェースを刷新し、初心者用ガイダンスページも新設した。

 「うごメモを通じてはてなを知り、初めてネットサービスに触れる人も多いだろう。そんな人にスムーズにはてなを使い始めてもらい、インターネットは面白いと思ってもらえれば」

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