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ボイスチャットの常識を変える、ドルビーの新技術「Dolby Axon」ってなに?日々是遊戯

「Dolby Digital」や「Dolby Pro Logic II」などの音響技術でおなじみのドルビーが、昨年発表した新技術「Dolby Axon」。果たしてその効果とは?

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「たったそれだけ」でコミュニケーションがぐっと豊かに

「Dolby Axon」が出展されていた、「OGC 2009」のドルビーブース

 昨年ドルビーが発表した、「Dolby Axon(ドルビーアクソン)」という技術をご存じだろうか。一言で言うなら、ボイスチャットのリアリティを飛躍的に向上させる、新世代の音響技術――といったところ。筆者も名前だけは知っていたのだが、先日、幸運にも実際に体験してみる機会を得ることができた。

 従来のボイスチャットは、例えるなら電話越しに相手と通話しているようなものだった。つまり、ゲーム内で相手がどこにいようとも、距離や方向とは関係なしに、相手の声が聞こえて来るのは常に「耳元」から。これに対し「Dolby Axon」を使った場合、相手のキャラクターがいる距離や方向に応じて、声の大きさや方向がリアルタイムで変化するのが大きな特徴となっている。現実空間と同じように、相手が遠くにいれば声は小さく、近くにいれば大きく。相手が後ろにいれば後ろから、右側にいればちゃんと右側から声が聞こえてくる。もちろん相手が動きながらしゃべっていればその位置に応じて声もぐるぐると動き回り、そのまま相手が壁の後ろに隠れれば、距離が近くても途端に聞き取りにくくなったりもする。

 こう書くと「なーんだ、それだけか」と思われるかもしれないが、実際に体験してみると、その“たったそれだけ”のことで仮想空間のリアリティがぐっと増すことにきっと驚くはずだ。電話にしてもボイスチャットにしても、相手の声は常に「耳元」から聞こえてくるものという先入観があったからか、「ちゃんと相手の位置から声が聞こえる」という体験は思いのほか新鮮。個人的には、はじめて振動パック付きで「スターフォックス64」をプレイした時のような感動があった。

 もちろん単にリアリティが増すだけでなく、ゲームプレイにもさまざまな変化が期待できる。例えば従来、FPSなどで敵や味方の位置を確認しようと思ったら、「東側のドラム缶の陰にいるよ」といった具合にいちいち言葉で説明しなければならなかったが、「Dolby Axon」を導入すれば、それが「こっちこっち」の一言で済む。相手はその声を聞いて、声の大きさや方向から、こちらの場所を探せばいいというわけだ。他にも、相手チームに作戦を聞かれないよう、味方同士で会話するときは周囲に注意したり、逆に盗聴器のようなアイテムを敵陣に仕掛けておいて相手の作戦を盗み聞いたりと、さまざまな活用方法が考えられる。こうしたリアリティやゲーム性は、これまでのボイスチャットでは得られなかったものだ。

 ちなみに「Dolby Axon」を利用するにあたり、ユーザー側で特殊な装置などを用意する必要はなく、ごく普通のステレオヘッドフォンでも立体感は十分に得られるのでご安心を。さらに付け加えると、この「Dolby Axon」ではサーバー・クライアント型の方式を採っているため、会話に参加する人数が増えても、要求される回線速度は常に一定(数十kbps程度)。また音声のミキシングなどの処理もすべてサーバー側で行われるため、クライアント側への負荷もかなり軽くて済むとのことだった。

 あくまでゲーム開発者向けのソリューションであるため、実際に「Dolby Axon」を使用したゲームが出てくるのはもう少し先の話になりそうだが、実装されれば従来の「ボイスチャット観」が大きく変わることは間違いない。メーカー側の積極的な採用に期待しつつ、今は対応タイトルの登場を気長に待っておこう。

FPSを例にその効果を体感。ちゃんと相手の位置から声が聞こえてくる
普通のステレオヘッドフォンでも、その効果は十分に実感することができた

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